2013 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア産樹木年輪による過去千年間の大気中炭素14濃度の復原
Project/Area Number |
25282075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中塚 武 総合地球環境学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60242880)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 炭素14年代 / 年輪年代 / 較正曲線 / 地域効果 |
Research Abstract |
平成25年度は以下の試料について,炭素14年代測定を実施した。 A) 中国・白頭山埋没樹(およそ150年輪) B) 三重県伊勢神宮倒木(およそ400年輪) 試料は木口面から1mm厚の年輪層を切り出し,塩素漂白でセルロース化してから各年輪に切り分け,炭素14年代測定を実施した。しかしながら,A)は試料の劣化が著しく,十分なセルロースを回収できなかった。また建築史からの要請が強いことから,B)の処理・測定を前倒しで実施した。しかしながら同時期に測定された他の試料が,年輪層を切り出す際に用いた切断機からダイヤモンド粉が混入したためと思われる異常値を示したことから,本試料についても継続的な測定を中止し,処理方法を検討した上で再測定を実施することとした。 今年度は年輪試料のセルロース化に課題を残した。B)の測定結果は較正曲線IntCal13と比べ異常値と思えるほどの乖離は見せていないが,16世紀後半に系統的なずれが確認されている。しかしながら,切断に用いたダイヤモンドカッターによる汚染が他の試料に見られたため,B)についてもこのずれの真偽が確認できない。そこで,窒化ホウ素など炭素を含まない切断刃を用いて試料を再処理することとした。 当該時期の日本版較正曲線の作成は,特に建築史の立場からの要請が強い。特に年輪年代法が適用できない樹種が多く,年輪数も十分でない部材が用いられる古民家建築は,ウィグルマッチ法による較正年代の絞り込みが必要である。既にいくつかの部材の炭素14年代測定で,北半球用のIntCalよりも南半球用のSHCalにマッチングさせた方が良好な結果の得られる例が確認されていて,より詳細な日本版較正曲線の整備が急務といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ダイヤモンドカッターを用いて年輪試料を切削する方法は,死滅炭素からなるダイヤモンド粉の混入を招く恐れがあることが分かり,試料の処理を改めて実施することとなった。ただし元試料となる樹木は十分な量を確保しており,方法論を確立した上で測定を進めることで,挽回は可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三重県伊勢神宮倒木(およそ400年輪)について,改めて切削とセルロース化,ならびにAMSによる炭素14年代測定を実施する。日本原子力研究開発機構の施設を利用するなどして測定費用の圧縮に努め,効率的な測定を実現する。この試料に接続する長野県池口寺古材(およそ300年輪),山梨県棲雲寺古材(およそ200年輪)の処理も開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に実施した年輪試料のセルロース化に,ダイヤモンドカッターに由来するダイヤモンド粉混入の不具合が生じ,予定していた測定を中断したため。 ダイヤモンド粉を用いない窒化ホウ素の切断刃で昨年度測定予定の試料を切断し直し,改めてセルロース化を実施した上で測定に供する。その際の測定費用に充当する。
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Research Products
(5 results)