2014 Fiscal Year Annual Research Report
歩行における関節間シナジーの発現機構と進化・成長に伴う変化
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25282183
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西井 淳 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00242040)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 二足歩行 / シナジー / UCM解析 / 成長 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,主にヒト(成人)及びニホンザルの歩行中の関節間シナジーの解析を進めるとともに,関節間シナジーを生成する神経回路網モデルの構築を行った。 ヒトの歩行に関しては,これまでに躓きが生じやすい遊脚中期のMTC (Minimum Toe Clearance) の瞬間において足先の高さの一歩ごとのばらつきを抑える関節間シナジーが強く働くこと,そして,両脚支持期に体幹位置を調整する関節間シナジーが強く働くことを報告していたが,さらに,様々な歩行速度に対する解析をすすめることによって,このような特徴が歩行速度によらず観察されることを確認した。 ニホンザルの二足歩行については,以下の点でヒトとは異なることを確認した。両脚支持期に体幹位置の調節を行う関節間シナジーがニホンザルでは弱い。また,ニホンザルの遊脚期にはヒトのように一旦足部が床に近づくMTCの瞬間や接地直前の足部の引き戻しはなく,足部は単調に地面に近づいていくが,その間,足先の高さのばらつきを抑える関節間シナジーが間欠的に働く。これらの結果は,両脚支持期や接地期においてヒトが採用している制御戦略が,安定な二足歩行実現のために進化の過程で獲得されたものであることを示唆する。 関節間シナジーを生成する神経回路網モデルについては,砂時計型ニューラルネットワークと呼ばれる5層のフィードフォワード型の神経回路網モデルを少し変形した神経回路網モデルを提案し,これにより外乱や関節の故障に臨機応変に対応した冗長アームの制御を行えることを示した。この成果により平成26年度日本神経回路学会優秀研究賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,ヒトの成人,子ども,ニホンザル,受動歩行器の二足歩行における関節間シナジーを解析することで,成長や進化に伴う歩行戦略の変化を探ること,また,関節間シナジーの生成メカニズムを探ることである。これまでに成人,ニホンザルについては研究成果の一部を論文にまとめた。子どもと受動歩行器についてもデータの収集と解析をすすめているところである。関節間シナジーの生成メカニズムに関しても,神経回路網モデルの提案を行い,前述のように学会賞の受賞対象となっている。以上より研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,子どもおよび受動歩行器の関節間シナジーのデータ収集および解析をすすめるとともに,歩行中の筋活動の解析によって関節間シナジーの生成に神経系がいかに寄与しているかを解析していく予定である。また,成長による歩行制御戦略の変化を探るために,高齢者の歩行解析も推進する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた論文投稿スケジュールがやや遅くなったため,ほぼ論文投稿費に相当する額が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は, 予定していた論文投稿費としてはわずかに足りない額なので,学会発表等のための旅費と計測実験用物品購入にあてる予定である。
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Research Products
(7 results)