2013 Fiscal Year Annual Research Report
次世代ハイパワーLED信号灯のユニバーサルデザイン化技術の考案に関する研究
Project/Area Number |
25282010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
落合 太郎 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (00330788)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光源技術 / ユニバーサルデザイン / 色覚異常 / 交通事故 / 管制 / 信号機 |
Research Abstract |
本年度に実施した研究項目は①平成24年3月に実施した社会実験の総括、②次世代LEDユニバーサルデザイン化技術のコンセプト開発であった。 ①福岡社会実験では94%の参加者から賛同を得る結果であったが公道条件下ではプルキンエ現象による新たな改良課題が発見された。福岡社会実験では「運転時」に限定し、同一被験者による「複数回の回答」を排除したデータであり、色覚異常者と健常者の識別記号の見え方の差および必要性に関して統計的な有意差が確認された。平成24-25年度には改良モデルを別途開発して所与の課題をクリアしたと確認し、考察・検討成果は平成25年度に関連する学会で発表した。 ②次世代ユニバーサルデザイン化技術に関しては、本年度のEUROLUCEをミラノサローネに視察し、パリで開催されたCIE国際会議で本案を発表し、LED照明の常識を超える発想を得るため、関連要素技術を持つ専門家等にアドバイスを求めた。識別記号の描画方式として仕切版方式・導光版方式・リモートフォスファー方式・ライティングパイプ方式・レーザー方式・プロジェクター方式等のショートリストを案出し、その際コンセプトイラストを基に、識別記号が描けるか?配光分布が揃うか?コスト?蓄積したノウハウに照らして矛盾がないか?を協議し、アイディアを進化させた。この結果、「プロジェクター方式」を最有力候補とするに至った。今後は発展的に保有する人的チャネルを駆使して柔軟な発想と専門的な技術供与を得ながら当該方式のフィジビリティの検討と試作品の製作を行い、関連バリアブルの確定作業に進む計画である。 2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、競技場回りの公共インフラでは事故が起きない「ユニバーサルデザイン」のまちづくりが行われることが計画決定されているため、こうした流れに貢献できるよう研究開発の推進を図っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初企画書に想定した通りの進捗が計られていると評価される。協力関係にある信号機専業メーカーからもハイパワーLEDを使用した信号灯技術の環境変化に理解が得られ、初年度である本年度はこれまでに蓄積した技術的なノウハウを適切な識別記号のユニバーサルデザイン化に繋げるようアイディア探索を推進した。同時に必要となる先端要素技術の供与を受けることも、信号灯という枠にとらわれず発想の幅を広げるために重要であるため、研究代表者の人脈チャネルから適切な研究開発体制が発展的に構成されていった。これらの緩やかな知のネットワークから必要な要素技術の集大成ができつつあるといえる。考え得るありとあらゆる要素技術を盛り込んだコンセプトシナリオから、所定のコンセプトモデルのショートリストにまで絞り込みができたと考えている。 今年度から2年程度をかけて最重要要素技術の確立と初期性能試験、さらに次年度に計画されたバリアブルの拡張試験を可能とする試作品の製作と性能試験へとシフトしていくことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に達成した所定の成果に基づき、概ね当初の計画通りに推進する計画である。具体的には、最初に初歩的なプロジェクター方式の原理を信号灯レンズ上に投影する簡易モデルを信号機メーカーに製作依頼し、効果と課題を洗い出した上で、プロトタイプモデルの箱内部デザイン作業と複数レンズ構成の仕様を考案する。これを研究代表者がチャネルを持つ大手レンズ技術メーカーに詳細設計を依頼し、信号機専業メーカーの設計に反映させフィジビリティを高める計画である。保有するノウハウである識別記号部分の色度と輝度差の反映を、その間の設計プロセスに組み込み、初期的な校内実験へと推移させる計画。ショートリストにある諸方式を開発のデザインボキャブラリーとして参照しながら、適宜、追加要素技術導入の価値を判断し、都度フィジビリティを検討して性能評価を実施する。 ①核となるプロジェクター方式の光学的な性向を把握し、②プロトタイプモデルに組み込む、③視認実験を重ねて識別記号部分の微調整を行い、④視認条件の確認(夜間の見え方、1型と2型の色覚異常別、視認距離の確保)を行う。本年度は、初期のユニバーサルデザイン・コンセプトとした「必要な情報が、必要な人にだけ届く」の達成度を評価するための基礎的な準備段階とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
仮説として描いていたハイパワーLEDによる識別記号の描画方式は導光板方式で、一般的には非常用誘導灯などに使用されるのと同じ方式が適用可能と考えていた。これに青色LED光源を透明版の端部から発光する方式で、これに直角方向から赤色のハイパワーLEDを照射させ紫色に混色するという方式である。しかし具体的に信号灯内部の構造と見え方を検討するうちに「配光分布」に問題が発生しそうな懸念材料が浮上し、モックアップの製作へと進む前により広く可能なアイディアをコンセプトモデルとして検討する必要性が出てきた。このため協力関係にある信号機メーカーから欧州メーカーのハイパワーLED(3個)の最新信号灯器カタログおよび、これに準じた簡易版(13個)ハイパワー信号灯がプロトタイプモデルの検討用として供されたため、より慎重な検討を踏まえモックアップとしての検討費用を次年度とする方針を決定した。 ユニバーサルデザインの信号灯を製作するうえで、赤色と混色したLEDの「配光分布」を適正に同期化させることが最も重要かつ難題な計画要素であることが、この10年間の研究開発の経験から判明している。この核心部分を技術的にクリアする基本コンセプトモデルのショートリストとして、平成25年度の研究成果ではプロジェクター方式を最有力コンセプトモデルとした。したがって新たに次年度の検討テーマとなった「レンズ構成」の実施設計の必要性が発生したため、次年度へと繰り越す予算を加算して、緩やかな知恵の交流を発揮し、参加各社を拡充しながら、充分な推進体制を構築したい。
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