2016 Fiscal Year Annual Research Report
胎児期~小児期における有機臭素系難燃剤曝露が肥満症に及ぼす影響に関する研究
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25281033
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
柳澤 利枝 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (70391167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 英子 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 室長 (60353538)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肥満 / 難燃剤 / 小児・次世代影響 / 社会医学 / 衛生 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、胎児期から小児期における臭素系難燃剤ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)曝露が仔の肥満症に及ぼす影響について検討した。妊娠5日目から出産後21日目までHBCDを飲水曝露し、雌雄の仔獣に対して5週齢より高脂肪食、あるいは普通脂肪食を摂取させ、経時的変化(体重、摂餌量、摂食量)、および解剖時(20週齢)における影響を検討した。その結果、雌雄の仔獣ともに体重、組織重量(肝臓、内臓脂肪組織、脾臓、脳)、耐糖能においてHBCD曝露による明確な影響は認められなかったが、高脂肪食を摂取した雌の仔獣において、HBCD曝露による空腹時血糖の上昇傾向を認めた。また、内臓脂肪組織から調製した間質血管細胞の構成をフローサイトメトリーで解析した結果、雌の仔獣においてマクロファージの割合が増加傾向を示した。 脂肪組織における炎症反応への影響を評価するため、脂肪組織培養の実験系の確立を試みた。採取した内臓脂肪組織をSerum-free M199 培地で3日間培養し、培養上清中のTNF-α、MCP-1、IL-6の分泌を確認した。本培養系を用い、前述の実験系における雌仔獣の腸間膜、または卵巣周囲脂肪組織を培養し、培養上清中のTNF-α、MCP-1、IL-6を測定した結果、いずれもHBCD曝露により増加する傾向が観察された(腸間膜脂肪組織のIL-6産生を除く)。 以上の結果から、胎児期から乳児期におけるHBCD曝露により、成長後の肥満病態における血糖値上昇を促進し、その作用機序として、脂肪組織における炎症反応の亢進が一部寄与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
H28年度に予定していた人員が確保できなかったため、解析の一部を外注で対応したが、計画全体に遅延が生じた。加えて、研究分担者が別の研究課題で多忙を極めたため、年度当初に予定していた研究計画の一部が実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
人員の増加は見込めないことから、必要に応じて解析の一部を外注で対応する。 詳細な分子メカニズムの解明のため、脂肪細胞とマクロファージの単独培養、および共培養系を用いた難燃剤の影響解析を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた人員が確保できなかったため、計画全体に遅延が生じた。加えて、研究分担者が別の研究課題で多忙を極めたため、年度当初に予定していた研究計画の一部が実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
胎児期から乳児期のHBCD曝露が雌仔獣の肥満病態における高血糖を亢進した作用機序について、詳細な解析を進める。 また、脂肪細胞、およびマクロファージの単独培養、および共培養系を用いて、詳細な分子メカニズムの解明、および他の臭素系難燃剤曝露による影響についても検討を行う。
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