2013 Fiscal Year Annual Research Report
映画における《音》の機能 ─ その多角的分析と映像教育資源の開発
Project/Area Number |
25284045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
佐近田 展康 名古屋学芸大学, メディア造形学部, 教授 (20410897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 幸長 名古屋学芸大学, メディア造形学部, 講師 (40646650)
伏木 啓 名古屋学芸大学, メディア造形学部, 講師 (90351220)
柿沼 岳志 名古屋学芸大学, メディア造形学部, 助教 (70449495)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 芸術諸学 / 映画論 / 映画音楽 / 映像音響 / 映像音響教育 |
Research Abstract |
研究1年目である平成25年度は、映画における音(声、音楽、物音、音響操作および聴取環境)について、これまでの映画研究学術文献ならびに過去の映画作品の事例を収集し、その「機能」を多角的に分析する研究活動を行った。 研究活動の組織として「NUAS映像音響研究会」を発足し、研究代表者・分担者・協力者・聴講学生を交えた3回の研究会を開催した。第1回(H25/11/13)は、おもに佐近田から研究計画概要の説明と過去の映画理論研究をふまえた分析枠組みについて発表し、討議を行った。第2回(H26/2/25)は分担者の柿沼から発表があり討議を行った。発表は、ヌーヴェル・ヴァーグ以降の映画が全体として音響的側面を重視する傾向にある点をゴダール映画の変化を通じて明らかにする内容であった。第3回(H26/3/12)は、研究協力者である仙頭武則氏により最新監督作品の音楽・音響デザインに関する発表があり、斬新な効果音の使用や音楽のin/outのタイミングへの配慮などに、論理的で一貫した演出方針を知ることができた。本研究会は理論面および具体的作品分析の両面でテーマに関する重要な考察を行うことができた。 また映画音楽作曲家の周防義和氏を招き、本研究で収集した映画作品資料の音楽分析をしていただいた(H25/11/14)。この成果として同氏より音楽効果の高いオリジナル映像資料の具体的シーン案が多数提案された。さらに佐近田は劇場公開映画のフィルム・ダビング作業における最終的な音の演出の実際を視察する機会を得た(H25/12/21・22)。 こうした研究・活動により「映画における音の機能」を多数析出することができ、ほぼ網羅的な機能一覧表を描けるようになった。引き続き精査を続けるが、これによりオリジナル映像資料の具体的シーン案を考える基礎的な条件は整いつつあると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」は、──「映画における《音》の機能」について、(1)これまでの学術研究を再整理し、(2)この方面で研究実績のある学外有識者や映画制作現場で活躍するクリエーター等の意見を聴取し、(3)音の機能が顕著に分かる過去の映画作品のシーンについて資料収集・分析・分類を行う──というものであった。映画における音の機能を体系的に分析・整理・分類するために最も重要となる(1)学術研究、(3)作品資料分析においては、おおむね当初の目的を達成している。 当初の予定と異なった点は、学外の有識者・クリエーター等をパネラーとして招請する研究会の開催が少なかったことである。数名の打診を行ったが、残念ながらスケジュール調整が不調に終わり実現していない。しかしながら、そのことによって研究自体が遅れるまでには至ってはいない。実際に研究を進めてみると、理論的な分析視覚や機能分類一覧表、そして諸機能を具体化するシーン案が、ある程度まで出揃った段階でこれらの方々の意見を求める方が有意義だと考えられる面もある。引き続き平成26年度においても招請の努力を続けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き「NUAS映像音響研究会」を開催し、映画における《音》の機能に関する研究活動を継続する。そこで得られた研究結果を基にして平成26年度は「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」の制作に着手する。具体的に次のステップを踏んで制作を進める計画である。 (1) 機能分類表の作成:研究成果を整理し、音の機能を体系的に分類・整理する。 (2) シナリオ案作成:映画における《音》の機能分類表に沿って、各項の機能を具体的に映像化するシナリオ案の作成を行う。 (3) シナリオ案に基づく撮影シーンの検討・撮影計画・準備:研究分担者ならびに研究協力者を交え、シナリオ案の詳細を検討し、その現実的な撮影計画を立てる。学外の映像制作会社、俳優および映画技術者等に協力を要請し、学内スタッフの組織作りを行う。 (4) 撮影:平成26年度においては、「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」の撮影までを行う計画である。なお撮影後の編集作業は平成27年度に実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学外の有識者・クリエーター等を研究会パネラーとして招請するに当たり、その人選やスケジュール調整に困難があったため人件費・謝金の支出が当初予定より少なかった。また、同様にスケジュール調整の難しさから、研究代表者、研究分担者が出張して有識者にインタビューしたり視察を行う機会が想定より少なく、旅費の支出が当初予定より小額であった。 平成26年度の支出計画の費目内訳は、研究実態に即して物品費と旅費のバランスを見直したうえで計上している。学外パネラーの招請については引き続き積極的に計画したい。ただし平成26年度は「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」の撮影が予定されているため、それとの適正なバランスをとって招請を行いたい。また研究分担者の分担金についても継続的に呼びかけを行い、計画的な執行を促したい。
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