2013 Fiscal Year Annual Research Report
丘陵地森林の放射性物質の流出・循環の景観生態学的分析と里山の生態的再生の検討
Project/Area Number |
25281051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 達明 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (40178322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 輝昌 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (20291297)
保高 徹生 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 研究員 (60610417)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生態系修復 / 放射性物質汚染 / 里山 |
Research Abstract |
里山の環境回復を目指して、川俣町山木屋地区にて農家と共同で、2011年より景観レベルの放射性環境動態を調べてきた。その結果、放射線量は全体に減少していたが、大部分は物理的減衰に従っており、放射性物質の異所的移動は顕著でなかった。森林における土層深層への放射性Csの浸透は、事故当初の地表のリター被覆状況によって主に異なっていたが、A0層が発達した落葉広葉樹林では2013年でも6割以上A0層に残存していたのに対し、伐開地や林内放牧地等の攪乱地では4~8割A層に浸透していた。 2013年には、A0層除去処理や木質チップ敷き均し処理等の環境回復試験を丘陵地斜面に広がる落葉広葉樹林(全1500m2)で行い、放射性Csの循環量・流出量の測定を始めた。L層除去処理では1アールあたり400kgの除去に1人日、A0層全層含む厳密除去処理では同じく1200kgの除去に3.5人日の作業を要した。L層除去によって林床の放射能は2~5割、空間線量率は1~2割減少するとともに、樹体内や林内雨の放射性Cs濃度の低下も見られた。A0層厳密除去処理によって、林床の放射能は9割近く、空間線量率は5割減少したが、土砂流出が大幅に増大した。A0層全除去区の土砂流出は著しく増え,林床処理後約5ヶ月間の137Cs流出率は1.67%となった。L層・F層除去区の同流出率は0.53~0.62%で,対照区の0.09%より大きかった。林床処理を行った区から流出した137Csの96%以上はリターと土砂でありこれらは試験区末端に設けた柵によって堰き止められた。堰き止められずに森林外へ流出した137Csのうち植物に吸収されやすい溶存態の濃度は対照区で9.5Bq/Lであるのに対し,L層・F層除去区で3.6~6.5Bq/L , A0層全除去区で2.1Bq/Lと低減した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画していた事項はすべて実行され、植物への放射性セシウムの移行や森林生態系循環量の見積もりなどで、当初予定していた以上に早く成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
原則として、当初の計画調書通り研究を進める。一方で、避難区域の解除が進み、住民の生活復帰が現実的な課題となりつつあるため、その際に必要な林産物の汚染状況の評価についても研究対象とする。
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