2014 Fiscal Year Annual Research Report
街区スケールの建物群に対する遡上津波挙動の解明と新しい津波耐力評価手法の確立
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25282113
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
水谷 夏樹 大阪産業大学, 工学部, 教授 (50356036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 信人 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90371476)
陸田 秀実 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80273126)
小笠原 敏記 岩手大学, 工学部, 准教授 (60374865)
岡澤 重信 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10312620)
加藤 茂 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40303911)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 津波 / 波圧 / 水理実験 / 数値解析 / 街区スケール / 防災 / 減災 |
Outline of Annual Research Achievements |
小規模実験については,鉛直壁に衝突する津波の可視化実験を行った.特に衝撃波圧から持続波圧への遷移過程において,内部流速場に基づく波圧の発生メカニズムの解明を行った.その結果,津波が構造物に衝突した直後に底面と構造物との隅角部に大規模な渦が発生し,時間とともに渦が大きく発達することが分かった.津波の主流は渦の上部を流れ,鉛直壁のより上部でも時間遅れを伴って衝撃波圧が生じることが分かった.また,渦によって底面近傍は津波が直接衝突しなくなることから,主流の動圧が作用しなくなり,結果として圧力が最大とならず,その時刻の水位による静水圧となった.さらに構造物に衝突して打ちあがった水塊が落水する時刻に,波圧が極大値を示し,この時,構造物に作用する水平波力も極大値をとることが分かった.津波衝突後の前面水深が大きくならない構造物の場合は,この波力の極大値が最大波力となる場合があり,従来の衝撃波圧と持続波圧との間に発生することから新たに検討対象となることが分かった. 一方,大規模実験においては,津波氾濫流の衝撃的な段波およびその後の準定常的な持続波に着目した水理模型実験を実施した.その結果,構造物前面および側面に作用する津波氾濫流の衝撃力の関係を明らかにし,無次元入射水位を用いた指数関数として評価できる可能性を提示した. また,数値解析については,解適合格子法を用いた遠地津波の数値解析を実施し,沿岸近傍においては地形と津波の伝播特性に応じて適宜メッシュを再構成して,ネスティングなしに詳細解析を行えることを確認した.さらに弾性体構造物と流体の連成解析に関しても高精度な界面捕獲法を用いることでシームレスな解析が行えるようになった. 現地における津波被害算定に対する検討としては,三河湾沿岸を対象として建物被害危険度評価の検討を開始し,水槽実験や数値解析の研究成果を反映する試みを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小規模実験と大規模実験は,津波の異なるステージにおける波圧特性に着目しており,それぞれが津波特性量を持って波圧分布を評価出来るところまで来ている.ただし,小規模実験においては新たな波圧発生メカニズムが判明したことから,その評価式の提案には今後の検討も必要である. 解適合格子法(アダプティブ・メッシュ法)による遠地津波の計算については,スキームの基本的な開発が終わり,現地観測データとの比較において,一定の精度が得られることが確認出来た. 構造物と流体の連成解析においても,基本的なスキームが開発されており,単体構造物の破壊計算は既に実施済みであることから,街区スケールの数値解析の実施に移行しつつある. 東北地方における現地被災データの分析結果に基づき,西日本における津波被害危険度評価を三河湾沿岸で開始している. 以上のことから,現在までの達成度は概ね研究計画に準じており,順調であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 三次元流体力評価に基づく単一の建物に対する津波耐力評価式の確立 これまでに行った可視化実験結果から,渦の発生によって波圧の鉛直分布が静水圧分布とは異なることが分かった.これらの波圧特性は,衝突流速に強く依存することから,津波の作用高さの推定と衝突する主流の作用点などを踏まえて,津波耐力評価式の確立を行う.また,持続波圧に対する評価式は,準定常流に対する大規模実験の結果を踏まえ,評価式の確立を行う. (2) 三次元数値計算による街区スケールの遡上津波の特性把握 単一建物に対する結果を踏まえ,建物周辺の流速分布が重要となる時間帯と浸水深が重要となる時間帯が存在することが分かった.これらを街区スケールの遡上津波に適用するにあたって,まず複数建物群の間を流れる津波の特性について街区全体の可視化実験を実施し,伝播特性の把握を行う.同時に数値解析による検討を行い,両者の結果から流速,波圧など一般化できる事象の抽出を行って,単一建物に対する結果の適用性と適用条件について検討を行う. (3) 街区スケールの建物群における各戸の必要津波耐力の空間分布の評価 これまでの検討結果を基に,街区スケールにおける建物群の各戸において,街区内の空間的な配置や地形的な特徴および遡上津波の特性などの違いによる必要津波耐力の評価を行う.各戸の必要津波耐力の空間分布を示し,遡上津波との関係を明らかにすることを目指す.また,実際の沿岸地域における適用性について検討を行う.
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Causes of Carryover |
研究計画では,三分力計を購入する予定であったが,研究計画一年目に購入した波圧センサーの定格容量が実験スケールに対して大きすぎたため,低定格容量の波圧センサーを購入する必要が生じた.結果的に三分力計の予定額との差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は,複数の建物群に対する街区スケールの津波挙動と波圧を計測する必要があることから,さらに波圧センサーを追加購入する必要がある.次年度使用額についてはそれを購入する予定である.
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Research Products
(20 results)