2014 Fiscal Year Annual Research Report
コモン・グッドを追及する連帯経済―ラテンアメリカからの提言
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25283010
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
幡谷 則子 上智大学, 外国語学部, 教授 (00338435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 純一 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (00276411)
小池 洋一 立命館大学, 経済学部, 教授 (40328018)
宇佐見 耕一 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (50450458)
重冨 惠子 都留文科大学, 文学部, 講師 (60405074)
新木 秀和 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (80276039)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国内研究会の開催 / 国際情報交換(ラテンアメリカ7ヵ国) / 文献研究(ラテンアメリカ7ヵ国、および南欧) / 事例調査(ラテンアメリカ7ヵ国、南欧と日本) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は本研究プロジェクトの2年目にあたり、各担当者が対象国における連帯経済の概念と制度化、政策の概要を調査するとともに、代表的な事例研究の実態調査に本格的に着手した。 国内研究会は計5回開催し、うち2回は日本の連帯経済の実態に造詣の深い大江正章氏と、イタリアの協働組合研究の第一人者佐藤紘毅氏を講師として招聘し、ラテンアメリカとの比較において議論を行った。成果発信の一環として、6月に日本ラテンアメリカ学会大会においてシンポジウム「共生経済と多元的社会―ラテンアメリカから日本へ―」を小池がコーディネータの一人として組織し、山本が「共生経済とフェアトレード―ローカルからグローカルな互酬へ」で報告し、幡谷が討論を行った。 昨年度に引き続き、日本の連帯経済の実践に対する知見を深めるため、7月31日から8月2日にかけて、小池、宇佐見、幡谷が岩手県住田町と陸前高田市においてヒヤリング調査を行った。市場原理重視型ではない町おこし事業に関するヒヤリングのほか、福祉と介護の領域における連帯経済の経験の事例として福祉・介護施設を訪問した。 海外での調査活動は、幡谷が8月から9月にコロンビア域で連帯経済の実践例に関するフィールド調査と資料収集を行った。山本は9月に米国において、ラテンアメリカ諸国の生産組合と連携するコーヒーフェアトレードの事例調査を行った。宇佐見は11月にアルゼンチンで社会保障の分野での協働組合と互助会の実態調査を行った。2月に新木がエクアドルで資料収集と関連省庁や研究機関でのヒヤリングを実施したほか、2月から3月にかけて重冨がボリビアのラパスとスクレにて連帯経済促進組織の調査を行った。同時期山本はメキシコで生産者共同組合の概念と連帯経済概念と制度化について調査を行った。今年度は昨年立ち上げたウェブサイトを活用し、メンバー間で対象国で取得した主要文献の共有をはかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本研究の3課題のうち、今年度は第1課題:域内独自の連帯経済に関する理論的潮流の把握と欧州の諸説との比較検討に引き続き取り組んだほか、第2課題:ラテンアメリカにおける連帯経済の実践、地域社会へのインパクトに関する比較分析についても、個別の対象国における代表的な事例研究に着手することで研究を進めた。また、その市場と国家との関係についても国内の制度化と政策を中心に分析を深めた。 2.今年度の実施計画については、1)国内研究会を当初の計画どおりほぼ開催し、活発な議論を行った、2)文献・資料収集については各自が積極的に国内外で行い、特殊地域でのみ収集可能な主要文献はウェブサイトを活用して共有した、文献解題については各自の個別研究発表(国内研究会)の場で成果報告を行い、最終報告書準備の基盤となる論考の準備に着手した。 3.日本国内の実態調査については、全員参加とはならなかったが、今年も引き続き東北地方を中心に3名がフィールド調査を行い、関連する国内研究会(講師派遣)により知見の共有を推進した。 4.昨年度手がけた海外(特に南欧)における連帯経済研究グループとのネットワーキングに続き、今年度は本研究プロジェクトが対象とするラテンアメリカ地域でのキーパースンとの意見交換を通じてこれを拡大し、より具体的な比較研究・議論の視座を養うことができたのは大きな成果である。 5.文献解題と研究動向サーベイについては、冊子印刷にまでは至らなかったが、最終報告書作成の一部として活用できるよう、今後も引き続き取り組んでゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は本研究プロジェクトの折り返し点を迎え、個別事例研究の一層の深化と充実を図るとともに、過去2年間の理論研究と各対象地域における先行研究、制度・政策に関する情報収集に基づき、ラテンアメリカ7ヵ国の比較分析の論点の確立をめざす。 1.本年は、過去2年間の理論と実践(調査)結果をもとに、各メンバーが対象地域と対象分野における分析を深め、相互に比較検討を行う。なお、海外調査の実施可能な日程および過去2年間での進捗状況に鑑み、各自の事例調査の対象国の見直しも行いたい。 2.国内研究会は参加メンバーの成果報告を中心とした勉強会方式を中心に、夏期を除き月例での開催をめざす。(年間7~8回) 4.今年度は後期にラテンアメリカの連帯経済に造詣の深い識者あるいは専門家を複数名招聘し、研究会および公開ワークショップ・セミナーを開催する予定である。 5.海外調査の派遣は2-3名を予定している。
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Causes of Carryover |
当初計画していた欧州(英国とイタリアなど)への文献収集のための海外調査が実現しなかったことと、メキシコ・ブラジル・アルゼンチンから1ヵ国への海外調査派遣予定が、メキシコおよび北米への派遣となったことにより、分担者の海外派遣渡航費の支出総額が予定よりも下回ったため。他方、海外調査を行ったメンバーによってラテンアメリカ各国の連帯経済関連の研究者および専門家との交流が進み、これらの識者ないし専門家を日本に招聘して本研究プロジェクト参加者全員との意見交換を行うことの有用性が認識された。このため、平成26年度未使用額は次年度送りとしてより充実した招聘計画の検討にあてることがより生産的であると判断された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、研究分担者から引き続き3名ほど個別の事例研究調査のため海外派遣渡航費を確保するほか、ラテンアメリカで研究対象としている7ヵ国のうち、複数国から2人ないし3名の識者を招聘し、国内でワークショップおよび公開セミナーの開催を予定している。
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Research Products
(18 results)