2013 Fiscal Year Annual Research Report
市場監視の時代に向けた傷害情報サーベイランスシステムの構築と活用
Project/Area Number |
25282099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
三上 喜貴 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70293264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 満喜子 長岡技術科学大学, その他の研究科, 准教授 (20610778)
福田 隆文 長岡技術科学大学, その他の研究科, 教授 (80208959)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 製品事故 / 製品安全 / 傷害情報 / WHO / NITE / 消費者庁 / RAPEX |
Research Abstract |
研究の基礎であり出発点となるのは,研究代表者三上喜貴と研究協力者である河南理工大学安全科学工程学院の張坤が中心となって考案した傷害情報記述枠組(Injury Information Description Frameworkの略号として以下IIDFと略す)である。 これに基づいて,製品評価技術基盤機構NITEや消費者庁の作成する製品事故情報やリコール情報及び欧州の消費者安全部局が作成する緊急通報RAPEX Notification(基本的には製品リコール情報)を比較検討することにより分析を行った。また限定的であるが、当初計画に無かったカナダやオーストラリアのリコール情報についても比較分析を行い、この成果は経済産業省主催の製品安全総点検セミナーで基調講演として発表を行った。高齢者を中心とするいわゆる「脆弱な消費者」に関する分析については、被害者の年齢と事故製品の使用年数の分析などを行い、高齢社会は「製品の高齢化」も意味するものであることなど、今後の研究の方向にとって重要な知見を得ることができた。 データの再編成に必要となる各種分類コード、分類定義についてマニュアル化を進めた。その一環として、起因物の製品分野、傷害原因、危険発生のメカニズム、障害発生場所などの情報に関して、WHOのInjury Surveillance Guideline(IGS), ICD, RAPEX Guide, Harmonized System(HS)などの類似基準の比較検討を行った。 欧州におけるリコール情報のとりまとめを行っている欧州委員会などの緒機関を訪問調査した。 IIDFの改善課題のひとつであるヒューマンエラー型事故の分析に当たって必要となる事故時の行動を記述する枠組作りについてはNITE事故データベース中の自由記述文の分析に基づいて頻出する動詞や目的語の抽出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欧州、オーストラリア、カナダ、米国等諸外国と日本の製品事故及びリコール情報を比較することにより、事故発生パターンやリコールに対してどのような社会的要因が影響を与えるのかについて知見を得ることができた。 リコールに関する事業者、政府のマネジメントにおいて特に重要なのが製品の残存数の推定である。今年度新たな知見として得られたことの中で特筆すべきは、幾つかの耐久消費財製品について使用期間の分布を推定する手がかりを得たことである。当初、消費動向調査の再集計サービス(統計センター)を利用していたが、これには幾つかの限界があった。特に我々の関心のある長期使用製品についての使用期間の数値が「15年以上」と丸められていたことである。しかし、統計法33条による個票利用によってより細かな推計が可能となることが分かった。現在、これを用いて幾つかの製品についての故障率曲線(いわゆるバスタブカーブ)の推計を行っているところである。この調査結果は、残存リコール製品のリスク評価、高齢者の製品安全対策などに有効に活用されるものと期待している。また、消費動向調査に加えて、全国消費実態調査の活用についても見通しが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度には,引き続き傷害情報の記述枠組の改善、精緻化を進めるとともに、広い利用者が活用できるようにマニュアル化を進める。記述枠組の改善は、主として、製品事故に相応しい危険源分類のあり方、ユーザー側に起因する事故を分析するに当たっての鍵となる事故時の行動や心理に関する記述の枠組などの点に重点を置く。また初年度に得られた新たな情報源である政府統計の個票分析による情報マイニングについてもさらに研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していたリコールデータの入力が電子的な方法で行えることができたため、大幅に補助者謝金を節約することができた。 研究途上で消費動向調査、全国消費実態調査から有益な製品保有実態データが得られることが分かったため、この分析のための研究補助者雇用に当てたい。
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Research Products
(4 results)