2015 Fiscal Year Annual Research Report
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25284010
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐久間 秀範 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90225839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉水 千鶴子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10361297)
吉村 誠 駒澤大学, 仏教学部, 教授 (60298106)
斉藤 明 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80170489)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 仏教学 / 実践理論 / 教義理論 / 瑜伽行唯識理論 / スティラマティ / 安慧 / 堅慧 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度までの研究から、かなりのレベルまで複数のスティラマティが想定できることが共通認識として定着してきた。平成27年8月27日、28日にドイツ・ハンブルク大学でシンポジウムが行われた。27日には基調講演をLambert Schmithausen(ハンブルク大学名誉教授)が行い、28日にはHidenori Sakuma(筑波大学)、Jowita Kramer(ミュンヘン大学)、Roy Tzohar(テルアビブ大学)、Martin Delhey(ハンブルク大学)、Jonathan Silk(ライデン大学)、Shigeki Mori(花園大学)でシンポジウムを行い、スティラマティを複数想定すべき事が共通認識として確認された。本研究のスタートから3年目でこのような共通認識が定着しつつあることは大きな成果と思う。その成果も含めて中国唯識教学と日本法相教学の作り上げてきた安慧像は根本から問い直す土壌が整ったことになる。東アジアの安慧像は玄奘の報告を弟子達がまとめた『大唐西域記』などが発端となっているが、『大唐西域記』のヴァラビーの箇所にだけ出てくる「堅慧」という人物名とヴァラビー出土の銅板碑文にあるSthiramatiという人物名を同一視したことにより、玄奘の報告が絶対的な権威を持つことになり、その後の安慧像を造り出す大きな要因となった。そこで昨年度2月にヴァラビープル(=ヴァラビー)の現地の確認をした。現地は30年ほど前に発掘は行われたものの、ジャイナ教の多い地域であり、ナーランダーに並び称されるような仏教の一大聖地があったとは思えない規模であることもあり、ここに登場するSthiramatiと註釈家スティラマティを同一視するのは早計であり、この点を再吟味することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、本研究を始め、複数回のシンポジウムなどで世界の研究者と意見交換をしたが、わずか3年でこれまでの常識であるヴァラビーのSthiramatiと註釈家Sthiramatiが同一で、1人であるという常識が覆されたことは大きな成果である。その内容を今後も着実に検証して行く方向性が確立されたことから、本研究が予想以上の成果を上げていることになる。
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Strategy for Future Research Activity |
従来のスティラマティ像を再吟味するにあたり、最終年度には5月20日の国際東方学者会議においてヴァラビーの資料を大きく取り上げて、スティラマティ像を考え直す。9月13日にはもう一つの資料である『大乗中観釈論』にスポットを当て、瑜伽行派と中観派との間の論争等をテーマにスティラマティ像の再吟味を公開シンポジウムとして行うことで、より研究を推進して行くとともに、考古学分野および銅板碑文分野の研究者も交えてより多角的な考察を行って行く。
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Causes of Carryover |
平成28年度には5月に国際東方学者会議に海外からMartin Delhey博士を招聘してパネル発表を行い、9月に国際シンポジウム(筑波大学東京キャンパス)を海外からAnne MacDonald博士を招聘してシンポジウムをおこなうため、英訳依頼も含めて資金を確保する必要がある。また4月初めに台湾において国立政治大学、国立台湾大学、輔仁大学において学術交流を行い、加えて夏の終わりにハンブルク大学、秋にハーバード大学とオックスフォード大学で学術交流を行うための旅費を確保する必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年4月の台湾における学術交流、5月の国際東方学者会議に海外からの招聘を含めたパネリストの旅費、9月に筑波大学東京キャンパスでおこなうスティラマティのシンポジウムの発表者として海外からの招聘を含めた旅費、ハンブルク大学、ハーバード大学とオックスフォード大学でおこなう学術交流のための旅費等と成果発表のための原稿の英訳等に支出する。
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