2015 Fiscal Year Annual Research Report
プレゼンス論とアブセンス論の統合を目指して--日欧の現代演劇の比較論的考察
Project/Area Number |
25284042
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平田 栄一朗 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (00286600)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 演劇学 / パフォーマンス研究 / ドイツ演劇 / 日本演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のドイツ演劇学で論争となったプレゼンス論とアブセンス論の統合を試みて、演劇上演における「今ここ」の現象を、両論を結び付けて論じる本研究は、同研究の最終年度に当たり、上演の声を対象にして、演劇的現象が「ある」と「ない」とのあいだでどのような特徴が生じるのかについての研究を行った。 その方法として、上演分析や資料研究に加えて、2015年9月、12月、1月に日独の研究者(ライプツィヒ大学ギュンター・ヘーグ教授、ベルリン自由大学ドリス・コレシュ教授など)による講演会やシンポジウムを実施し、意見交換を行うことで、上記の特徴を探る作業を行った。 その結果明らかになったのは次の二点である。1.声は直接的コミュニケーションにおいて「マテリアルなもの」(素材性)として受け手に届くが、そのような伝達は演劇上演によって顕在化することである。さらにこの顕在化によって、「今ここ」で行われる演劇上演のプレゼンス状況の意義も明確になることである。表現者と受容者が同時に介在する直接的コミュニケーションの意義は、表現者と受容者との間に素材的なものが現象として現れることにある。この点においてプレゼンスの状況のコミュニケーションは、メディア技術による間接的コミュニケーションと大きく異なる。 2.他方で声の現象はすぐに消えてしまい、記憶に残らないかぎり、不明のままになるアブセンスの要素を多分に含んでいる。声は、それを発するその人ならではのマテリアル性のプレゼンスを発揮すると同時に、そのプレゼンスが「はかなさ」という不在性と紙一重になって受け手に伝わる。声の現象とは、プレゼンス的な要素を多分に含んでいるが、同時にアブセンスを前提として可能になる点において、プレゼンスとアブセンスが同時に介在する。 「今ここ」の状況にこの両者が同時に生じていることが声の伝達において顕在化する。これが今年度の研究の成果である。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Causes of Carryover |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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