2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25280097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
巽 久行 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (30188271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 正弘 筑波技術大学, 名誉教授 (70248748)
関田 巖 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (40357322)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 視覚障害補償 / 疑似触力覚 / 仮想現実感 / 環境把握 / 認知支援 |
Research Abstract |
視覚障害者は触覚や力覚の情報に頼る。例えば,白杖に伝わる触力覚から歩行時の環境や空間の状況を知る。3次元画像と疑似感覚を組み合わせて仮想現実感を創る研究は数多く行われているが,一般的に人は情報の多くを視覚から得るので,視覚障害者に仮想現実感を創るのは難しい。しかし彼らは実際に白杖から状況を推測している。そこで,我々は触覚や力覚を作り出すデータグローブや力覚デバイスを手指に装着し,握った白杖から疑似的な触力覚を感じさせることで彼らが仮想現実感を持つか否かを検討している。もし,このような現実感を創生できるならば,点字ブロックが施設できない場所や転落事故の危険があるホームなどに,警告ブロックや転落防止柵の疑似触知感を創り出すことで,大規模なインフラを整備することなしに彼らの行動や安全性を向上させる手法となり得る。このような触知VR手法を,視覚障害者の環境把握や空間認知を支援する技術として積極的に展開したいというのが我々の目標である。 初年度である平成25度は,疑似的な触感を生成する仮想触感提示システムの開発を行った。特に,環境や空間の状況を,白杖を握った手指が受ける触力覚で表現するための,力覚フィードバックデータグローブによる触力覚計測センシング手法を考察した。仮想触感提示システムの開発にあたっては,最初にデータグローブを装着して,実際の歩行時に白杖が受ける触力覚データを収集・分析した。次に,その分析結果を基にして,白杖体感に似た疑似感覚を創り出すための触力覚学習プログラムと,学習した疑似触力覚を生成する触力覚表現プログラムを作成した。例えば,点字ブロックが施設されている路面とされていない路面の,触力覚データの差分をもとに点字ブロックの疑似的な触力覚を創生し,それを実際の路面での触知に混ぜ合わせるという複合現実で,仮想ブロックの触知感を構築している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データグローブの手指変位を用いて計算機上で触力覚を表現する仮想ハンドに基づく人工触力覚モデルの作成を行っているが,指の変位と触力覚には直接的な関係が無いため,最適な疑似触力覚を生成するのは困難で試行錯誤の状況にある。より直接的に手指に伝わる触力覚や微小振動を捉える指型触覚センサーを用いて,そのデータから疑似触力覚を生成する方が効率も良いと思われる。また,疑似的な触力覚と実際の触力覚が似ているか否かを判断するのは難しい問題である。我々は取り敢えず,手指,特に人差し指の筋活動に係わる筋肉上の表面筋電位を使って互いの類似性を探っているのが現状である。これらのことから,上記のとおり達成度を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に行った疑似的な触力覚を生成する仮想触感提示手法をもとに,平成26年度は触知VR技術による仮想現実感の創生システムの構築に取り組む。これは,触力覚計測センシング手法を用いて,白杖の疑似触知感覚による仮想現実感の具体的な生成法を確立するものである。すなわち,手や白杖を用いて空間や物の表面形状を探索した際に得られた反力の触力覚データから,元の空間や物の形状を推察する手法の開発である。仮想現実感の創生とは,触力覚の学習結果と3次元モデリングの手法とを合わせて,仮想現実感を創り出すことに他ならない。本研究課題が目指す,仮想現実感を利用した視覚障害者の環境把握や空間認知の成否は,平成26年度の成果に係っているので慎重に研究を推進したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
力覚フィードバックデータグローブが当初予定よりも安価に購入できたため。 平成26年度の経費と合わせて,指型触覚センサーを購入するための物品費の一部に充てる予定である。希望する機器は,センサー本体,コントローラ,ソフトウェアの,3部品からなる。
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