2013 Fiscal Year Annual Research Report
プレゼンス論とアブセンス論の統合を目指して--日欧の現代演劇の比較論的考察
Project/Area Number |
25284042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平田 栄一朗 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (00286600)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 演劇学 / パフォーマンス / ドイツ演劇 / 現代日本演劇 |
Research Abstract |
平成25年度はプレゼンスとアブセンスの演劇研究の初年度に当たり、演劇におけるプレゼンスと不在の要素のうち、同年度はプレゼンスの要素が強い演劇を対象にして研究を行った。25年9月にはドイツ・ライプツィヒ大学からパトリック・プリマヴェジ教授を研究代表者の本務校である慶應義塾大学に招き、最近のドイツ演劇におけるコロス(合唱隊)のプレゼンス性と、そこにみられる政治的なテーマについて研究会と講演会を開き、ドイツ演劇における複数身体のプレゼンスの特徴を明らかにした。 同年12月にはフランクフルト大学名誉教授ハンス=ティース・レーマン氏、ギリシアの演劇評論家エレーネ・ヴァロプルー氏、そして研究代表者が慶應義塾大学にて現代悲劇に関する国際シンポジウム(ドイツ語)を行い、強度の身体性表現と悲劇との関連を現代の悲劇論を基にしてディスカッションした。このシンポジウムの成果は平成26年6月に上梓される学術誌「藝文研究」106号にてドイツ語論文で発表される予定である。 また平成25年12月に上梓された「藝文研究」105号の論文(日本語)にて現代演劇論におけるプレゼンス論と不在論の論争を紹介し、両論をあえて逆説的に結びつけることで、現代演劇のプレゼンスと不在の特徴をより明確に浮き彫りにできる演劇理論を発表した。この理論的研究は平成26年度にも継続する予定であり、論文形式にて発表する予定である。 このように全体としてはプレゼンスの演劇を主な研究対象とし、同時に理論的な考察としてはプレゼンスと不在の両論の統合を試みた。これを踏まえて平成26年度は不在の要素が強い演劇について調査し、両論の理論的統合をより確実なものに展開させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同研究の初年度に当たり、テーマとしたプレゼンス論と不在論のうち、プレゼンス論の特徴をドイツ・ギリシアの研究者とともに調査したり、シンポジウムを行うことによって具体的に明らかにすることができた。 同時に理論的考察において両論を逆説的に結びつける論文を発表し、それを次年度以降の理論的考察につなげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はプレゼンスの要素を特徴とした現代演劇の事例をドイツ・ギリシア・日本の舞台作品を対象にして調査を進めることができたので、プレゼンス論の特徴が調査開始よりもより具体的に明らかになった。 次年度は不在の要素を特徴とした現代演劇に重点を置き、ドイツ・ベルギー・日本の舞台作品を調査対象とする。ひいてはドイツや日本の演劇研究者とともに国際シンポジウムを開き、その議論を通じて、不在の演劇の具体的な事例を幅広く調査する。 またその成果を英語やドイツ語の論文にて発表する。 さらに国内やドイツなどにおいて不在の要素を特徴とする演劇の調査を行う。
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