2014 Fiscal Year Annual Research Report
微生物の生存戦略を組み込んだ確率的ニューロコンピューティングの実現
Project/Area Number |
25280092
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
尾笹 一成 独立行政法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 専任研究員 (10231234)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ソフトコンピューティング / 生物物理 / 微生物 / 生存戦略 / 確率的情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の持つ多様性や生存戦略を情報処理に利用することで、より柔軟な処理や機知に富んだ判断を計算機上で実現することを目指し、遊泳性微生物ミドリムシの生存戦略行動と多様性を実験で明らかにし、それらをソフトコンピューティング機能として実装することを目指している。本年度は化学走性と独立培養系間の相互作用、およびノイズ振動子によるシミュレーションの2項目を調べた。 化学走性の実験では、外部刺激としてエタノールと過酸化水素を与えてミドリムシの反応を調べた。エタノールでは単純な負の化学走性が見られた。過酸化水素では刺激開始直後は負の化学走性を示したが、時間が経過すると逆に過酸化濃度の高いところに集まった。その原因は、過酸化水素によってミドリムシの細胞内のメタボリズムが大きく撹乱され、遊泳制御ができなくなったことであると推定された。この場合にミドリムシは休止することで生存を目指すことがわかった。独立培養系間の相互作用の実験では協調的なパターンロジック操作および競合的なリソース占有が実現できた。 ノイズ振動子によるシミュレーションでは256振動子を実装したプログラムを開発し、その性能を組み合わせ最適化問題を対象として検証した。ミドリムシの光反応をベースとした振動子強度変化を与えることで、最適近似解を次々と獲得することに成功した。実験で見られた時間進展によって光反応が強化される現象や光に対する適応の効果を導入するには、光に当たった履歴を持つ振動子を作成すれば良いことがわかった。ここのミドリムシの動きをシミュレートするプログラムの結果をほぼ再現でき、より短時間でマルチエージェントによる最適化やロバストネスを実現できる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では26年度中に化学走性の実験、独立培養系間の相互作用の実験、ノイズ振動子によるシミュレーションを行う計画になっていた。これらはいずれも計画通りに実施され、予定していた成果が得られている。順調に進展していると判断するのが妥当である。
|
Strategy for Future Research Activity |
27年度は計画通りに「単一セルからの培養実験」と「ミドリムシ個体を粒子として扱う詳細化モデリング」を実施する。「単一セルからの培養実験」では、ミドリムシのセルひとつをマイクロ流路に閉じ込め、増殖培養によってクローン集団を得る技術を開発する。クローン集団内の個体差の発現を調べ、生存戦略の時間発展をコンピューティングに取り入れる可能性を明らかにする。「ミドリムシ個体を粒子として扱う詳細モデリング」では、数万個の粒子を想定し、各粒子に位置と速度を設定した上で光反応をシミュレートする属性を与える。ミドリムシの光忌避反応によって、情報通信網のノード間結合を形成し、高効率のネットワークを形成するための条件を調べる。 最終年度である28年度は確率的ニューロコンピューティングと環境対応実験を行い、本研究の目標を達成する。
|
Causes of Carryover |
25年度からの繰越が305,107円あり、その約半分を予定通り成果発表に使用した。予定していた消耗品使用量が抑えられたため、残額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度において経費の増加が予想される成果発表(国際会議での発表経費および論文印刷費)および消耗品購入に充当する。
|