2014 Fiscal Year Annual Research Report
未規制の環境中分解物を含めた法規制有害物質の一斉分析とリスク評価
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25281049
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
亀屋 隆志 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 准教授 (70262467)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境分析 / モニタリング / 有害化学物質 / 環境リスク / 化学物質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、法規制対応の有害化学物質とそれらの環境中分解物に着目し、環境中挙動を踏まえた親・子化合物の包括的な環境ばく露評価の重要性を社会に提示することを目的とした。 平成26年度は、前年度に引き続き、同時同定定量DBシステムAIQS-DBへの対象物質の追加を図った。また、GC/MSによる分析が困難な物質について、LC/MS/MS一斉分析法の適用を検討した。その結果、GC/MS一斉分析可能な化管法対象物質61物質に対し、分解生成物185物質がリストアップされ、標準試薬の入手や調製、GC/MSでの分析可否を検討したところ、既存DBに含まれる27物質のほか、39物質が同定・定量可能に、18物質が同定のみ可能となった。LC/MS/MSでは化管法対象56物質が分析可能で、うち15物質は分解性があることがわかった。 続いて、GC/MSで分析可能な分解生成物84物質について都市近郊の環境水質測定点などの河川水サンプルの分析測定データの再解析を行ったところ、38物質が検出され、検出率50%を超える高頻度検出物質が10物質存在することがわかり、環境中で親物質よりも高濃度で検出される分解生成物も存在することが明らかになった。 また、親・子化合物についての水生生物毒性情報の収集を行ったが、特に環境中分解物については毒性試験に関する文献情報がほとんど存在しないものが多いことがわかった。このため、公表されている毒性情報が比較的多い農薬およびその環境中分解物を取り上げ、米国環境保護庁が提供している構造活性相関解析ソフトウエアEPI-Suiteに収録済のECOSARを用いて毒性情報の推算を試みた。推算値と報告されている毒性試験値との間には100倍~10000倍程度の差が生じる物質も少なくなく、推算値を用いる場合には信頼性の確認が極めて重要であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化管法を中心とした法規制対象物質およびその環境中分解物の一斉分析法の開発では、GC/MS AIQS-DB法の適用範囲についてはほぼ終了し、これに該当しない法規制対象物質およびその分解生成物のLC/MS/MS一斉分析法の開発にも着手している。 実環境中でのモニタリングデータの蓄積では、GC/MS一斉分析が可能な法規制対象物質およびその分解生成物について、環境サンプルの分析測定データの再解析や新たなサンプリング調査によって、データの蓄積を進めている。 水生生物毒性情報の収集は、農薬の環境中分解物を例では毒性試験に関する文献情報がほとんど存在しない物質が多いことがわかったので、構造活性相関を用いた推算値の併用条件の検討を始めている。 これらの進捗状況はおおむね予定どおりであり、当初目的は期間終了までに達成できるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
GC/MSおよびLC/MS/MSを用いた一斉分析法の適用範囲はおおむね明らかになってきており、今後は検出下限値や定量下限値などの条件が明確になるように整理していく予定である。また、法規制対象物質(親化合物)とその環境中分解物(子化合物)の実環境中でのモニタリングデータの蓄積も、分析測定データの再解析や新たなサンプリング調査分析によってさらに蓄積する計画である。すでに子化合物の方が高濃度で検出される実例も確認されており、毒性情報と合わせて、親化合物と子化合物でのリスク評価も行う予定である。
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