2013 Fiscal Year Annual Research Report
コモン・グッドを追及する連帯経済―ラテンアメリカからの提言
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25283010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
幡谷 則子 上智大学, 外国語学部, 教授 (00338435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新木 秀和 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (80276039)
宇佐見 耕一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 主任調査研究員 (50450458)
小池 洋一 立命館大学, 経済学部, 教授 (40328018)
重冨 惠子 都留文科大学, 文学部, 講師 (60405074)
山本 純一 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (00276411)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 連帯経済 / 社会的経済 / コモン・グッド / ラテンアメリカ地域研究 / 国際研究者交流(フランスほか) / 国際情報交換(ラテンアメリカ7ヵ国) / 事例調査(ラテンアメリカ7ヵ国、南欧と日本) / 文献研究(ラテンアメリカ7ヵ国、南欧) |
Research Abstract |
平成25年度は初年度にあたり、本研究の第一課題であった、各担当者の地域の先行研究サーベイと、ラテンアメリカの実践に対して参考になる欧州の連帯経済、社会的経済に関する理論研究に集中した。 国内研究会は計6回開催し、理論研究の専門家を招き、「連帯経済」と「社会的経済」に関する欧州での議論に関する知見を得るとともにラテンアメリカの経験と欧州の理論潮流との関係について議論を重ねた。招聘講師は北島健一(立教大学)、中野佳裕(国際基督教大学)、鈴木美和子(大阪市立大学大学院)である。 さらに、12月には連帯経済論のフランスにおける理論構築の第一人者であるJean=Louis Laville教授を招聘し、研究会で特別セッションを設けるとともに、上智大学イベロアメリカ研究所の協力を得て公開講演会を実施し、その機会に学内外の連帯経済研究・実践に関連する組織とのネットワーク形成にも努めた。Laville教授とともに関西において日本の「連帯経済」の実践事例を学ぶフィールドワークも実施した。 海外での調査活動は、初年度は主として資料収集と理論研究に関するヒヤリングを旨とした。3月に幡谷と小池がフランス、ポルトガル、スペイン(バルセロナ)を訪問し、Laville教授および彼を中心に形成された南欧の連帯経済研究ネットワークの創設メンバーと意見交換を行うと同時に、3ヵ国において主要文献資料の収集を行った。山本はメキシコとカナダにおいてフェアトレードの実態調査と彼らの連帯経済概念と市場に対する考え方についてヒヤリングを行った。これらの調査結果は26年度の研究会において共有し、議論を深める予定である。 さらに、初年度は本共同研究プロジェクトのホームページの立ち上げも行った。研究会における講演記録や各分担者の個別事例研究成果の一部などは次年度にむけて、随時同ホームページ上で公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本研究の3課題のうち、初年度は、第一課題:域内独自の連帯経済に関する理論的潮流の把握と欧州の諸説との比較検討に重点的に取り組んだ。特に欧州の議論とその日本での紹介、日本の労働問題や福祉や社会経済論の分野における研究の考察を深めた。 2.本年度の実施計画については、1)国内研究会を当初の計画を上回る回数で開催し、活発な議論を行った。2)文献・資料収集については各研究分担者が個別に実施したが、メンバーのうち計3名は本研究事業予算で海外出張を実施した。3)研究文献目録・解題の作成と研究動向の報告については個別に準備を進めている。次年度に上智図書館リポジトリへのデジタル公開を当初計画したが、最終報告書のとりまとめを外部出版で予定しているため、本共同研究で立ち上げたウェブサイト上に研究活動抄録を順次公開するという方向で現在検討中である。 3.本研究はラテンアメリカ7ヵ国の事例比較研究を第二の柱としているが、それとあわせて日本国内の実態調査との比較の視点を養うことも目的の1つとしている。初年度より、共同フィールド調査に着手できたことは、有意義であり、2年度以降の国内調査地の選定にも役立つ情報を得ることができた。 4.ウェブサイトの立ち上げを初年度内に完了し、今後の成果公開準備をすすめると同時に、海外の同分野のネットワークとの交流、連携の準備が整った。 5.これまでほとんど持ち得なかった欧州の理論研究グループと、国内のラテンアメリカ研究以外の分野、特に労働問題を専攻する連帯経済研究の理論研究グループとのネットワークが確立され、今後のラテンアメリカ事例研究との比較、議論のプラットホームを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は25年度の成果を踏まえて、一層の文献研究、理論研究を深めるとともに、各分担者はそれぞれ担当するラテンアメリカにおける地域、国において、「連帯経済」の実践について実態調査を行う。 1.平成26年度と27年度は、ラテンアメリカの実践例を幅広くサーベイすると同時に、各分担者が担う特定分野:農業、資源開発、労働問題、流通、社会福祉、生活実践などにおける連帯経済運動の分析を行う。 2.国内研究活動においては、平成26年度は東北または上越地方における連帯経済の実践例の実態調査を行うとともに、平成25年度に手がけた関西地方における農業生産者共同組合における連帯経済の実践についても考察を深める。 3.各担当国・地域と分野において、先行研究サーベイを文書化する。共通の文献データベースを作成する。 4.本共同研究ウェブサイト上に研究活動内容の報告抄録を掲載するなど、より積極的な活用に取り組み、研究成果の公開をめざす。 5.海外調査の派遣は、最低3名、コロンビアとアンデス諸国2ヵ国、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンから最低1ヵ国、英国とイタリアを含む欧州の文献収集のための海外調査も引き続き実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の海外招聘者旅費を、昨年まではエコノミークラスで計上していたが、2013年度よりロングフライトに関しては、招聘者の格付けに鑑みてビジネスクラスの適用が可能となった。このため、招聘旅費が当初の計上予算よりも大幅に上回ったため、分担者の出張旅費支給を往復旅費に限定し、調整をはかったところ、全体の支出状況において残金が発生した。 次年度にあたる平成26年度の研究活動計画は、当初より各分担者のラテンアメリカ諸国におけるフィールド調査を重点的に展開する予定であり、海外調査旅費に充当する。 また、平成25年度に着手した日本国内事例調査の必要性と可能性が当初より拡大したため、分担者への分担金内訳は国内旅費の配分を高め、海外調査については代表者が綜合管理することによって、使用計画をより効率良く管理し、合理的かつ研究計画に即し、成果にも反映されるような積極的な活用を心がける。
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Research Products
(20 results)