2014 Fiscal Year Annual Research Report
生分解性インジェクタブルポリマーを用いたDDS製剤のフィージビリティ研究
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25282147
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大矢 裕一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (10213886)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / インジェクタブルポリマー / 再生医療 / ゾルゲル転移 / 生分解性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内に注入すると体温に応答してヒドロゲルを形成する温度応答型インジェクタブルポリマー(IP)が報告されている。中でも生分解性を有するIPは,薬物放出デバイスなどへの応用が期待されている。これまでの生分解性IPは水に溶解するのに時間を要し、臨床現場での用時調製や、水溶性低分子薬物の徐放には適していないなどの問題点があった。本研究では,生分解性IPのDDSデバイスとしての臨床使用に向けた利便性向上を目的として,分子構造設計や添加物効果などについて検討を加えた。その結果,ポリエチレングリコールを添加したPCGA-PEG-PCGAトリブロックコポリマーが,凍結乾燥による粉末化が可能で水を加えてすぐに分散できることを見出した。また,PCGA-PEG-PCGAトリブロックコポリマーの末端基を正あるいは負に荷電させたものを任意の割合で混合することにより、特定のpH領域のみで温度に応答してゲル化することを見出した。特に、正電荷を有するポリマーと負電荷を有するポリマーを混合する割合を変化させることにより,そのゲル化pH領域を制御することに成功した。こうした温度に加えてpHに応答するIPは、カテーテル内部での詰まりを回避したり、予期せぬ場所でのゲル化などを回避するfale safe性に優れたIP製剤を提供できると考えられる。一方,薬物を共有結合で固定したグラフト型IPを合成し,通常のゲルでは難しい水溶性低分子薬物の1ヶ月にわたる持続的放出にも成功した。さらに,ペプチド性薬物のin vivoにおける徐放についても検討を行い,動物を使用した実験において,有意な血中半減期の延長が観測され,本研究で利便性を高めたIPシステムが薬物徐放用デバイスとして有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発したインジェクタブルポリマーの応用の一つとして骨再生タンパク質の徐放による骨再生誘導を計画していたが,共同研究会社の都合により,骨再生誘導に関する実験を遂行することは難しくなった。しかしながら,水溶性低分子薬物を徐放するデバイスの開発や,ペプチド性薬物のin vivoでの体内動態解析,温度とpHの両方に応答してゲル化するシステムなどの開発にも成功し,計画通りにいかなかった部分と予想以上に進展した部分とはほぼ相殺されていると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,ゲルを体内に注入した後,体液との接触によりゲルが分解しなくてもゾルに戻ることが問題視されている。これを解決するためにゲル化後に共有結合を生成して不可逆的にゲル化するシステムを開発し,これを解決する実験に着手している。今後は,このシステムの利便性向上と医療用デバイスとしての実用化について検討する。
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Causes of Carryover |
共同研究会社の都合により,動物を用いた骨再生誘導の実験が行えなかったため,in vivo実験を想定していた消耗品予算に余剰分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
骨再生の実験継続は難しいが,薬物の体内動態やIPの生体適合性,癒着防止材としての応用を考えた動物実験を行うため,前年度分を合わせて執行する。
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