2015 Fiscal Year Annual Research Report
中国漢代の木槨・木棺材を用いた年輪年代学の確立と用材選択の意義
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25282077
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
光谷 拓実 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (90099961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 隆夫 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (70027168)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 年代測定 / 年輪年代学 / 漢代 / コウヨウザン / 樹種同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
【年輪年代学】 本年度は、中国側共同研究者から寄せられた漢代出土木棺材の最新情報をもとに、出土木材が集められている揚州文物考古研究所を訪ねコウヨウザンの木槨や木棺材のなかから20点を選び出しサンプル採取を実施した。このほかに個人が所蔵している多数の木棺材のなかから11点を選びサンプル採取をおこなった。これらはすべて南京林業大学に搬入しサンプル調整と年輪の計測用写真の撮影作業を実施した。 年輪計測はまだ継続中であるが、年輪データ化が終了しているものは、揚州文物考古研究所:10点、個人所蔵:4点である。これら14点の年輪パターンとこれまでに儀征博物館所蔵の木棺材で作成した518年間分の平均値パターン(基準パターン)とを照合したところ揚州文物考古研究所の10点のうち4点は年輪パターンの照合が成立した。一方、個人所蔵の4点のうち1点は年輪パターンの照合が成立した。 この結果、518年間分の平均値パターンがかなり広域の出土木棺材に対し有効な基準パターンとして応用できることが証明された。さらに、518年間分の年輪パターンを46年分延長することに成功し全体としては564年間分の年代幅をもつ基準パターンが作成できた。これは、中国漢代の年代範囲をほぼカバーしているものと思われる。 昨年11月2日には、本研究課題をメインテーマにした中間報告会を南京大学地球海洋科学学院にておこなった(参加者:日本側3名、中国側約30名)。 【漢代木槨・木棺用材の樹種同定】 昨年度は、淮安市から出土した明代のダム跡から川底に敷き詰められた膨大な量の木材が発掘された現場を視察した。この遺物を年輪年代の標準曲線作成に使用できないかを探るため、先方の依頼で26点について樹種同定を実施した。その結果14点が二葉松、11点がコウヨウザンであった。今年の予定の一部として先方に依頼してこの試料を年輪年代に使用させていただけないか打診する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【年輪年代学】 本年度は、過去2年間の調査研究において作成したコウヨウザンの518年間分の平均値パターンを揚州文物考古研究所の木槨・木棺材の年輪パターンに応用したところ、これまでのところ6点の出土木棺材の年輪パターンの照合に成功した。さらに、出土地不明の個人所蔵の木棺材1点の年輪パターン照合にも成功した。このことは、1カ所で作成した基準パターンが他地域の出土木材の年代測定に応用できることを強く示唆しており、年輪パターン照合成立の確率はやや低いもののコウヨウザンを使った年代測定法がいよいよ実用段階へと進展したものといえる。 【漢代木槨・木棺用材の樹種同定】 これまでの樹種同定の結果、木槨・木棺用材は楠木(ナンムウ)と杉木(サンムウ、コウヨウザン)の2樹種に絞られることが明らかになりつつあり、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
【年輪年代学】 昨年度の調査研究によって、コウヨウザンの基準パターンは518年間から564年間まで延長することができた。今後も一層の木槨・木棺材のサンプル収集と基準パターンの延長を計るため、新たな年輪試料の探索と年輪データ補充によって基準パターンの信頼性を高める必要がある。さらに、紀年銘の出土考古遺物を伴う木槨・木棺材の発見につとめ、基準パターンへの暦年確定に向けての方策を探りたい。 【漢代木槨・木棺用材の樹種同定】 これまでの成果について中国側の海外研究協力者と討議し、今後の樹種同定の資料提供を含めて打ち合わせをおこなう。
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Causes of Carryover |
昨年度当初の研究計画では、一部の消耗品についての予定単価と実際に購入した時点での価格の差が生じたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度生じた剰余金については、今年度購入予定の一部消耗品代として有効に活用する予定である。
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