2015 Fiscal Year Annual Research Report
界面イオン輸送現象を利用した高速水素生成・貯蔵システムの開発
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25281061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大友 順一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (90322065)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低炭素社会 / 化学エネルギー貯蔵 / イオン伝導体 / 水素生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体イオニクスとケミカルループ法を融合させた高速水素エネルギー生成・貯蔵システム(ケミカルループ型水素エネルギー変換システム)の基礎技術の開発を目的とする。平成27年度は、酸素キャリアの化学変換サイクル:(1)還元反応(化学エネルギー貯蔵)→(2)水素生成 →(3)完全酸化反応(熱回収・酸素キャリア再生)について、熱化学的ループ変換の検討に加え、電気化学的ループ変換についても材料開発を中心に検討を行った。熱化学的ループについては、酸化還元サイクルに耐久性を有する自己再生型酸素キャリアのモデル粒子の開発を行った。すなわち、La-Al-O系ペロブスカイト型担体にニッケルあるいは銅を酸素キャリアとして担持し、酸化還元サイクルに応じて担体上でのニッケルナノ粒子あるいは銅ナノ粒子の固溶析出を進行させることで、高分散、高表面積を保持した長寿命粒子の開発を行った。実際に、参照用のアルミナ担体と比較した場合、上述の自己再生型酸素キャリアについては、酸化還元反応時の活性の向上が示された。また、水素生成過程については、昨年度に引き続き、鉄ドープカルシウムチタネート(CTFO)等の担体に用いた検討を行うことで、弱い酸化雰囲気でも酸化物イオン伝導性に加え電気伝導性を有する担体材料が、水素生成における反応促進効果を有することが示された。さらに、電気化学的ループ変換デバイスに必要なプロトン伝導性固体電解質の開発を行った。高La/W比を有するタングステン酸ランタンにより最も高いプロトン伝導率を示す電解質材料を合成することに成功した。関連する局所電気化学測定手法についても、三相界面長を規定した一粒子測定用セルを作製し、その電気化学計測を実施した。これらの新しい知見や新材料を用いることで、本研究で提案するケミカルループ型水素エネルギー変換システムを具体的に提案することが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、熱化学的ループ変換の検討に加え、電気化学的ループ変換についても進展があった。熱化学的ループ変換については、自己再生型酸素キャリアの提案による酸化還元サイクルに耐久性を有する新材料の実現性が示され、水素生成過程では、担体のイオンおよび電子輸送特性が水素生成の加速効果に影響を与えることを示すことで、ケミカルループ型水素エネルギー変換システムで使用する酸素キャリア材料の設計指針を与えることができた。その酸化還元反応時の加速効果については、今年度論文発表を行った。さらに、電気化学的ループ変換では、La/W比の制御により高プロトン伝導率を有するタングステン酸ランタンの単相合成を行うことに成功した。この新電解質材料を用いることで、新デバイスへの応用が可能になる。このように、今年度得られた知見は、高速水素エネルギー生成・貯蔵システムの実現化に大きく貢献する成果であり、本研究は順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
熱化学的ループ変換および電気化学的ループ変換の両者のシステム設計とそれらの実現性の観点から、酸素キャリアの反応性、輸送特性、および酸化還元ループ時の寿命診断の検討を進める。キャリア粒子の界面および内部の微細構造変化を電子顕微鏡と画像解析により評価する手法を確立し、酸化還元反応の加速効果と長寿命の両者の利点を有するキャリア粒子の設計指針を提示する。同時に、新たに開発したプロトン伝導性固体電解質(タングステン酸ランタン)を用いた電気化学的ループ変換デバイスの開発を行う。すなわち、発電と水素生成が可能な再生型燃料電池を作製することで、これまで検討してきた酸素キャリアと再生型燃料電池から構成されるシステムの構築が可能になる。以上、これまでに得られた材料物性と反応速度論的知見を統合化することで、熱化学的および電気化学的ループ変換システムの設計を行い、効率や出力に関するシステム性能評価を実施予定である。
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Causes of Carryover |
電気化学的ループ変換システム用の材料開発については、特にプロトン伝導性固体電解質と関連するエネルギー変換デバイス作製を中心に今年度(平成27年度)から継続して次年度も実施予定である。また、酸素キャリア粒子の酸化還元繰り返し時における性能評価についても次年度実施予定である。それら材料開発と評価手法の現在の開発状況から判断し、平成28年度のシステム開発と材料開発に研究予算を投資することが、研究全体の計画上適切と判断した。なお、以上については、今年度の電解質材料開発に示されるように、その成果内容に基づくものであり、研究の進展の遅れを意味するものではなく、研究計画全体についての適切な判断に基づく予算計画である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プロトン伝導性固体電解質とエネルギー変換デバイスの作製、および酸素キャリア粒子の評価実験等に使用予定である。
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Research Products
(9 results)