2015 Fiscal Year Annual Research Report
ユニバーサルなeラーニング環境を構築するための分散型LMS構築に関する研究
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25280124
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宇佐川 毅 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (30160229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 裕司 熊本大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40198164)
苣木 禎史 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (50284740)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学習支援システム / eラーニング / Moodle / 学習コンテンツ同期 / ラーニングアナリティクス / 開発途上国 / Open Textbook / ASEAN諸国 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習コンテンツの活用範囲の拡大を目的として、eラーニングシステム間でのコンテンツの同期や、通信環境を含めた各種制約の強い環境での学習支援を目指した研究を実施した。 コンテンツ同期については、従来手法がMoodleのVERSIONに強く依存しているという弱点を解消すべく、コンテンツのDUMP形式ファイルを利用した遠隔システム間の学習コンテンツ同期 手法の開発を進め、初期的な動作確認を行った。 学習コンテンツの同期に際しては、著作権による制約にも配慮する必要があることから、Open Textbookの利用は有効である。Open Textbookを利用した学習コンテンツを想定し、その利用情報に基づきラーニングアナリティクスを用いた学習行動分析のフレームワークを提案した。 また、携帯電話網やスマートホンでの学習支援を目的として、ソーシャルネットワークとLMSとの連携機能をMoodle上に構築し、その評価を進めた。開発を進めているシステムの有用性を検証するために、南太平洋地域の諸島国における中等教育機関に教員・生徒のソーシャルネットワークの利用実績とLMS利用の可能性との関係について調査を行い、ソーシャルネットワークとLMSとの連携機能によるeラーニングの利用可能性について調査分析を行った。 さらに、平成25年度に構築したICカードによる出席登録システムを活用した学生の学習動向のモニタリングやMoodle上の学習コンテンツやQUIZ等へのアクセス履歴などをラーニングアナリティクスに基づき分析することで、学生の学習行動パターンの予想、特に履修の途中放棄の可能性の高い学生の検出を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は4つの課題、即ち、(1)MoodleのVERSIONに極力依存しない形でコンテンツ同期手法の開発、(2)Open Textbookを利用した教材におけるラーニングアナリティクスに基づく学習履歴解析システムの開発、(3)LMSとソーシャルネットワークシステムの連携によるモバイル学習環境の構築と途上国における利用可能性の検討、(4)出席情報と学習履歴情報にラーニングアナリティクスを適応することで学生の学習行動の予測、に主に取り組んできた。 (1)については、前年度までに明らかになった問題点を解消するための新たなコンテンツ同期手法の開発を開始し、研究室内の仮想環境で基本的な動作確認を終え、一定の成果を得た。(2)については南太平洋諸島国の高等教育機関でOpen Textbookを利用した教材の開発と並行し、ラーニングアナリティクスに基づく学習履歴解析システムのフレームワークを提案した。(3)については、南太平洋諸島国の中等教育機関でのSNS利用実績を明らかにしeラーニングとの連携の有効性を明らかにした。(4)については、ラーニングアナリティクスにより、学習行動から履修の途中放棄の可能性が高い学生群の検出が一定の水準で可能であることを明らかにすることができた。実際の講義での応用にはまだ解決すべき点は多いが、一定の可能性が見いだされた意義は大きい。 以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には申請時の研究計画に沿った形で研究を展開する。LMS間の学習コンテンツの遠隔同期に加え、途上国等を含め多様なネットワーク環境に柔軟に対応できるLMSの機能強化やOpen Textbook等著作権上の制約に配慮した学習コンテンツの開発を行い、その運用を通じて、ラーニングアナリティクスに基づく学習履歴分析や修学状況の推測などについて研究を進める。 まず、LMS間の学習コンテンツの同期手法を、LMSのバージョンにできる限り依存しない形で実現する方法について、従来とは異なる新しい手法で実現可能であることを、前年度までに確認した。今後、提案する新しい方法で実際に運用されているLMSから、他のLMSへの同期について実機を利用して検証を進め、学習コース運用上の課題を洗い出しやその解決に向け、検討を進める。 次に、途上国でのeラーニングの普及と教育環境の充実を視野に、パーソナルコンピュータよりも携帯端末の普及が急である国や世代に対して、ソーシャルネットワークシステムとLMSの連携することによりeラーニングの普及を目的とし、南太平洋地域の中等教育機関での実際の運用を進め、その効果についてのデータ収集・分析を進める。さらに、著作権についての制約条件がないOpen Textbookを積極的に利用した学習コンテンツの開発することで、国ごとの著作権に関する法的制限に大きく束縛されない学習コンテンツの開発を進め、開発している学習コンテンツの遠隔同期システムを利用して国を超えた学習コンテンツの共有化を試みる。対象としては、これまで開発を進めた南太平洋地区のみならずインドネシア、ミャンマーやモンゴル等での展開を検討する。さらに、開発した学習コンテンツの利用状況を、ラーニングアナリティクスに基づき分析することで、コンテンツの有効性や各教育機関のおかれた環境の違いについても分析を進める。
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Causes of Carryover |
前年度未使用額については、意図的に今年度以降の利用を想定したものである。現在本研究に関連する学生が、平成28年度博士後期課程に4名在籍し、内3名が今年度中に博士号取得を目指している。研究成果を雑誌および国際学会への発表が前年度にまして活発になることが想定される。さらに、博士前期課程に3名在籍し、内2名が留学生で母国でもeラーニング普及に本研究で開発中のシステムの応用を想定しており、現地活動のための旅費の確保が必要であると想定される。以上の事情から、前年度の支出を抑制することで、今年度の支出に備えた。なお、このため、前年度の学会発表は、学内外の競争的資金の支援を積極的に応募するように学生指導し、複数の学生が海外での国際学会への参加支援を受けたことから、相対的支出を抑制することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由にも述べたように、本年度は4名の博士後期課程の活動に伴る学会参加や調査研究、さらには雑誌投稿料を中心に支出を計画している。また、本研究の初年度に導入したeラーニング用サーバの強化および共同研究先での学習コンテンツアクセス用デバイス等の追加等を計画しており、物品購入を想定している。
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