2014 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝毒性物質の経世代的影響の定量的評価法に関する研究
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25281027
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
増村 健一 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 室長 (40291116)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝毒性 / ゲノム / 次世代影響 / 遺伝子突然変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝毒性発がん物質の作用には閾値がないものとされているが、実際にヒトが曝露される低用量域においては、生体防御機構により遺伝毒性が抑制される可能性が考えられる。環境化学物質の遺伝毒性リスクに関して、生殖細胞および経世代の遺伝的影響の特徴は明らかでない。本研究では、変異検出用レポーター遺伝子導入トランスジェニックマウスと次世代シークエンシング(NGS)技術を用いて、遺伝毒性の経世代的影響を評価する。 体細胞および生殖細胞に塩基置換変異を誘発するエチルニトロソ尿素(ENU)を85 mg/kg b.w.の用量で週1×2回腹腔内投与した雄マウスを無処理雌マウスと交配しF1個体を得た。ENU投与群および対照群の各1家族単位を用いて全エクソンシークエンシングを行った。ゲノム中の点突然変異の親子間比較を行い、F1個体のゲノムに新規に誘発された変異を抽出した。NGS解析によって得られた突然変異候補について、サンガー法(キャピラリ型シークエンサー)による確認シークエンシングを行い、その真偽を検証した。確認後の突然変異数を用いて次世代変異頻度を算出した結果、ENU群において対照群と比較して約17倍高い変異頻度が得られた。ENU誘発次世代変異スペクトルは体細胞変異スペクトルと共通した特徴を示した。 日本環境変異原学会第43回大会において本研究成果を発表した。 さらに、次世代変異の用量反応関係の検討を行うための動物実験を実施した。雄gpt deltaマウスにENUを30, 10 mg/kg b.w.の用量で週1×2回腹腔内投与した。投与後10週目から無処理雌マウスと交配しF1個体を得た。各用量における家族単位のゲノムを取得した。父マウスの肝臓、精巣および精巣上体、母および子マウスの肝臓をサンプリングした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ENUを投与した雄個体由来の子のゲノムに誘発された点突然変異の検証を行った。NGS解析および変異の親子間比較によって得られた変異候補について、サンガーシークエンスを用いてその真偽を確認した。その結果、ENU群においては変異候補の83%(123/148)が真の変異と判定された。これはNGS解析によって子のde novo変異を高精度に検出できる可能性を示している。一方、対照群においては真の変異と確認できたのは25%(3/12)であった。対照群は変異頻度が低い分、シークエンスエラー等のバックグラウンドノイズの影響が大きいと考えられた。こうした疑陽性の頻度は約30x10-8 baseであり、今回の実験条件での検出力を評価する上で重要な情報が得られた。サンガー法で確認された変異数を用いて次世代変異頻度を算出した結果、ENU群で約17倍の高値を示した。また、次世代変異スペクトルがENU誘発変異の特徴を示したことから、NGS解析によって次世代変異の検出が可能であることが示唆されたと考える。 さらに、再現性及び用量反応性を検討するための動物実験を行った。中、低用量のENUを投与し、家族単位のゲノムサンプルを得ることができた。これは次年度のNGS解析に用いる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度に取得した中・低用量のENUを投与した雄由来の家族ゲノムサンプルを用いて、各群1家族単位について全エクソン領域のNGS解析を行う。全4家族(高・中・低用量ENUおよび対照群)の全エクソン配列データを用いて変異検出及び突然変異の親子間比較を行い、子マウスゲノムに新規に誘発された変異を検出する。各用量群における次世代変異頻度を算出し、用量反応曲線を作成する。前年度までのデータと比較し、解析個体数の影響やバックグラウンド変異の低減化など、NGS解析による変異検出法の条件検討を行う(次年度も継続)。必要に応じて、サンガーシークエンシングによる検証も検討する。 また、ENUを投与した雄親個体を用いて、体細胞と生殖細胞における突然変異の測定を行う。体細胞変異頻度の測定には肝臓DNA、生殖細胞変異頻度の測定には精巣および精子DNAを用いる。gptアッセイを行い、点突然変異頻度を算出してそれぞれの用量反応曲線を作成する。 次年度は、遺伝毒性物質に曝露された個体の体細胞と生殖細胞における突然変異誘発性の感受性の違いを検討する。体細胞および生殖細胞における変異原性と次世代個体ゲノム変異との相関について検討する。次世代変異の定量的評価を通じて遺伝毒性の経世代的影響と生体防御機構の関与について考察する。
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Causes of Carryover |
本研究では次世代DNAシークエンサーを用いたシークエンス解析および突然変異部位の塩基配列解析を外注する費用を計上している。今年度までに得られた結果から、次年度に約500万円の解析費用が見込まれるため、次年度使用額とする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度に実施した動物実験で得られた組織サンプルを用いて次世代DNAシークエンサーを用いた塩基配列解析および変異検出の外注を行う。想定されるサンプル数分の全エクソン解析および情報解析に約500万円を充当する計画である。 内容としては、組織から抽出したゲノムDNAからゲノムライブラリーを作成し、全エクソン領域の濃縮を行った後、NGS解析を行う。対象となるエクソン領域(50Mb)に対するシークエンス冗長度は約100倍(5Gb)を目安とし、得られた塩基配列を参照ゲノム配列に対してマッピングする。各サンプルの配列データから変異塩基リストを作成し、変異の親子間比較を行う。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Role of p53 in the progression from ochratoxin A-induced DNA damage to gene mutations in the kidneys of mice.2015
Author(s)
Kuroda K, Hibi D, Ishii Y, Yokoo Y, Takasu S, Kijima A, Matsushita K, Masumura K, Kodama Y, Yanai T, Sakai H, Nohmi T, Ogawa K, Umemura T.
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Journal Title
Toxicol Sci.
Volume: 144
Pages: 65-76
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] In vivo evidence that DNA polymerase kappa is responsible for error-free bypass across DNA cross-links induced by mitomycin C.2014
Author(s)
Takeiri A, Wada NA, Motoyama S, Matsuzaki K, Tateishi H, Matsumoto K, Niimi N, Sassa A, Grúz P, Masumura K, Yamada M, Mishima M, Jishage KI, Nohmi T.
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Journal Title
DNA Repair
Volume: 24
Pages: 113-121
DOI
Peer Reviewed
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