2013 Fiscal Year Annual Research Report
3D映像の魅力の認知脳科学的解析と映像評価システムの提案
Project/Area Number |
25280102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
河原 哲夫 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (40112776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田森 佳秀 金沢工業大学, バイオ・化学部, 准教授 (00260208)
神宮 英夫 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 教授 (10112468)
伊丸岡 俊秀 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 准教授 (20387351)
渡辺 弥壽夫 金沢工業大学, 工学部, 教授 (30158662)
長田 茂美 金沢工業大学, 工学部, 教授 (00399718)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 3D映像 / 脳・神経 / 感性情報学 / 官能評価 / 画像認識 |
Research Abstract |
「3D映像の表現意図を表す評価語の確定とその時系列官能評価」では、雑誌やインターネットから3D映像に関する評価文章を抜き出し、テキストマイニングの手法で評価語の出現頻度を求めた。映像から感じる「3Dらしさ」などの感性の時系列評価を、ピンチ力を用いたcross-modality matching法に基づいて映像視聴時にリアルタイムで行った。3D条件と2D条件との比較では、3D映写の内容に応じて「3Dらしさ」の強くなることが示され、時系列的感性評価に有用なことが示された。 「3D映像視聴中の生理・脳機能の評価と視聴前後の感覚機能変化」では、3D画像による視覚探索課題に注意を向けている時の脳活動をfMRIを用いて計測し、脳活動部位とその賦活状況を評価した。3D画像での課題遂行時に固有な脳活動が中側頭回に認められた。ただし、探索課題解決に3D画像が有利に働くとは限らないことが示唆された。また、映像視聴中の心電図R-R間隔の解析によって自律神経活動を評価した結果、両眼視差が大きい3D映像でストレスが増加すると共に、3D映像視聴直後の水晶体調節微動の高周波成分が有意に増大し、2D映像に比べて視覚疲労が顕著に認められた。 「3D映像における両眼画像の差異に関する基本成分および両眼視差の時間的・空間的変動特性の解析」では、奥行知覚に対応した映像表示画面での奥行感度を再定義し、快適視差範囲における妥当性を確認した。「3Dらしさ」を表現する画像特徴の要因解析を目的として、3D映像のフレーム毎の両眼視差を時間的・空間的に把握できるツールを開発した。また、OpenGLを用いて環境光、拡散光、鏡面反射、光沢などのレンダリング・パラメータを変化させた各種画像の立体的な見えやすさの主観評価実験から、立体感における鏡面反射の重要性と適度な環境光、拡散光の必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画では、(1) 映像の表現意図を表す評価語の確定と実際の3D映像を用いた時系列的な官能評価、(2) 3D映像視聴中の生理・脳機能の連続的評価と視聴前後の感覚機能変化の心理物理・生理学的な判断、(3) 3D映像における両眼画像の差異に関する基本成分および両眼視差の時間的・空間的変動特性の解析と上記(1) (2)の測定結果との対応関係の検討、などを主な実施対象とした。 評価語の確定については、3D映像(実写とアニメーション)に関する評価文章315件を収集してテキストマイニング手法で分析し、これらの評価語の出現頻度に基づいて評価語をほぼ決定した。また、cross-modality matching法の導入によって、映像を見ながらのリアルタイムな時系列的感性評価を行う方法を確立することができ、ほぼ予定通り進捗している。 3D映像視聴中の脳機能評価では、視差のある3D画像での探索課題遂行時に固有な脳活動をfMRIを用いて検出した結果、中側頭回に活動が認められた。ただし、3D動画コンテンツ視聴中における脳機能イメージングは、試行回数などの関係で困難なことが判明した。また、3D映像視聴前後での水晶体調節機能の比較・検討、映像視聴中の心電図R-R間隔に基づいた自律神経活動評価が確認され、ほぼ順調に進捗している。 3D映像における両眼画像の差異に関する物理的特性に関しては、映像表示画面における奥行感度を再定義して快適視差範囲についての実験を行い、その妥当性を検証した。また、3D画像の特徴要因解析を目的として、両眼視差を時空間的に把握できるツールを開発した。さらに,立体感を得るための要因解析を目的として,レンダリングに必要なパラメータを変化させた各種の画像を作成して主観評価実験を実施した。ただし、今後の課題も多いことから、半分程度の達成度だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究実績を踏まえ、以下の課題を主に検討する。 (1) 「3Dらしさ」の評価語に関しては、cross-modality matching法を使ってテキストマイニング分析した結果に基づき、「3Dらしさ」以外の評価語を使っての実験を追加する。さらに、3DTV以外の映写環境(200インチスクリーン、ヘッドマウントディスプレイ)での同様の測定から、3D映像に対する感性評価の詳細を検討し、3D映像自身の物理的特性と感性評価との対応関係を明らかにする。 (2) 視覚探索課題に対する問題解決場面での3D映像による特徴的効果を、視差が大きい条件でfMRIを用いて同様に評価する。また、3D動画が脳の働きに与える効果は、映像視聴中の瞬目頻度や脳波との関連性、被験者の集中力に与える影響などを検討することで明らかにする。さらに、3D映像視聴中の注視点分布、自律神経活動および映像視聴前後の水晶体調節機能の比較などを、映像の両眼視差成分に基づいて分類したシーン別に解析し、両眼視差の値や変化量に対する生理的反応(生体への影響)の詳細を明らかにする。 (3) 3D映像の両眼視差分布の時空間特性と3D映像視聴中に時系列評価された各評価語の指数、生理・脳機能評価で測定された注視点分布、ストレス指数、脳活動状況などとの対応関係を明らかにする。また、「3Dらしさ」の奥行き感は両眼視差のみならず運動視差や輻輳との関連性も考慮する必要があり、3D映像において艶感やシズル感が得られる光学的要因となるような特徴量を画像成分として見出すことを検討する。 (4) 以上の結果に基づき、各要因に対する多次元因子分析を行って3D映像が生体に及ぼす影響の客観的・定量的なモデルを構築し、「3Dらしさ」の要因仕様書(3Dレシピ)を作成する。さらに、3Dレシピに基づいた3D映像自動評価システムを提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、多くの被験者での実験を予定していたが、実験補助員および被験者数名が先方の都合で参加不可能になり、人件費・謝金に残額が出た。また、出張計画が、授業など各教員の都合で取りやめとなったことも実支出額の減少となった。さらに、その他の項目で余裕を持った予算を計画したため、この項目での残額も出た。 次年度では今年度の経験を踏まえて配分を再検討したが、次年度は感性評価実験、脳機能評価実験、生理機能評価実験、3D映像解析など、本年度以上の実験頻度で多面的な研究成果を目指す。そのため、物品費に加えて実験補助員および被験者への人件費・謝金を計上している。
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