2015 Fiscal Year Annual Research Report
コモン・グッドを追及する連帯経済―ラテンアメリカからの提言
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25283010
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
幡谷 則子 上智大学, 外国語学部, 教授 (00338435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 純一 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (00276411)
小池 洋一 立命館大学, 経済学部, 教授 (40328018)
宇佐見 耕一 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (50450458)
重冨 惠子 都留文科大学, 文学部, 講師 (60405074)
新木 秀和 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (80276039)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国内研究会の開催 / 国際情報収集(ラテンアメリカ7か国) / 文献研究(ラテンアメリカ7か国および南欧) / 事例調査(ラテンアメリカ7か国および日本) / ブラジルとメキシコの研究者との交流促進 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は本研究プロジェクトの3年目にあたり、各分担者は共通の研究課題および対象国における連帯経済の概念と制度化の歴史、関連する政策の取り組みについてその概要をとりまとめるとともに、代表的な実践事例の調査と分析、執筆に専念した。国内研究会は参加メンバーの中間報告を中心に勉強会方式で計9回開催した。このうち、7月(第4回研究会)には日本のアソシエーション研究における理論研究の第一人者である松尾匡立命館大学経済学部教授を研究会講師として招聘し、ラテンアメリカにおける連帯経済の理解の助けとなるマルクス経済学における資本主義に対するアソシエーションの意味付けについて理解を深めた。 海外調査については、夏季に幡谷がコロンビアを、山本がメキシコの現地での実態調査と資料収集を行い、重冨は2016年3月にペルーでの調査を行った。 また、今年度はラテンアメリカ諸国の現状に対する知見を深めることと、比較研究の成果発信の一環として、メキシコでの山本の研究協力者であるホルヘ・ホセ・サンティアゴ氏(メキシコ先住民経済社会開発市民協会理事長)と、ブラジルの連帯経済研究および研究ネットワークの中心的存在でもあるルイズ・イナシオ・ガイゲル教授(ヴァーレ・ド・リオ・ドス・シノス大学人文科学センター)を招聘し、公開講演会ならびにワークショップ形式の特別研究会を開催した。 2016年3月末に1泊2日の合宿方式で各人の中間報告とともに、6月に予定する学会パネル報告の議論の方向性などについて議論・検討を行う研究会を実施した。 今年度はこうした研究活動と議論を通して、本研究プロジェクトの課題であり、最終報告書の中心命題ともなるラテンアメリカの実践に基づく理論的枠組みの構築にむけて考察を深めてゆくことができたことが最大の収穫である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本研究の3課題のうち、今年度は第1課題のうち、特に対象7か国の連帯経済に関する理論的潮流の把握と国内の連帯経済の制度化過程と政策における把握の概要について考察を進めたほか、第2課題のラテンアメリカにおける実践と地域社会へのインパクトについても、代表的事例の紹介と考察を深めることができた。また、最終報告書に向けて議論を開始したこともあり、第3課題である、ラテンアメリカにおける独自の理論化に向けても比較考察に着手できた。 2.国内研究会はメンバーの中間成果報告を中心とした勉強会方式をとり、国別比較を通した議論の深化に努めた。年間を通じて計9回(4月、5月、7月2回、10月、11月、12月、1月、3月)開催した。 3.平成27年度は、懸案だった南米の連帯経済の理論に精通したアカデミックの招聘について、ブラジルの東南部、ヴァーレ・ド・リオ・ドス・シノス大学(UNISINOS)より同国の連帯経済研究を牽引する論者の一人、ルイズ・イナシオ・ガイゲル教授と、メキシコはチアパスの先住民運動に長年かかわり、そうした社会運動の側面からメキシコにおける連帯経済の思想と実践について造詣の深いホルヘ・ホセ・サンティアゴ氏を招聘することができた。また、上記2名の海外招聘者の来日に合わせて日本の実践例として滋賀県の「菜の花プロジェクト」の訪問調査を実施できたことは大きな意義があった。 4.文献解題と研究動向サーベイについては、昨年度より準備を進めてきたが、この中間報告をお互いに議論するため、2016年3月末にこの中間報告を兼ねた2日にわたる合宿報告を実施することができた。また、この執筆内容をベースに平成28年度6月開催の日本ラテンアメリカ学会でのパネル報告を企画し、当学会に正式にプログラム企画として承認を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は本研究プロジェクトの最終年度であり、各メンバーは最終報告書の執筆に注力するとともに、研究会活動においてはこれまで積み重ねてきた事例研究や各国での議論の比較分析を精緻化し、ラテンアメリカにおける連帯経済の理論の特徴と意義付け、既存の資本主義経済モデルに対するオルタナティブとしての可能性について議論を展開させてゆきたい。具体的には以下の方針で1年間の活動計画を推進する予定である。 1.国内研究会は4月、5月、6月、10月と年度末に1回、計5回開催予定である。 2.5月にコロンビアのサンヒル大学連帯経済研究所所長のミゲル・ファハルド教授を招聘し、特別研究会を開催する。同教授は幡谷の研究協力者であり、コロンビアの事例研究にもかかわってきたことから、公開講演会を成果発信の一環として行う。ファハルド教授の招聘アジェンダと合わせて、関西四つ葉連絡会および地域・アソシエーション研究所の協力のもと、茨木市を中心に展開されてきた日本の連帯経済の実践について実地訪問調査とヒヤリング、意見交換を行う。 3.6月5日に日本ラテンアメリカ学会において、パネル(ラテンアメリカにおける連帯経済―制度化と課題)を開催予定であり、これには本研究プロジェクトメンバー全員がパネリストとして参加するほか、欧州の連帯経済研究に造詣が深く、日本でもその理論分析を精力的に行っている中野佳裕氏(明治学院大学研究員)をディスカッサントとして迎える。 4.海外補足調査については、山本がメキシコで、幡谷がコロンビアにて、宇佐見がアルゼンチンで、重冨はペルーとボリビアにおいて補足調査を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度の海外招聘(ラテンアメリカ諸国から複数の専門家を招聘)事業において、当初メキシコ、ブラジル、コロンビアの3か国から1名ずつの招聘を検討したため、3人分の招聘旅費と滞在費を計上していたが、うち、コロンビアの研究者は次年度(平成28年度)の来日が望ましいことが判明したため。また、国内研究会において、複数の招聘講師謝礼を計上していたが、メンバーの中間報告としての研究会活動がより活発化したため、研究会への講師派遣が2名にとどまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の5月に、コロンビアからサンヒル大学の連帯経済研究所所長であるMiguel Fajardo教授を招聘する計画が確定している。すでに往復旅費は昨年度予算から支出しているが、滞在費および国内の交通費などを十分に手当する予定である。 また、6月に予定されている日本ラテンアメリカ学会におけるパネル報告には、本研究の成果報告に基づくものであり、メンバー全員が参加する。京都外国語大学での開催であることから、京都への出張費、さらに5月のFajardo氏来日にともなう国内の事例調査(滋賀県、茨木市、陸前高田市)などへの旅費支出も予定している。 海外での個別調査については、幡谷(コロンビア)、重富(ボリビアおよびペルー)を検討中であり、実施の際は旅費を計上する。
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Research Products
(15 results)