2015 Fiscal Year Annual Research Report
農地からのCH4とN2O放出に関わる微生物プロセスの解明と削減技術の確立
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25281059
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 修一 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (00154500)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | メタン発生 / メタン生成菌 / 土壌 / 水田 / 田畑転換栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
田畑転換は水田からのメタン発生を抑制する有力な手段となり得ることがこれまで研究から示唆された。しかし,これまでの調査は青森県の津軽地方という限られた地域での水田での調査であった。そこで,水田からのメタン発生を引き起こすメタン生成菌が地理的にどれくらい分化しており,その地理的分化の中で田畑転換が水田のメタン生成菌群集にどれくらいの変動幅を与えるかの情報は,田畑転換によるメタン発生の一般的効果を調べるうえで重要である。そこで,本年は,青森県津軽地方で田畑転換を行っている水田土壌と北海道から九州までの全国の水田連作土壌におけるメタン生成菌群集の空間変異を比較することで,田畑転換によるメタン生成菌群集の変動効果を推定した。 全国46の水田土壌から13種のメタン生成菌が検出されそのうち8種はどの地域の水田においても優占種として含まれていた。優占していた8種のうちいくつかの菌種はその構成割合が緯度や土壌pHと有意な相関を示したが,主成分分析による群集構造解析では,地域間にメタン生成菌の明確な分化は見られなかった。ダイズ畑作から転換1年目の水田土壌のメタン生成菌群種は連作水田土壌の群集と大きな差が無かったが,水稲根におけるメタン生成菌群集では転作1年目水田と連作水田で有意差が見られた。水田におけるメタン発生は主にイネの根で生じることから,水田と畑作の転換栽培は地理適変異に比べ水田のメタン生成菌群集を変える大きな効果を持つことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年が最終年であったが,データー収集はほぼ終わったが,データーの解析がやや遅れている。また,本研究はフィンガープリンティング法でメタン生成菌群集を解析したが,最近急速に普及してきた次世代シークエンサーによるメタン生成菌の群種解析もこれまでの結果の妥当性をチェックする上で必要と思われ,1年間研究を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果をまとめて海外の一流雑誌に論文を投稿する。また,日本でも田は多転換がメタン生成削減に効果があることを様々な媒体を使って広報して行きたい。
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Causes of Carryover |
これまでメタン生成菌の分析には特異的プライマーを用いてPCR増幅したDNAを制限酵素で切断するという手法を用いてきた。しかし,この方法は指紋分析(Fingerprinting method)と呼ばれるように,DNA変異を間接的に調べる手法で有り,微生物群集の正確な分析とは言えない。ここ数年で急速に普及してきた次世代シークエンスによるメタゲノム解析はDNAの塩基配列を直接解析するより精度の高い方法である。これまで用いてきたフィンがプリンティング法であるT-RFLP分析と次世代シークエンスによるメタゲノム分析を比較することでこれまでの結果の妥当性を検討するため1年間研究を延長する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した金額を,次世代シークエンスの外注費として使用する予定である。
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