2013 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖深部の貧酸素化にともなうマンガン・ヒ素大量溶出モデルの構築
Project/Area Number |
25281007
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
板井 啓明 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (60554467)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 史人 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30626908)
田中 万也 広島大学, 広島大学 サステナブル・ディベロップメント実践研究センター, 特任講師 (60377992)
加 三千宣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (70448380)
熊谷 道夫 立命館大学, 琵琶湖Σ研究センター, 教授 (40234512)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | マンガン / 琵琶湖 / 低酸素化 / 酸化還元 / ヒ素 / 堆積物 / 水質 |
Research Abstract |
平成25年度は三年の研究計画の初年度であり、主に環境計測班によるフィールド調査を実施予定であった。具体的には、(1)琵琶湖北湖3地点における毎月の深度別湖水試料採取、(2)同じく3地点における年3回のコア堆積物および間隙水の採取、(3) 24地点におけるコア堆積物の採取、を実施した。化学分析の結果、北湖3地点全てで、溶存酸素の低下に応答したMn濃度の上昇が認められた。3地点の結果から、Mn濃度が顕著に上昇する湖底直上溶存酸素濃度の閾値は5-7mg/Lと推定された。これは予想よりもかなり高い値であった。また、3地点のうち、南比良沖における湖底直上1mの溶存Mn濃度は、最高で0.11mg/Lと、北湖の平均濃度の100倍以上に達することがわかった。実験的に求めた堆積物からの溶出フラックスを併せて考察すると、南比良沖湖底の高Mn濃度水形成は、溶出後の酸化速度が遅いことが原因と推察された。また、24地点のコア採取では、簡易型XRFによるスクリーニングが終了しており、北湖全域で表層にMn濃集層が認められることが改めて確認された。この値を用いて、湖底表層のMnおよびAs総量の第一次推定値を算出した。 なお、他班(室内実験班、動態解析班)の進行状況として、実験班は、マンガン酸化電極実験系の検討およびMn酸化菌の培養法検討を、動態解析班は堆積物―湖水境界の酸素挙動解析などを実施した。微小電極実験系に関しては感度・分解能等が天然試料へ適用可能なレベルに達したが、Mn酸化菌については培養に適した試料の入手に至らなかった。堆積物―湖水境界の溶存酸素挙動の解析結果は、観測班が間隙水の化学組成から推定した挙動と良く一致していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
湖調査が天候に左右されやすいことを考慮すると、毎月の試料採取をほぼ当初の計画通り完了できたことは誠に幸運であった。予想していた溶存酸素濃度と溶存マンガンの関係も明瞭に導かれ、今後の解析は順調に進みそうな見込みである。湖底近傍における堆積物―間隙水―湖水間の物質動態モデルは、基礎的な数値モデルの型が既に完成し、溶出後のマンガンの拡散挙動と酸化速度の推定がキーパラメータであることがわかっている。 なお、計画外の発展的成果として、10月に実施した24地点のコア採取が記録的豪雨のちょうど一ヶ月後に実施されたことから、洪水由来の物質流入についても重要な知見が得られる見込みである。このテーマについては、金沢大学環日本海研究センターの協力により、堆積物の粒度など基礎情報が既に得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、①平成26年度に実施した環境計測調査結果のまとめ、②室内実験、③物質動態解析モデルの構築、を実施する。環境計測班(担当:板井、加)は、2014年4月までフィールド調査を実施した後、前年度に採取した試料の全ての化学分析を6月までに完了する。堆積物―間隙水―湖水の三相間での物質動態を、動態解析班(担当:板井、熊谷)の協力の下、reactive transport modelを用いて定式化する。他方、堆積物表層への中~長期スケールでのMn・As濃集過程を解明するため、堆積物の堆積速度・粒度を分析的に導出し、24地点におけるMn・As濃集層の空間分布形成要因について数値解析を行う。データの解析結果を実験班と共有し、必要な定数の取りうる範囲について制約を与えていく。 実験班(担当:白石、田中)は、微小電極実験系とマンガン酸化菌を用いた酸化速度実験を実施すべく、実験系検討作業を継続し、段階に応じて琵琶湖で採取したコアないし水試料を用いた実験に応用する。 成果報告として、すでに国内における二件の学会発表が計画されており、進行状況次第で随時発表を行う。また、Mn溶出量の季節変化について論文作成を進める。メンバー間の情報共有を促進するため、4月中旬に研究成果報告会を計画している(実施済)。 特記事項として、代表者が別課題の研究用務のため、夏期以降長期海外出張を予定している。このため、化学分析は出張以前に完了する必要があり、実験およびモデル構築については研究分担者に主体を移行させる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定額に対する差額は45,259円であり、予定総額370万円の1%程度であることから、昨年度の助成金使用状況はほぼ当初計画通りであった。 今年度の助成金は、予定額80万円に前年度残額45,259円を加えたものである。当初予定額との差は大きくないため、執行予定について、交付申請書の記載内容に加えるべき特記事項はない。
|
Research Products
(8 results)