2015 Fiscal Year Annual Research Report
微生物の生存戦略を組み込んだ確率的ニューロコンピューティングの実現
Project/Area Number |
25280092
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
尾笹 一成 国立研究開発法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 専任研究員 (10231234)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソフトコンピューティング / 生物物理 / 微生物 / 生存戦略 / 確率的情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の持つ多様性や生存戦略を情報処理に利用することで、より柔軟な処理や機知に富んだ判断を計算機上で実現することが期待される。本研究では、遊泳性微生物ミドリムシの生存戦略行動と多様性を実験で明らかにし、それらをソフトコンピューティング機能として実装することを目指している。今年度は、単一セルからの培養実験による多様性の発現、およびミドリムシ個体を粒子として扱う詳細化モデリングの2項目を進めた。 「単一セルからの培養実験」では、ミドリムシのセルひとつをマイクロ流路に閉じ込め、増殖培養によってクローン集団を得る技術を開発した。分裂によってひとつのセルから増殖させて40-80個体のクローン集団を作り出し、青色光の勾配を与えて個体群の挙動を調べた。同じ環境で増殖した個体群においても、光耐性の強い個体が出現するなど、多様性が発現していることがわかった。また、分裂増殖の過程で、分裂時に静止していたセルが分裂を終えて遊泳を開始する時間にズレが生じていくことが判明した。このような分裂の非対称性が拡大されて多様性の発現をもたらしていると考えられる。 「ミドリムシ個体を粒子として扱う詳細化モデリング」においては、ミドリムシを個体として扱う粒子シミュレーションを行った。数万個の粒子を想定していたが、PCのメモリとOSの関係でメモリ上での実行を数千個にとどめることが有効でありそれで十分であることが判明した。実験から導き出した光耐性の獲得やLevyフライト運動の実装を行うアルゴリズムを考案し、実装した。また近接粒子間の相互作用パラメータを追加する機能を導入した。昨年度に開発したノイズ振動子のシミュレーションと比べて、粒子数の増加に伴って解への固着が増大することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では27年度中に「単一セルからの培養実験」と「ミドリムシ個体を粒子として扱う詳細化モデリング」を行う計画になっていた。これらはいずれも計画通りに実施され、予定していた成果が得られている。順調に進展していると判断するのが妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は計画通りに「確率的ニューロコンピューティングと環境対応実験」を実施する。ミドリムシ独自の性質を取り込める新しいニューロコンピューティング手法を「法則の確率適用」を導入することで試行する。実験によって収集した現象論的記述ルールが発現する確率を設定し、粒子集団の数値計算に適用することで、生物のあいまいさや柔軟性をもった情報処理の実現を目指す。環境対応の実験を行い、ルール記述の有効性を検証する。最終年度であるので、得られた成果の発表を強化していく。
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Causes of Carryover |
26年度からの繰越が163,551円あり、それは予定通り物品購入に使用した。27年度内に予定していた論文の受理が遅れたため、その論文のopen access費用相当額が残額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度はじめに受理された論文のopen access費用に使用する。
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