2013 Fiscal Year Annual Research Report
新しい移動追跡法を用いた島嶼生態系保全システム構築のための基盤的研究
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25281056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
河野 裕美 東海大学, 沖縄地域研究センター, 准教授 (30439682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
依田 憲 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (10378606)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生態系管理・保全 / 島嶼生態学 / 海鳥 / 個体群動態 / データロガー |
Research Abstract |
初年度は、飛翔・採餌行動の発達と海洋生活への適応期であると考えられるカツオドリ巣立ち幼鳥に対して、時刻・照度・着水の有無・水温を1年以上記録し、照度データと日長時間により位置を推定することが可能なGLS(Geo Location Sensor)を装着した。同時に先行研究により装着していたカツオドリ成鳥からGLSの回収と再装着を行った。これまでに成鳥22個体に装着し、このうち12個の回収と再装着に成功している。 仲ノ神島では、これまでに足環標識を行ったカツオドリ幼鳥が、フィリピン南部周辺海域から多数回収されたことから、フィリピンからインドネシアの多島海域が同島のカツオドリの非繁殖期の主要な利用海域であると考えられてきた。しかしながら、取得できた成鳥10個体のデータ解析を行ったところ、仲ノ神島繁殖地を渡去したカツオドリ成鳥は、南下してフィリピンのルソン島北部海域や、フィリピン南部・ボルネオ島周辺海域、パプアニューギニア北方海域まで移動する個体と、北上して東シナ海で非繁殖期を過ごす個体がいることなどが明らかになった。この結果の一部は予想の範囲であったが、主要な越冬期の利用海域にはいくつかのパターンがあることが明らかになり、さらに多くの個体を解析する必要性が示唆された。 また仲ノ神島において過去30年以上にわたり継続してきた主要海鳥類の繁殖番い数や巣立ち幼鳥数等を記録した。このうち比較的繁殖期が長く、この間に繁殖番い数が4倍に増加したカツオドリについては、雛の羽衣パターンに基づく週齢査定を行ってふ化日を特定し、抱卵・巣立ち・渡去時期の各繁殖段階の移行を推定する手法を提案し、発表した。今後は、個体群変動だけでなく、産卵時期の年差と海洋環境等との関係をモニタリングできる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な目的は、動物搭載型センサーを用いて海鳥類を中心とした島嶼海洋生態系の変動を記録し、海鳥の個体群動態を左右するメカニズムを明らかにすることにある。その上で、過去30年以上にわたりモニタリングしてきた長期変動を評価かつ将来予測することにより、島嶼生態系の保全および自然資源の観光利用や開発などに対しての指針を示すことである。 かつて継続的な人為的攪乱を受けて個体群の減少傾向にあった仲ノ神島の海鳥類の中で、広範囲に営巣するカツオドリと高密度で集中して営巣するセグロアジサシの個体群動態を追うことで繁殖地保全の現状を評価する。前者の繁殖番い数は4倍以上に、後者の巣立ち雛生産は約2倍以上になり、増加傾向を示している。ここでは、かつて数千から数万単位の標識調査を行い、幼鳥の帰還年齢や初繁殖年齢、死亡率等のデータは蓄積されたが、非繁殖期の越冬海域や移動経路を示す足環の回収についてはほとんど成果が上がらなかった。 本研究では個体群変動を記録しつつ、開発と機能向上の著しい動物搭載型ロガー(GPS、GLS)を用いて、その回収とデータ取得、解析も順調に進んでいる。その結果、カツオドリ成鳥の繁殖期と非繁殖期を通した利用海域や移動経路、オオミズナギドリ成鳥の繁殖期の採餌海域などが徐々に明らかになってきた。またGLSロガーの軽量化により小型海鳥のクロアジサシにも装着可能となったが、装着した個体の帰還を確認したうちの2例のロガー回収に初めて成功し、取得したデータを解析中である。これらの成果については本年度も順次発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
仲ノ神島において繁殖数と産卵期推定等の繁殖状況モニタリングを継続して行う。 平成25年にカツオドリ巣立ち幼鳥60個体にGLSを装着したが、同島での標識結果によれば初帰還まで生き残るのは平均30%程度であり、帰還は早くても平成27年度以降になる。したがって、本年も同数程度の巣立ち幼鳥にGLSを装着して回収率を高める。同時に、GLSを装着してあるカツオドリ成鳥22個体とクロアジサシ成鳥32個体の再捕回収と同一個体への再装着を行う。 これまでにカツオドリ成鳥12個体とクロアジサシ成鳥2個体のGLS回収に成功している。本年度もGLSの回収事例を増やすべく捕獲を試み、非繁殖期の越冬海域と移動経路などの解析を行う。成鳥の解析事例を増やし、さらに同一個体の連続複数年の行動圏解析を行うことにより、繁殖地での産卵開始時期、越冬海域の年差、両エリア間の南下北上のタイミング等と海洋環境との関係についての解析も進めたい。 また新しく開発された、水深用圧力センサーと温度計測用センサーを搭載し、1~10カ月程度の連続計測が可能な最新のデータロガーを入手し、これをカツオドリに装着して採餌行動等の解析を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海鳥類に装着する小型ロガー(ジオロケーター:GLS(Biotrack社製、イギリス))の補充を平成25年度末までに検討した。しかし、補充希望個数(50~60個、約150万円、諸経費含む)を購入するには残金では不足した。さらに海外製品であるためレート変動に対応するための猶予もなく、加えて諸経費(輸送費や手数料)の割合が非常に大きくなる。したがって、今年度未使用額と次年度予算を合算して購入することで、より効率的に希望個数を補充できると考えた。 次年度予算(基金補助金)と合算することで、GLSを50~60個購入する。
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[Presentation] Diet composition of the tiger shark, Galeocerdo cuvier, around Yaeyama island, Okinawa, Japan2013
Author(s)
Yano, T., Yano, K., Horie, T., Fujinami, Y., Kohno, H., Mizutani, A., Murakoshi, M. and Tanaka, S.
Organizer
9th Indo-Pacific Fish Conference
Place of Presentation
Okinawa Convention Center, Okinawa
Year and Date
20130624-20130628
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