2014 Fiscal Year Annual Research Report
絶食時栄養制御因子CREBHが腸肝循環を介し肥満形成を抑制するメカニズム
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25282214
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中川 嘉 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (80361351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島野 仁 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20251241)
松坂 賢 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70400679)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 転写調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓におけるCREBHの機能を解析し、CREBHが生活習慣病を改善するホルモンFGF21の発現を上昇させることを見出した。また、脂質異常症の治療薬の標的であるPPARaもCREBHのターゲットであることを同時に見出した。PPARaはFGF21の発現を上昇させる主要因子である。CREBHはこのPPARaと協調的に機能し、FGF21の発現を調節した。マウス肝臓でCREBHをアデノウイルス、遺伝子改変マウスを使い過剰発現させると、肝臓だけでなく、脳や脂肪組織にも作用し、結果的に体重減少、血糖、血中インスリン、血中トリグリセライドを低下させた。また、食事性に肥満を誘導させてもCREBHトランスジェニックマウスでは肥満になりにくい表現型を示した。 逆にCREBHを欠損したマウスではPPARaおよびFGF21の発現は低下し、血中FGF21も明らかな低下を示した。加えて血糖値、血中インスリンもコントロールマウスに比べ上昇した。これら結果から、CREBHが肥満、糖尿病を改善する新たな因子であることが明らかとなった。 CREBHはPPARaと協調的に機能するが、両者はお互いの発現を制御しあうオートループを形成していた。そのため、CREBH欠損マウスにPPARaアゴニストを負荷しても、PPARaの機能増強が見られなかった。CREBHはPPARaを介し、脂質代謝も調節していることを新たに見出した。これら結果はNakagawa Endocrinology 2014として、報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満、糖尿病に対するCREBHの機能については昨年度中に論文報告している。現在は、動脈硬化、非アルコール性脂肪肝に対する機能について解析を進めている。動脈硬化についてはCREBH欠損マウスでは動脈硬化病変の異常なまでに増加しているのに対し、CREBH過剰発現マウスでは病態の抑制が観察できている。 非アルコール性脂肪肝についてはCREBH欠損マウスでは肝臓での脂質蓄積、炎症、線維化が見られており、短期間のうちに肝機能が低下する現象を観察している。現在、その発症メカニズムについて解析を進めている。 しかしながら、どちらの病態の解析でも、現在使用する欠損マウスは全身で欠損しており、肝臓、腸での機能を検討するためには組織特異的なノックアウトマウスが必要である。現在、そのマウスを作成している。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な生活習慣病病態においてCREBH欠損マウスでは病態を悪化させる現象が見られている。CREBHが発現する組織は肝臓、腸管であり、栄養制御にとても重症な組織である。そのため、全身でCREBHを欠損したマウスで解析しては、どの臓器からの影響を見ているのかがわからない。 現在、CRISPR/Cas9 systemを用いることで短期間のうちに組織特異的なマウスの作成が可能となっている。この手技を使いマウスを作成している。すでにflox/floxマウスは作成できており、今後、肝臓、小腸特異的なノックアウトマウスができ、解析が可能となる。過剰発現マウスについても、いくつかの問題を克服するため、肝臓、小腸に特異的に発現するマウスの作成も行っている。 肝臓での機能については現在までに多くの知見が得られているが、その多くは小腸からの栄養吸収との関連も視野に解析する必要がある。小腸におけるCREBHの機能を中心に解析を行っていく予定である。
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