2013 Fiscal Year Annual Research Report
胎児期~小児期における有機臭素系難燃剤曝露が肥満症に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
25281033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
柳澤 利枝 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (70391167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 英子 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (60353538)
TIN・TIN Win・Shwe 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (00391128)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小児・次世代影響 / 肥満症 / 難燃剤 / 環境 / 社会医学 |
Research Abstract |
近年、肥満症は、成人のみならず、小児においても急激に増加しており、先進国を中心に大きな社会問題となっているが、この原因の一つに、環境化学物質の関与が指摘されている。本研究で対象とする有機臭素系難燃剤(Brominated Flame Retardants; BFRs)は、家電製品や繊維製品の難燃剤として広く用いられる一方、脂溶性に富み、生物蓄積性も高いという性質から、室内環境などからの曝露による健康影響が懸念されている環境化学物質である。本研究では、BFRsの胎児期から小児期における曝露が、小児、あるいは成人の肥満、および肥満に起因する諸病態の発現・進展に及ぼす影響を評価し、その作用機構を解明することを目的とする。H25年度は、BFRsの一つであるデカブロモジフェニルエーテル(DecaBDE)の飲水曝露が、普通脂肪食、あるいは高脂肪食摂取下におけるマウスの肥満症の発現・進展に及ぼす影響を検討した。その結果、いずれの食餌においてもDecaBDE曝露による体重変化は認められなかったが、精巣上体周辺の脂肪組織は、高脂肪食摂取下におけるDacaBDEの低用量曝露で有意に減少し、対照群に比してインスリン抵抗性の改善傾向を認めた。一方、高脂肪食摂取下におけるDacaBDEの高用量曝露により、インスリン抵抗性は亢進する傾向を示した。空腹時血糖は、高脂肪食摂取下におけるDacaBDEの高用量曝露で有意に上昇した。以上の結果から、高脂肪食摂取下におけるDecaBDE曝露は、用量によって糖・脂質代謝に及ぼす影響が異なる可能性が考えられた。また、マウス前駆脂肪細胞3T3-L1を用い、DecaBDE曝露が脂肪細胞の分化過程に及ぼす影響について検討した結果、DecaBDE曝露による分化への影響は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の研究計画どおりに進展しているが、脂肪細胞を用いた検討において分化への影響が認められなかったことから、マクロファージとの共培養を用い、細胞間の相互作用に対する影響評価も視野に入れて検討を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、胎児期、および乳児期におけるBFRs曝露が次世代の肥満症に及ぼす影響について検討を進めていく。また、脂肪細胞、あるいは脂肪細胞とマクロファージの共培養系等を用いることにより、脂肪組織におけるBFRsの曝露影響評価、および作用機構の解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度に予定していた外注による成分分析を年度内にできなかったため。 また、脂肪細胞を用いたBFRs曝露による影響評価について、分化に対する顕著な影響が認められなかったことから、その後の解析を行わなかったため。 H25年度に行った動物組織の遺伝子発現解析の不足分、および共培養系の確立に充てる。
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