2014 Fiscal Year Annual Research Report
生活世界の変容とジェンダー:インド高齢女性のライフヒストリーを通して
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25283006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
押川 文子 京都大学, 地域研究統合情報センター, 名誉教授 (30280605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 祐子 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (70212272)
松尾 瑞穂 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 准教授 (80583608)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ライフヒストリー / インド / 高齢女性 / ジェンダー / 消費 / 女子教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
①中間年度にあたる本年度は、初年度の調査・記録方法の検討にもとづき、研究代表者および分担者がそれぞれの調査地域で高齢女性を対象にライフヒストリーのインタビュー調査を実施した。 研究代表者押川と協力者パルリワーラーは、デリー市北東部の低所得者層居住区で聞き取りを行った。その多くは、1970年代~80年代にデリーに移住した世帯であり、都市下層世帯の不安定な経済状況のなかでのジェンダーや家族関係、労働、家計・消費生活の変化、子供の教育や老後の保障について聞き取りを行った。分担者八木は、北部のウッタル・プラデーシュ州東部の農村部において聞き取りを実施し、農村部においても衣食住が大きく変化し、出産、教育、結婚など女性たちのライフイヴェントに大きな変化があったことを聞き取った。協力者菅野は、同州東部の中心都市ヴァラーナシーおよび近郊農村の中間層の女性を中心にインタビューを実施し、開発や国・州レベルの政治変化、教育普及が女性のライフコースや自己認識の変化に大きく作用していることを明らかにした。分担者松尾は、西部のマハーラーシュトラ州の都市プネを中心に、同地域の有力な高位カーストに属する中間上層の女性と家事労働者など労働者階層の女性を中心にインタビューを実施し、階層によって女性のライフヒストリーのナラティブには大きな差異があることや中間上層女性の生活世界に都市の拡大やグローバル化が大きな影響を与えてきたことを聞き取った。 ②上記の聞き取り調査を踏まえて、2015年2月にデリーにおいて、女子教育普及と女性の生活世界の変容に焦点をあてたワークショップを開催し、インドのジェンダー研究者から多くの貴重なコメントをいただいた。 ③3回の国内研究会を開催しそれぞれの調査内容および記述方法について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①当初の予定通り、3地域において高齢女性のライフヒストリーの聞き取りを実施し、その記録を文章化する作業を実施することができた。また国内研究会に加えてデリーにおいてワークショップを開催し、インドのジェンダー研究者等との研究交流を実現するとともに、成果の取りまとめにむけての貴重なコメントをいただくことができた。全体としておおむね順調に進展していると考えている。 ②当初計画からみてやや遅れているのは、インタビュー件数である。高齢女性のナラティブの引き出すためには当初に考えていた以上に時間を要し、そのためインタビュー数は若干予定よりも少なくなっている。これについては、国内研究会において繰り返し議論を行い、数をそろえることよりも丁寧に内容の豊かなインタビュー記録を取ることを優先することとした。ただし、最終年度に向けて、可能な限り件数の増加にも取り組み必要があることを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる平成27年度は、引き続きインタビュー調査およびその記述化を実施する。インタビュー調査にあたっては、これまでの調査によって階層や農村・都市、コミュニティによって高齢女性のたどってきた人生とそのナラティブに大きな相違があることが明らかになってきたことを考慮し、階層、居住地、コミュニティの3点においてバランスのとれた対象者構成になるように慎重に対象者を選択する。インタビューの方法は、可能な限り対象者の発話を重視して、対象者のナラティブを丁寧に慎重に聞き取ることに重点をおく。同時に記録の整理を行い、インタビュー記録の蓄積を行う。 また、国内研究会および海外研究協力者を招聘したワークショップを開催して、インタビューから得られた「生活世界の変容」について総合的な検討を加え、インタビュー記録にもとづく考察の刊行に向けた準備を行う。
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Causes of Carryover |
2015年2月28日にインド・ニューデリーで開催したワークショップに当初参加予定であった分担者2名が、所属先の学務のため参加が不可能になり、その旅費が未使用になったことによる
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度に予定している最終のワークショップ(京都で開催予定)に、インドからの招聘者を当初予定よりも1名増やすこと、インタビュー記録の整理のための謝金、およびインタビュー記録の印刷費に充当する予定である。
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