2014 Fiscal Year Annual Research Report
分子運動性による吸着タンパク質の変性抑制・配向制御に基づいた細胞生育環境の構築
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25282142
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
由井 伸彦 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (70182665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徐 知勲 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (20611544)
田村 篤志 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (80631150)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリロタキサン / ブロック共重合体 / 運動性 / タンパク質吸着 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織再生に適した細胞の生育環境としてのバイオマテリアル表面を創製する指針を確立することを目的として、本課題では種々のタンパク質吸着存在下でのバイオマテリアル表面の分子運動性(Mf)の影響について解析した。具体的には、Mfを広範囲に制御したポリロタキサン(PRX)・ブロック共重合体表面を作製し、その表面での血清蛋白質吸着やインテグリンを介した細胞接着の結合モチーフを有するフィブロネクチンの吸着状態を酵素固定免疫吸着アッセイ(ELISA)および水晶振動子微量重量-エネルギー散逸量(QM-D)測定から解析した。Mfの異なるPRX・ブロック共重合体表面でのフィブロネクチン吸着量およびインテグリン結合モチーフの表面露出量とMfとの間に明確な相関は見られないものの、QCM-D測定により得られたフィブロネクチン吸着のエネルギー散逸量には変化が見られ、フィブロネクチンの吸着状態がMfによって影響されていた可能性が示唆された。また、PRX表面でのラット大腿骨および脛骨から採取した間葉系幹細胞(MSC)の分化挙動を解析した。フィブロネクチン吸着OMe化PRXブロック共重合体表面で培養したMSCの細胞内Rho結合キナーゼ(ROCK)活性はMf増大に伴って低下傾向が認められ、PRX表面のMf増大が細胞内の骨格タンパク質調節機構であるRhoA-ROCKシグナル伝達系抑制に関与し、結果として細胞膜に結合したアクチン線維の成熟形成を抑制したものと考察した。また接着MSCに対して骨分化あるいは脂肪分化を誘導すると、分化前段階でのMSCのROCK活性抑制に依存して骨分化(RUNX2発現)への誘導が抑制され、逆に脂肪分化(PPARγ発現)への誘導が促進されることがわかった。これより、PRX表面のMfが幹細胞の分化誘導の方向性を規定するパラメーターとなりうるものと結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は当初の研究計画を前倒しして細胞の分化誘導における可動性表面の影響について評価をすすめ、ポリロタキサンの分子運動性がタンパク質の吸着状態だけではなく、細胞の分化誘導にも影響することを実証した。可動性表面上におけるタンパク質の吸着状態については数種類のタンパク質に関してしか評価することができなかったものの、おおむね順調に研究は進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に検討したポリロタキサンブロック共重合体の合成、平成26年度に検討したポリロタキサン表面上におけるタンパク質吸着状態と間葉系幹細胞の分化の相関を踏まえ、平成27年度は様々な組成のポリロタキサン表面上におけるタンパク質の吸着状態を調べ、ポリロタキサンの分子構造とタンパク質の吸着状態に関する知見を得る。また、タンパク質についても種々検討を行い、タンパク質の物性と表面間の相関についても検討を行う。以上の包括的かつ網羅的な解析により、組織再生に適した細胞の生育環境としてのバイオマテリアル表面に必要な機能に関する情報を整理し、分子設計にフィードバックする。
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Research Products
(12 results)