2013 Fiscal Year Annual Research Report
BackCasting手法による岩手県被災者台帳を活用した総合要援護者台帳の構築
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25282098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田村 圭子 新潟大学, 危機管理本部危機管理室, 教授 (20397524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井ノ口 宗成 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 助教 (90509944)
木村 玲欧 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00362301)
岡田 史 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (90410274)
林 春男 京都大学, 防災研究所, 教授 (20164949)
立木 茂雄 同志社大学, 社会学部, 教授 (90188269)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 災害時要援護者 / 東日本大震災 / バックキャスティング / 脆弱性 / 災害過程 / 災害支援過程 / 岩手県 |
Research Abstract |
「脆弱性の高い被災者」の避難生活・仮住まい・生活再建においては支援効率の悪さに直面しており、制限が厳しい支援局面において、特別に配慮が必要な対象が必ずしも一様では無いため、支援優先対象、必要情報、支援資源の同定が後手に回る。この状況を打破するには、Back Casting方法論を用いることが効果的であるため、本年度はこの方法論に基づき、基礎的データの蓄積・解析を実施した。 ①要援護者の属性に応じた災害過程を定量的定性的に明らかにした。 定量的データの解析を実施した。被災者台帳システムから、個人・世帯別に管理されているデータの中から、解析に必要なデータを個人情報に抵触しない形で取り出し、アーカイブ化した。時系列的な支援過程の詳細を明らかにするために、専門職能者への調査を実施した。 ②災害過程において、支援サービスにアクセスした/できなかった要援護者の実態を解明した。 災害過程において「特別に配慮が必要か否かを」判定する1つの目安として「行政や関係機関が実施する支援サービスにアクセスした/できなかった」があるため、これらの実態を解明した。また、関係者へのインタビュー調査を実施し、定量データを補完した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、研究を推進した。特に研究推進にかかる課題はなかった。 当初は東日本大震災の被災地である岩手県を対象としていたが、それに加えて、平成25年度に発生した大島町土砂災害における被災者情報についても、その対象範囲とした。これは台風や大雨による水害や土砂災害は、一般的に局地的ではあるが、地震に比べると高頻度であり、要援護者の災害過程・災害支援過程を明らかにすることは重要であると判断したからである。
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Strategy for Future Research Activity |
①「供給された要援護者サービスを評価するための指標を構築する」: 過去の災害において、被災時の要援護者サービスを体系化・整理し、その質と効果を客観的に評価するための指標のプロトタイプを開発する。 ②「災害過程に応じた災害時要援護者台帳に必要な要件を定義する」:本年度の成果から、達成目標に至る業務フローを定義し、果たすべき機能に対する要求事項を確立する。環境要件とシステム要件についても必要な事項を抽出する。また、セキュリティについて、要求事項を整備する。 ③「災害過程における要援護者支援メカニズムに基づく最適支援モデルに応じた要援護者台帳のデザインを実施する」: 支援対応過程の局面における、要援護者のカテゴリに対する、支援のために必要項目について、どの項目がどのタイミングで得られるかをフロー分析し項目の順序化をはかる。必要な情報を必要な時期に与えることが可能かという観点からデザインを実施する。 ④「平時からのシームレス移行型災害時要援護者台帳活用のための社会システムをデザインする」:要援護者台帳運用の業務プロセスを支えるのは、応急・復旧・復興期における社会活動(災害対応・被災者支援活動等)を貫く一定の活動ルールが必要であり、それが運用方法論を決める上での大前提になる。さらに、要援護者支援全体における「組織機能、権限、機密保護規定」 など、「業務運用の規定」が必要となる。ところが、これらは現在「平時の医療・保健・福祉サービスの定款、就業内容、コンプライアンス規約を援用する」形でまかなわれている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東日本大震災の被災地への旅費については、被災自治体に助言を求められた際に、科研費の調査研究にかかる調査・インタビューに協力いただく等して実施したため、実質的には費用が発生しなかった。これは被災自治体の時間的コストを省力化する意味でも有効であった。研究成果の投稿、海外誌への投稿、海外での報告については、研究とりまとめと学会の実施時期との不整合により見送った。インタビューのテープ起こし等については、被災自治体においては、資料のとりまとめが進んでいたため、その資料に基づくインタビュー調査が主体となったため、特に発生しなかった。研究打ち合わせについては、調査時に行う等対応したため費用が発生しなかった。当初予定していなかった、大島土砂災害の被災地での状況について、比較対象とするために範囲に加えたために新たに発生している。 次年度については、被災自治体において、自治体以外の主体(福祉関係者等)にインタビュー調査を実施するために、前年度の費用を活用する。また資料を中心に進んできたインタビュー調査について、新たに自治体以外の主体(福祉関係者等)に対し実施したものをテープ起こしする等して、データ化に取り組む。論文投稿については、次年度、投稿にふさわしい学会が海外・国内で実施されるため、当初平成26年度に想定していた論文投稿に併せて、本年度分を活用し、成果の一層の普及を図りたいと考えている。よって、本年度、様々な機会をとらえて、コストの省力化を図った予算について、次年度に有効に活用する予定である。
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