2014 Fiscal Year Annual Research Report
地震倒壊家屋からのレスキュー救助活動支援を目的としたディジタルがれきアーカイブ
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25282096
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野里 雅彦 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (80177279)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | がれき / レスキュー / ロボット / シミュレーション / アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は地震等で倒壊した木造家屋から人命を救助する上で有用な,がれきに対する知見を与えることを目的としている.この目的に対して,I. ディジタルがれきアーカイブの構築,II. レスキュー機器評価手法の確立,III. レスキュー隊員訓練支援環境の開発,の3つの項目を3カ年にわたり実施をする.平成26年度は研究の第二年目にあたる.これら3つの項目に関して実施したことの要点を以下に順に述べる. ディジタルがれきアーカイブの構築に関しては,家屋の倒壊シミュレーションの大規模化と高速化に関する研究開発動向調査とこれまで開発してきたソフトウェアの改良を中心に実施をしてきた.木造家屋の倒壊シミュレーションにおいては多数の剛体要素の相互作用を考慮する必要があり,モデルを適切に分割し,GPGPUを用いて並列処理が求められる.平成26年度はこのための計算プラットフォームの実装とソフトウェアテストを行ってきた.また,ディジタルがれきモデルを公開する上でのデータ形式についての調査・検討と策定を行った. レスキュー機器評価手法の確立に関しては,模擬がれきを用いたテストフィールドの構築と,その3次元形状の計測とモデル化に関するシステム開発を行った.模擬がれきとしては,様々なサイズの材木を使用し,それらを任意に積み上げたテストフィールドを点群計測し,模擬がれきの寸法・位置・姿勢を求める手法の開発を行った. レスキュー隊員訓練支援環境の開発に関しては,頭部装着型ディスプレイ(HMD)を用いた複合現実感(AR)インターフェースの試作を行った. こうした研究項目に加えて,平成26年10月にIEEE Robotics and Automation Societyの災害対応ロボットに関する国際会議であるSSRR2015(北海道洞爺湖町)の組織委員長を務め,国内外のレスキューロボット研究者との意見交換を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的として挙げた3つの項目のそれぞれの進捗状況に関して違いはあるが,全体としては順調に進展していると評価される. ディジタルがれきアーカイブの構築に関しては,シミュレーションシステムの開発を優先して先行させており,そこで解析する家屋モデルの種類の増強を後回しにしている.ただし,家屋モデルの増強に必要な資料収集等はシステム開発と並行して進めている. レスキュー機器評価手法の確立に関しては,がれきデータ収集に高価な3次元レーザースキャナではなく,安価なデプスカメラを複数台併用して行う手法を検討し,がれきに適用できる目途を立てた.また,レスキューロボットの評価のリファレンスとして使用する機器も,よりモジュラー性の高い機材を使用する形で実施を行い,成果を得た. レスキュー隊員訓練支援環境の開発に関しては,先行してシステムのユーザインタフェース部の試作を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,3つのがれき・レスキューロボット・救助活動支援の各研究項目に関して並行して研究開発を実施をしてきたが,最終年度に当たる平成27年度には,これらの3つの研究項目で得られた成果を総合して,がれきに関する研究全体としての意義や効果を対外的に理解できる形にまとめていく.そのためには,各研究項目の成果の完成度を上げることに加えて,地震発生から救助支援までの流れを事例として想定し,それに対して本研究の成果がどのように活用されていくか,というシナリオを策定する.また,それに基づいた研究成果の提示と減災に向けた活用の提案を社会に発信していく. また,がれき工学に関する研究者コミュニティの形成に向けて,当該分野の魅力ある研究領域としてのアピールにも取り組んでいく.
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Causes of Carryover |
導入する予定のソフトウェアのバージョンが近く大きく改訂される予定があり,それに伴いインストールする予定の購入するコンピュータの必要要件や対応状況の情報が明らかになるのを待っていたため,予算執行の時期が遅れた.(コンピュータに関しては平成26年度中に納入済み)
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学術研究助成基金助成金の未使用額による次年度使用額852,696円のうち,702,860円は平成26年度内にすでに支払い手続き済みである.残りの149,836円に関しては,約50,000円を関連する研究図書の購入,残額を3Dプリンタ等の消耗品購入にあてる予定である.
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