2014 Fiscal Year Annual Research Report
映画における《音》の機能 ─ その多角的分析と映像教育資源の開発
Project/Area Number |
25284045
|
Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
佐近田 展康 名古屋学芸大学, メディア造形学部, 教授 (20410897)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 幸長 名古屋学芸大学, メディア造形学部, 講師 (40646650)
伏木 啓 名古屋学芸大学, メディア造形学部, 講師 (90351220)
柿沼 岳志 名古屋学芸大学, メディア造形学部, 講師 (70449495)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 芸術諸学 / 映画論 / 映画音楽 / 映像音響 / 映像音響教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度交付申請書に記載した「研究の目的」は、──映像(映画)分野において内外ともに研究が遅れている「映画における音(音楽/声/物音すべて)」について、(1)過去の映画理論研究ならびに具体的な映画作品によって多角的に分析し、(2)それを「機能」の面から体系的に整理したうえで、(3) 得られた研究成果をもとに「映画における音の機能」を視聴覚的に理解できる「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」を制作し、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示―非営利)の元で広く社会に発信する──というものであった。 これに対して「研究実施計画」では「ステップ1:機能分類表の作成」「ステップ2:シナリオ案作成」「ステップ3:シナリオ案に基づく撮影シーンの検討・撮影計画・準備」「ステップ4:撮影」という4つの具体的ステップを立てた。 平成26年度において、これら4つのステップをすべてを計画通り遂行し、研究は当初の目的を達成しながら順調に進展していると言える。 最終年度である平成27年度は、撮影された映像+音声を編集してビデオ資料集を完成させ、広く社会に向けて発信することで本研究を締めくくりたいと企図している。これにより文字メディアでの描写・論述に幾多の困難を抱えて来たこの分野の研究の進展、ならびに教育資源として映像教育の実践に幅広く貢献することができると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度交付申請書における「研究の目的」および「研究実施計画」に沿って研究は順調に進展している。 研究の母体となり研究代表者・分担者で構成される「NUAS映像音響研究会」については、平成26年度に計6回開催した。年度前半は、映画における音の機能に関する多角的な研究・作品資料分析を通じて、機能分類表の作成を行った。9月以降は同機能分類に沿って、音の効果が顕著に分かる「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」のシナリオについて検討を行い、11月に完成させた。12月からは撮影業務を発注する映像制作会社を加え、具体的な絵コンテを作成し、詳細な撮影計画を練った。そのうえで、2015年2月25~27日にロケーション撮影を実施した。 いっぽう外部有識者や映画制作現場のクリエーター等への取材、研究会招請については実施できなかった。数名の候補者に打診はしたものの双方の日程調整が困難だったことが原因である。現時点で本研究にとって大きな障害とはならないが、最終年度では、ビデオ資料集の編集過程での参考意見聴取や、総括シンポジウムへのパネラー招請等を積極的に行いたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き「NUAS映像音響研究会」を開催し、映画における《音》の機能に関する研究活動を継続する。特に平成27年度は「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」の映像および音声編集を行い、具体的に次のステップを踏んでビデオ資料集を完成させ、成果の公開に至る計画である。 (1) 撮影された「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」の映像・音声編集を行う。特に音声編集については、「音の機能」が果たす役割を、同一映像に対して音(音楽を含む)付けの違いによって比較対照できるよう、複数のバージョンを作成する。 (2) 完成したビデオ資料集に理論的解説を付したものを、インターネット上に公開する。このとき、公的助成を得た本研究の趣旨に鑑み、著作物に対する権利表示をクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示―非営利)とし、ユーザーによるコピー、再編集を自由に許可する形での公開を行いたい。これによって、広く映画研究ならびに映像教育に資することを願う。 (3) 有識者を招いた総括シンポジウムを開催し、本研究について周知をはかるとともに、その研究的意義を客観的に議論する機会としたい。
|
Causes of Carryover |
交付申請時の予定と異なった点は、学外の有識者・クリエーター等をパネラーとして招請する研究会の開催がスケジュール調整の不調により、できなかったことである。あわせてそれらの取材、打ち合わせ等にかかかる旅費も発生していない。しかしそのことによって研究の遅滞等の影響は出ていない。 平成26年度交付申請時においては、「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」の撮影業務について、撮影にかかる技術スタッフや俳優等をすべて研究代表者が雇用する前提で、これらにかかる経費を人件費・謝礼金として算定していた。しかし、当該研究の趣旨を十分に理解し、つねに研究代表者の指揮監督のもとに撮影業務を行う地元の映像制作会社と請負契約を結ぶことが可能となり、費目を変更して目的通りの撮影業務を実施した。このことにより効率化が進み、撮影日数も当初想定していた日数から短縮されたため、撮影にかかる経費が減額できた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
「映像音響論ビデオ資料集(仮称)」の作成については、研究代表者・分担者が学内施設を用いて基本的な映像編集および音声編集を行うが、次のような経費を予定している。音声アフレコにかかる俳優の人件費、音響デザイナーによる効果音の作成外注、作曲家への作曲料、楽器演奏家の人件費、音声マスタリングおよび映像カラーコレクションにかかる外注経費。加えて、ビデオ制作過程で意見を求める外部有識者・クリエーターへの謝礼金、完成したビデオ資料集をインターネット上に公開するためのホームページ作成謝礼金、総括シンポジウム開催にともなうゲストパネラーへの謝礼金を予定している。 以上より、物品費876,570円、旅費200,000円、人件費・謝金1,500,000円、その他200,000円の予算計画を立てた。
|