2013 Fiscal Year Annual Research Report
新粒子成長過程における大気エアロゾル粒径別化学組成の追跡分級計測システムの開発
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25281004
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
竹川 暢之 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00324369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 博 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 室長 (50392618)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境計測 / 物質循環 / 地球温暖化 / 大気エアロゾル / 組成分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
エアロゾルは直接・間接効果によって気候変動に大きな影響を与える。新粒子生成は雲凝結核数を変化させる要因として重要である。本研究の目的は、エアロゾル粒子質量分級装置 (APM) やレーザー脱離質量分析計 (PT-LDMS) 等を駆使することにより、新粒子成長過程における化学組成の変化を実時間計測するシステムを開発することである。当該年度は各要素部分の試作・評価等を行った。
1. PT-LDMSの試作・評価: PT-LDMSでは、エアロダイナミックレンズ (ADL) によって粒子ビームを生成し、特殊なトラップに粒子を捕集してレーザー脱離質量分析計により組成を定量する。粒径100 nm以下の透過率を向上させるため、ナノ粒子型ADLの設計・試作を行った。また、レーザー脱離条件や反応セル温度などの改善策について検討を行い、新粒子の主要成分である硫酸塩の検出感度を向上させた。
2. 高効率粒子分級部の開発: PT-LDMSは粒子分級部 (単極荷電部、DMA、APM) の下流に設置され、分級された粒子の組成を計測する。APMでは、粒子に作用する遠心力と静電気力のつり合いを利用して、質量により分級する。電気移動度分級装置 (DMA) による分級粒子から多価帯電粒子を除去し、+1価粒子のみを取り出すことを目的とした回転速度と電圧の最適化を粒径50 nmと100 nmにおいて行った。いずれの粒径においても、多価粒子の+1価粒子に対する割合を1/10に低減することが可能となった。さらに、単極荷電の効率を粒径10 nm、30 nm、100 nmにおいて評価した。10 nmと30 nmでは、両極荷電と比較して+1価の荷電効率が大きく向上した。一方、100 nmではほとんど変わらないという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. PT-LDMSの試作・評価: 平成25年度に行った実験により、PT-LDMSの粒子検出効率を向上するための方策が新たに見出されたため、設計を見直すとともに改良試作の時期をやや遅らせた。具体的には、ナノ粒子の拡散損失を低減するために、ADLと粒子トラップの距離を大幅に短縮するという改良案である。当初予定より作業時期は遅れたものの、平成26年度中に感度の向上を達成することができた。
2. 高効率粒子分級部の開発:APMと単極荷電部の評価・最適化はおおむね予定通り進行した。
3. ナノ粒子発生装置の準備: メーカー側の都合により、当該年度に産総研に導入予定であった新型ナノ粒子発生装置の発注が延期されたため、補助金の繰越を行った。これに伴い実験の順序を一部変更した。平成26年度前半は、産総研所有の代替装置で予備実験を行った。平成26年度後半にナノ粒子発生装置を導入し、校正実験のための粒子発生条件の検討を行った。当初予定より作業時期は遅れたものの、平成26年度中に重要な項目は完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 各要素部分の完成:PT-LDMSについて、装置のさらなる改良を行う。粒子透過効率や検出感度の評価を行い、改良の効果を検証した上で、全体システムに統合する。高効率粒子分級部については、おおむね予定通り推進する予定である。放電型の単極荷電装置によって、従来の放射性同位体型の荷電装置を総合的に上回る性能を達成することを重点目標とする。これらの作業は平成27年度前半に完了する見込みである。
2. 全体システムの開発および大気観測: 各要素技術を統合し、専用ラックに一体化する。可搬型となるように小型化・軽量化を目指す。また、測定サイクルを自動化するためのハードウェア・ソフトウェアの開発を行う。ナノ粒子発生装置の準備が遅れた分、他の作業を加速化することで、全体の進捗に大きな遅れが生じないようにする。観測は平成27年度後半に実施する。
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Causes of Carryover |
当該経費は、主にPT-LDMSの改良試作・評価に要する経費である。実験を進める中で見出されたものであり、当初計画にはなかったため、計画の一部見直しを行った。性能が向上することで実験の効率化が見込まれることから、全体の目標達成に大きな影響はないものと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
設計は完了しているため、改良試作・評価の経費は翌年度分と合わせて平成27年度前半には執行できる計画である。
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