2013 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼および海洋におけるツボカビの多様性と機能評価:検出方法の開発と物質流の定量化
Project/Area Number |
25281012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
鏡味 麻衣子 東邦大学, 理学部, 准教授 (20449250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伴 修平 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50238234)
細井 祥子 (田辺 祥子) 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (80423226)
浜口 昌巳 独立行政法人水産総合研究センター, 生産環境部, 主幹研究員 (60371960)
出川 洋介 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (00311431)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 物質循環 / 生物多様性 / 湖沼 / 微生物 / 菌類 / 珪藻 / 印旛沼 / 琵琶湖 |
Research Abstract |
平成25年度は、①ツボカビのデータベース構築、②ツボカビの検出・定量方法の開発、③ツボカビを介した物質流Mycoloopの評価および④物質循環モデルの提示、に取り組んだ。 検出方法として、ツボカビの胞子体(直径数μm)1個が寄生した珪藻からツボカビの遺伝子のみを解析する手法を開発した。培養している珪藻に寄生するツボカビを用いて、DNA抽出方法、DNAのPCR増幅に用いる酵素、及び試料の状態について検討し、最適な手法を検討した。 次に、開発した方法を琵琶湖と印旛沼で採集した珪藻4種に適用したところ、ツボカビ目Rhizophidiumクレードだけでなく、2つの未記載の真菌類の系統、 真菌類で最も祖先的な系統であり生態がよく分かっていないクリプトマイコータ、および酵母の塩基配列が得られた。ツボカビを含む真菌類の単一の系統が複数の珪藻種に付着または寄生することと、複数の真菌類の系統が単一の珪藻種に付着することから、淡水性真菌類と珪藻種の相互関係は入れ子構造をなしている可能性が浮かび上がってきた。 Mycoloopのうち、花粉―分解性ツボカビー動物プランクトン、について、培養系において定量化を行った。捕食実験から、ミジンコは花粉を直接捕食することはできないが、花粉を分解したツボカビの遊走子は捕食することが明らかとなった。また成長実験により、花粉のみではミジンコは殆ど成長しないが、分解性ツボカビがいると成長速度が高くなることが明らかとなった。この結果から、寄生性ツボカビだけでなく、分解性のツボカビも湖沼生態系の中で物質流(Mycoloop)を駆動している可能性が示唆された。 ツボカビを考慮にいれた物質循環モデルの提示の第一歩として、ツボカビの生物量やMycoloopの重要性について、実験や数理モデルなどもふくめて、これまでの研究成果を総説としてまとめ、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、湖沼および海洋に生息するツボカビに焦点をあて、以下4つの目的に取り組んでいる。①ツボカビの形態分類とDNAシークエンス情報を完全に一致させたデータベースを構築し、これまで見過ごされてきた水圏のツボカビの多様性を評価する。②モノクローナル抗体と定量PCR法、FISH法を用いたツボカビの検出・定量方法を世界に先駆けて開発する。③開発した定量方法と、元素安定同位体分析、操作培養実験により、ツボカビを介した物質流Mycoloopの野外における重要性を定量的に評価する。④これらの成果をまとめてツボカビを多様性と機能を考慮にいれた水圏の物質循環モデルを提示する。 目的①②については、当初計画していた方法以上に有効な微量DNA解析方法を確立することができたため、計画以上に進展しているといえよう。現在、投稿論文としてまとめている。一方で、計画していた単離培養がうまくいかなかったため電子顕微鏡観察に基づく形態分類やモノクローナル抗体、定量PCR法、FISH法などの検出方法の検討が行えていない。この点については、平成26年度に改善していく予定である。 目的③については、平成25年度は実施する予定はなかったが、計画を変更し、培養がうまくいっている分解性ツボカビを用いて、花粉ーツボカビーミジンコという流れ(第2のMycoloop)が存在するかを培養実験にて確認することができた。予想以上に明瞭な結果が得られ、現在投稿論文としてまとめている。 目的④についても、平成25年度は実施する予定はなかったが、ツボカビの物質循環における役割について、過去の研究について、野外調査や実験、数理モデル等様々な視点から整理し、総説として発表した。 以上のように、平成25年度の成果は投稿論文としては3つ、学会発表としては3つになり、研究は計画以上に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
野外におけるツボカビの多様性評価や生物量、物質流を定量的に評価するためには、どうしても培養系の確立が必須となるため、今後は単離培養について力を入れていく。単離培養できたものについては、定量方法(FISH法、定量PCR法)の検討や、培養実験によるMycoloopの検証を行う。 単離培養と並行して、微量DNA解析手法を用いて、調査地を拡大し、諏訪湖や河口湖、東京湾もふくめて、日本各地の水界におけるツボカビの存在をより詳細に検討していく。また、印旛沼については、検出できたツボカビの生態を明らかにするために、季節変動パターンも調査していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ツボカビ試料からのDNA抽出およびPCR増幅が予定よりもうまくいかず、シークエンスを委託したサンプル量が予定よりも少なくなり、次年度使用額とした。 研究費全体としては、ポスドクの雇用のための人件費が大部分をしめるが、DNA実験に必要な試薬の購入(消耗品)やDNAシークエンスの委託費としても使用する計画である。うち、次年度使用額は主にシークエンス受託費として用いる予定である。
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Research Products
(6 results)