2013 Fiscal Year Annual Research Report
農地からのCH4とN2O放出に関わる微生物プロセスの解明と削減技術の確立
Project/Area Number |
25281059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 修一 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (00154500)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 温暖化 / 温室効果ガス / 水田転換栽培 / 土壌微生物 |
Research Abstract |
(1)温室効果ガスであるメタン(CH4)と亜酸化窒素(N2O) は水田や畑土壌が主要な放出源となっている。農地からのCH4とN2Oの放出は微生物活動に由来するが,水稲と大豆を交互に栽培するシステム(水田-大豆転換栽培)では,土壌の酸化還元条件の大きな変化による微生物活動の低下を通じてCH4とN2O放出の大幅削減が可能になるかもしれない。そこで,青森県中泊町で水稲連作,水稲-大豆2年ごとの交互栽培,連続畑作区の計6区の土壌窒素含有量と窒素関連遺伝子の変動について調査した。 (2)土壌pHは連続畑作区で高い(7以上)が,水田を入れた区では低くなる傾向があった。アンモニア態窒素は生育期間を通じて連続畑作区で低く,特に大豆転作区では生育後半に高くなった。硝酸態窒素は連続水田区で最も低かったが,他の区間で大きな違いはなかった。アンモニア酸化から脱窒に関わる一連の経路に働く5機能遺伝子(アンモニア酸化(amoA),硝酸還元(narG),亜硝酸還元(nirS),一酸化窒素還元(cnorB),N2O還元(nosZ))の存在量をリアルタイムPCRで測定したところ,アンモニア酸化は連続畑作区が高いが,硝酸還元から脱窒の4遺伝子は連続畑作区で低く,連続水田区で高くなった。水田―大豆転換区はその中間に位置し,転換区の水田と大豆栽培区では大きな差はなかった。これらのことから,水田と畑作の転換栽培は土壌の酸化還元条件の変化を通じて窒素代謝遺伝子群の活性を大きく変えることが示された。特に,連続水田区はN2O発生に直接関与するnosZ活性が最も高く,N2O発生を抑制する効果が最も高いことが示唆されたが転換区ではnosZ活性が下がりN2O発生が増える可能性も考えられる。 (3)N2Oの発生には,土壌中の無機窒素量も関係するが,大豆への転換栽培により土壌中のアンモニア態窒素が増え,それがN2O発生にどのような影響を与えるかは,今後の研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
機械(ガスクロマトグフィー)の調子が悪いため,予定していたCH4とN2Oのフラックス測定が出来なかったため。しかし,土壌微生物群集解析は順調に進み,当初の目的を達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は,フラックス測定が可能になったため,メタンを含めた温室効果ガス発生に関与する遺伝子群の解析とフラックス測定を平行して行い,両者の関係を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,33,261円であり,金額が少ないため当該年度に使い切るより,次年度に物品費として使用することにした。 次年度に配分される金額に加えて,実験に必要な資材を購入する。
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