2014 Fiscal Year Annual Research Report
3D映像の魅力の認知脳科学的解析と映像評価システムの提案
Project/Area Number |
25280102
|
Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
河原 哲夫 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (40112776)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田森 佳秀 金沢工業大学, バイオ・化学部, 准教授 (00260208)
神宮 英夫 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 教授 (10112468)
伊丸岡 俊秀 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 准教授 (20387351)
渡辺 弥壽夫 金沢工業大学, 工学部, 教授 (30158662)
長田 茂美 金沢工業大学, 工学部, 教授 (00399718)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 3D映像 / 脳・神経 / 感性情報学 / 官能評価 / 画像認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的な評価用語である「3Dらしさ」としての臨場感について、映像を見て感じた3Dらしさを圧力センサーを介してピンチ力でリアルタイムに表現する方法(cross-modality matching)を開発した。この手法が映像を見ながらのリアルタイムの評価手法として有用であることを確認し、「映像の3Dらしさに対する感性評価の時間的変化」として報告した。さらに、臨場感とともに、自然な・リアルな・美しい・圧倒するの4項目の評価語を使って実験した結果、臨場感の中で「圧倒する」との側面が重要な役割を果たしていることが明らかになった。 2Dおよび3D映像コンテンツ視聴中の脳活動をfMRIを用いて計測し、映像各シーンにおける脳内での活動部位とその賦活状況を評価して3D映像特有の脳活動を探索した。その結果、全く同じコンテンツの3D映像と2D映像の鑑賞では、脳活動に有意な差を見出すことは困難であった。しかし、2D映像および3D映像提示直後の集中力テストではスコアに有意な差が認められ、集中力テスト中の脳活動で3D映像視聴後に特有の反応が舌状回に現れた。この脳活動は3D視差情報を取り入れる事で生じる脳の疲労原因である可能性が示唆された。 3D映像の「3Dらしさ」を表現する重要な要因である奥行き感に関し、網膜上での奥行感度を観測する映像表示画面での奥行感度として再定義し、これに基づいて両眼視差と運動視差における奥行感度を実際に撮影した3D映像に対して評価した。さらに、「3Dらしさ」を実現する画像特徴の要因解析を目的として、2D映像中の動きベクトル、人物の顔、構図パターンに基づく奥行きマップの生成手法をPC上のソフトウェアとして実装し,「3Dらしさ」に関する主観評価実験を実施した。その結果、動きベクトルに基づく手法が最も適切な奥行きマップを生成できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究計画では、(1) 3Dコンテンツでの「3Dらしさ」のリアルタイム時系列評価手法の開発と評価実験による感性データの蓄積、(2) 3D映像視聴中の自律神経活動や視聴前後の視覚調節機能の変動特性などの解析、(3) 3D映像の視覚情報処理に関する脳内活動のfMRIを用いた評価と視覚情報を用いた問題解決能力との対比解析、(4) 「3Dらしさ」の物理的要因の解析、(5) 各要因に対する多次元因子分析に基づいた「3D映像が生体に及ぼす影響の客観的・定量的なモデル」の構築と「3Dらしさ」の要因仕様書(3Dレシピ)の決定、を実施対象とした。 (1)に関しては、時間的に変化する映像視聴時のリアルタイム評価手法として、ピンチ力によるcross-modality matching実験が有効であり、「3Dらしさ」の評価構造をグラフィカルモデリングによって明らかにすることができた。ただし、顔および構図パターンに基づく手法については、より多くの学習用画像による評価を必要とする。(2)については、3D映像視聴時の提示視差と視聴後の調節機能低下や自律神経活動との対応関係を確認したが、視差の時間変化に関する検討が不十分である。(3)では、3D映像視聴に特有の脳活動は得られなかったが、これに伴う集中力の低下(脳の疲れ)に相当する脳活動が検出できた。ただし、視差の無い映像でも3D的臨場感が得られるため、視差情報と脳活動に関する詳細な検討が必要と思われる。(4)に関しては、3D映像における点やエッジに基づいた奥行き感、2D映像での運動視差や領域の立体感について研究を進めてきたが、3D映像特有の「艶感やシズル感」を与える要因の追究には至っていない。最終目標である(5)については、現時点では未解決の課題として残っている。 以上の状況から総合的に判断して、やや遅れていると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25、26年度の研究実績を踏まえて以下の課題を個々に検討する。また研究者全員で、3D映像の各要因に対する多次元因子分析を行い,「3D映像が生体に及ぼす影響の客観的・定量的なモデル」の構築、「3Dらしさ」の要因仕様書(3Dレシピ)の決定、および3D映像自動評価システムの提案を目指す。
(1) リアルタイム評価手法における個人差を解析する手法の解明を推進する。また、cross-modality matchingを用いて映像視聴環境による影響やコンテンツ作成方法による違いを明らかにするための実験を行い、環境や場面特性が臨場感に与える影響を明らかにする。 (2) 3D映像視聴時の提示視差およびその時間的変化による視覚機能への影響をより詳細に検討する。さらに、3D視差特有の脳活動探索と3D的臨場感に関する脳活動探索との問題を分離して、fMRIおよびMEGを用いた実験的解析を行う。 (3) 両眼視特有の「艶感やシズル感」と画像特徴量(領域)との関係を明らかにし、これまでの研究結果である「3Dらしさ」との関係に統合する。さらに、映像の「2D/3D変換」の検討を通して、「3Dらしさ」に大きく寄与する要因を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初の計画に比べ、実験補助員および被験者数名が先方の都合で参加不可能になり、人件費・謝金に残額が出た。また、出張計画が、授業など各教員の都合で取りやめとなったことも実支出額の減少となった。さらに、その他の項目で余裕を持った予算を計画したため、この項目での残額も出た。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では今年度の経験を踏まえて配分を再検討したが、次年度は感性評価実験、脳機能評価実験、生理機能評価実験、3D映像解析など、本年度以上の実験頻度で多面的な研究成果を目指す。そのため、物品消耗品費に加えて実験補助員および被験者の人件費・謝金を計上している。
|
Research Products
(10 results)