2013 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯島嶼地域における思春期女子児童生徒の身体活動に関する実態把握と介入調査研究
Project/Area Number |
25282223
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
小林 稔 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70336353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高倉 実 琉球大学, 医学部, 教授 (70163186)
笹澤 吉明 琉球大学, 教育学部, 准教授 (50292587)
遠藤 洋志 琉球大学, 教育学部, 教授 (90369926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 身体活動 / 子ども / 思春期 / 女子 / 動機づけ / 自己決定理論 / 青少年 |
Research Abstract |
本研究は身体活動の少ない女子を対象とするので、心理的変容段階の評価が主となる可能性が高い。よって、既存の尺度(例えば,子ども用身体活動のステージ尺度9))を使用するだけでなく、より詳細なその機序を把握するために、例えば、すでに米国で開発されている「青少年期女子に焦点化した身体活動に関する心理測定尺度」の日本語版を開発するなどの必要がある。平成25年度については、これらの考え方に沿って新たな評価ツールの策定を試みた。結論的には「動機づけ」に焦点化し、心理測定尺尺度(自己決定理論に基づく身体活動の動機づけ尺度)の開発を行った。 方法論と手続きに関して、まず、調査分析対象者は、京都府(2校288名)滋賀県(2校266名)沖縄県(3校268名)の公立中学校女子生徒822名であった。調査は自記式質問紙のBREQ-2原版(Mullan et al.,1997)を翻訳して用い、2013年10月上旬に実施した。 BREQ-2原版は自己決定理論に基づいて作成された日常生活の身体活動を問う19項目で構成された尺度であり、5件法で回答を求める尺度である。妥当性を検証するため、初めに「項目分析」を行い、満足できる識別力を確認した。その後、主因子法プロマックス回転による探索的因子分析で、4因子を抽出するとともに、構成された4因子モデルに関して検証的因子分析を実施し、適合度指標(GFI、AGFI、CFI、RMSEA)を求めた。加えて、基準関連妥当性として、PACE+身体活動質問項目(辻本ら,2008)を用い、各因子の相関を求めた。他方、尺度の信頼性に関しては、各因子の内的整合性(α係数)を算出すると同時に、再テスト法(n=159)により、Pre-Postについて評定一致率の分析を行った。本研究の結果は、尺度開発の先行研究と比較して、妥当性、信頼性とも満足の得られる結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画における最大のミッションは、身体活動の増強のための介入の際に、思春期女子の身体活動が真に増強したかどうかの測定が可能な評価尺度を作成することであった。この点に関しては「思春期女子を対象とした自己決定理論に基づく身体活動の動機づけ尺度」を開発することができた。自己決定理論に依拠した尺度開発の背景として、自律の程度が明らかになることから、運動意図の予測変数として活用でき、しかも、運動継続に関してもある程度予測可能となり、将来の研究においても活用できると考えたからである。自己決定理論は、大きく「非動機づけ」、「外発的動機づけ」、「内発的動機づけ」に分類され、さらに、外発的動機づけに関しては、自律の程度によって3つあるいは4つにカテゴライズされる。したがって、平成25年度は思春期において身体活動の少ない者にも有効とされる(Verloigne et al.,2011)BREQ-2を日本語版を作成し、開発することとなった。探索的因子分析では、4因子12項目が抽出された。また、検証的因子分析による、適合度指標に関しても、良好な値(GFI:.949,AGFI:.918,CFI:.944,RMSEA: :.074)がえられた。ただし、「非動機づけ」が抽出されておらず、今後の課題として挙げられる。また、基準関連妥当性に関しても、各動機づけとの方向性が一定程度合致していた。他方、信頼性に関して、α係数では、同一化的調整で.668であったが、項目数が3つであることを考慮すると、許容範囲と言えよう。さらに、再テスト法によって安定性を確かめるため、1回目と2回目の評定一致率からκ値を算出した。κ値はやや低いながらも、先行研究を参考にするとおおむね認められる範囲となった。総じて、研究目的の達成度としては、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
原則は計画書通りに進める。その具体を記すと、平成26年度本研究には、大きく2つのミッションが存在すると認識している。一つは、前年度策定した「自己決定理論に基づく思春期女子のための身体活動動機づけ尺度」の作成段階ででてきた問題点をクリアすると同時に尺度の精緻化を図ることである。もう一つは、亜熱帯島嶼地域おいて小学校高学年から中学校の発達段階を対象に身体活動の増強のための介入プログラムを策定し試行することである。 前者について、まずは、平成25年度に策定した身体活動の動機づけ尺度では、身体活動の少ない女子を対象にしても堪えうる質問項目で作成しなければならないことから、米国で作成されたBREQ-2という尺度をもとに構築した。しかしながら、結果として自己決定理論でいうところの「非動機づけ尺度」が抽出されなかった。加えて、各因子において抽出された項目数がバラバラであったなどの今後の課題を指摘することができる。したがって、サンプル数を増やすなどして、これらの課題の解決を図るような精緻化した尺度づくりをしなければならない。加えて、介入調査研究のプログラム策定にあたっては、学校現場の教員や専門家の意見を十分に聞き、それらを参考にしながら研究を進めること。また、地域が亜熱帯島嶼であるため、一地域ではなく、複数の地域で実施することや学校規模についても検討する必要がある。これらの複合的な条件を考慮しつつ、計画書に沿って、前述した二つのミッションを遂行する。
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Research Products
(5 results)