2014 Fiscal Year Annual Research Report
対流と熱の伝わり方の混同による誤概念の考察とその克服のための理科実験教材開発
Project/Area Number |
25282041
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
高橋 尚志 香川大学, 教育学部, 教授 (80325307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺尾 徹 香川大学, 教育学部, 教授 (30303910)
青木 高明 香川大学, 教育学部, 准教授 (30553284)
大浦 みゆき 香川大学, 教育学部, 教務職員 (70346625)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 対流 / 誤概念 / サーモグラフィー / 示温インク / 理科教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
サーモグラフィーを利用した理科実験教材を元に、さらに改良を加えた。これには熱源となるヒーターの工夫やフローモニター用のビーズの落下を防ぐための工夫などが含まれる。示温インク(サーモインク)を利用し、その熱移動を映像化するのが教材化の一つのゴールとなるが、その点についても一定の成果を出すことができた。すなわち、サーモグラフィーと通常のビデオを用いて、希釈したサーモインク中の熱の移動と、インク中を移動するフロービーズの動きを、熱映像と通常の映像で同時に観察する事に成功した。 対流の条件をより正確に求めシミュレートする目標に対しては、一定の成果を持ち寄り、外部スピーカーも迎えた研究会を開催し、理解を深めるとともに、今後の研究の方向性を再確認できた。 サーモグラフィーの普及を目指す取り組みとして、各種研修会などでの利用例を示すことにより、26年度は3つの公立小学校でのサーモグラフィーを用いての授業実践を現場教師に試みてもらうことができた。 対流と熱の伝わり方の誤概念の実態をつかむために、広範囲な調査を行った。香川県下の小学5・6年生の10%に当たる児童への調査を行い、当初我々が推測していた回転運動のイメージに引きずられる誤概念の存在が確かにあることがわかった。しかし、それ以上に、小学生の対流の理解がそもそも不十分である、より正確には、パターニングによる記憶だけで学習を終えているため、急速に忘却して、6割を超える児童がまったく理解していない状況にいたっていることが明らかになった。 一部の成果は出版され(ICPE-EPEC 2013, The International Conference on Physics Education, Conference Proceedings, 1058-1064, 2014)、また新たな成果・発見は、国際物理教育学会(アルゼンチン)、香川大学―チェンマイ大学合同研究大会(タイ)などの国際会議の場ほか、国内の物理学会・応用物理学会でも発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教材化への計画として、装置の改良を行った部分については、当初の計画より時間的に多くかかった。それは、適当なフロービーズが無く、ちょうど良いものを自作する事を余儀なくされたため、多くの時間を要した。フロービーズを利用して実験を行うには、様々なパラメーターの最適化が求められたのだが、これにも時間がかかり、それらに伴い、撮影を年度末になりようやく成功した。その他教材については順調に進んでいる。研究概念調査については、広く調査対象を香川県下全域に求め、対象学年の10%の児童からの回答を期限内に得た。時期的には、学習時点より半年後、および1年と半年後という、ポストテストとしては理想的な時期を選んだため、解析等は秋頃にまでずれ込んだが、想定内である。ここでの結果は、各種学会等で発表するに至っている。外部との協同の一環として、現職教員の協力も得ながら、実際に学校現場での実践を進めた。一般的な当該単元の学習時期が1月後半頃から2月上旬にかけてであるため、希望と募ったところ集中してしまい、結果3校+附属校での実践に止まっているのは残念であったが、装置と映像の評価はまずまずのものであった。詳細については今後の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
サーモグラフィーを利用する理科実験教材という観点からは、サーモインクの同時利用の諸条件を詰め、最適化を図っていくことが、実際に現場で使用する際に最低限求められる。これを追求するのが実験教材側の第一の課題である。同時に、動画を撮り編集して「見せる」教材とすることも追求課題となっているので、毎回の実験は撮影し続けることは行う。映像教材を見せるための道具としては、例えばiPadなどのタッチパネル式のツールを使用することを進める。具体的には、各種センサーで用いることができるパスコ社のハードとソフトを導入し、動画も同時に見ることのできるものとして追求する。シミュレーションへの取り組みとしては、水のみならず、いくつかの希釈度でのサーモインクのパラメーターを調べ、現象を再現できるように作り込む。さらに、対流モデルを空気の温まり方から発展させ、中学高レベルの大気の運動のモデルへとつなげる。学習の到達度という点では、重大な問題が存在することを学会ベースでは世に問うたところであるが、教育界全般にその事実を示し、善後策の検討に入ることを目指す。差し当たり、協力して頂いた学校の担当者、校長等を通じ、県教委とも連携しながら問題点の検討会を始める。
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Causes of Carryover |
装置の改良・作り込みおよびフロービーズの製作に時間を要したため、当初の予定よりも画像・映像を収集し編集することができず次年度送りとなった。その作業に見込まれるPCソフト等の購入がしたがって次年度送りとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予算が使用可能となったならば速やかに、動画・静止画および熱画像編集用のPCソフトと、タブレットPC+パスコ製ハードおよびソフトを購入する。
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Research Products
(7 results)