2013 Fiscal Year Annual Research Report
3次元森林構造に蛍光分布情報を付加した新しい光環境―光合成モジュールの開発
Project/Area Number |
25281014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 秀樹 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 主任研究員 (10392961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 信 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 技術研究副主任 (70452167)
井上 智晴 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (20608822)
市井 和仁 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (50345865)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リモートセンシング / クロロフィル蛍光 / 植生構造 / 生物季節 |
Research Abstract |
本年度は、モデル開発に必要となる三次元林分構造とクロロフィル蛍光、光合成の観測を実施した。単木レベルの研究では、オオシマザクラの樹木を対象とし、樹木の三次元構造を得るために、2013年7月と2014年1月に3次元レーザースキャナー調査(株式会社パスコへ調査依頼)を実施し、樹木とその周辺環境の3次元点群データを得た。そして得られた点群データからオオシマザクラの樹木の情報を抽出し、10cm単位のボクセル情報への変換を試みた。また、新たに購入した簡易光合成測定器(簡易光合成測定器 EARS社製 MiniPPM 300)と超高波長分解能分光放射計(Ocean Optics社製HR4000:現有機器)を用いて、葉のクロロフィル蛍光と光合成の季節変化データの取得方法について検討を行った。さらに、これらの観測と並行してシュートレベルの形質、フェノロジー観測、土壌水分量、単葉の色素分析、比葉面積、インターバルカメラによるフェノロジー観測も実施し、本研究に最適な観測手法を見出すことができた。また、得られたデータをもとに放射モデルFLiESの改良を進めた。アラスカサイトでは、本年度は予備調査を実施し、mini-PPMを用いてクロロフィル蛍光観測の方法を検討するとともに、シュート角度など、いくつかの群落構造の調査を実施した。その他、岐阜県高山市の落葉広葉樹林帯などで分光、フェノロジー調査を実施した。また、1次元の放射モデルを含む陸域生態系モデルとしてBiome-BGCを選択し、その放射コードや光合成計算ルーチンの解析を行った。その結果、1次元と3次元のスケーリング関係を把握することができれば、陸域生態系モデルへの組み込みが比較的容易となることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、当初予定していたクロロフィル蛍光、光合成測定機器を調達できた。そして、予定どおりにクロロフィル蛍光による光合成調査と超高波長分解能分光放射計による調査を開始できた。また、葉量が最大となる7月と落葉後の1月に樹木の三次元レーザースキャナー観測を予定通り実施できた。これらの調査から、単木におけるクロロフィル蛍光、光合成、分光及びフェノロジー観測の調査手法をある程度確立することができた。また、アラスカの観測サイトでも、予備調査を実施し、平成26年度の調査のための検討を実施することができた。放射モデル開発に関しては、放射伝達モデルFLiESに三次元のボクセル情報と樹冠レベルのクロロフィル蛍光を計算するモジュールを追加するためのコーディングを行い、初期的な結果を得た。樹冠レベルの蛍光計算モジュールの妥当性については来年度以降さらに検討する必要があるが、放射モデルの改良についてはある程度見込みが立ったと言える。 以上、平成25年度に当初予定していた野外調査及びモデルの改良は実施できたことから、本研究は、予定通り達成できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
単木レベルの調査では平成25年度に引き続き超高波長分解能分光放射計と簡易光合成測定器でクロロフィル蛍光観測と光合成測定を実施する。また、アラスカ州フェアバンクスのクロトウヒ林サイトを訪問し,単木の場合と同様に超高波長分解能分光放射計と簡易光合成測定器でクロロフィル蛍光と光合成を測定する。平成25年度に引き続き3次元放射・炭素収支モデルFLiESを拡張する。特に平成26年度以降は開発した蛍光輝度の計算モジュールの検証と蛍光―光合成計算モジュールの開発に重点を置く。景観スケールでは,30m四方~100m四方程度の空間スケールで光環境と群落光合成量の日変化・季節変化を計算し渦相関法から推定される群落光合成 (Gross Primary Production)データと比較する。特に,森林群落上端で観測される群落レベルのクロロフィル蛍光を入力値とし,群落光合成を計算することで,光環境-蛍光-光合成のモデル計算値の一貫性を確かめる。また平成26年度の後半より、光環境―群落光合成モデルで各調査サイトの群落光合成量を計算し,1次元モデルで計算される光合成量の季節変化との比較を行う。この比較から一次元モデルの改善点を明らかにし,特に群落光合成計算において,どの程度詳細な光環境計算が必要か?非同化器官の扱いや葉群の非一様空間分布の取り扱いはどの程度必要か?といった観点から改良スキームを考案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初見積もっていた超高波長分解能分光計器を他の予算で購入し、本科研費研究ではその機器を利用することができたため、支出額が当初より少なくなった。 平成26年度は、分光観測やデータ処理に詳しい、Yang Wei氏を研究分担者に迎え、Yang氏の旅費を見積もったため、当初予定より旅費が多く掛かる可能性がある。次年度使用額は主にこの予算に充当する。
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