2013 Fiscal Year Annual Research Report
感受性の〈不〉道徳性と教育―イギリス近代文学におけるジェンダー編成の諸相
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25284057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
土井 良子 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (80338566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川津 雅江 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (30278387)
吉田 直希 成城大学, 文芸学部, 教授 (90261396)
吉野 由利 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70377050)
小川 公代 上智大学, 外国語学部, 准教授 (50407376)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感受性 / 女子教育 / 動物愛護 / 奢侈 / ファッション / 狂気 / 消費 / 道徳 |
Research Abstract |
本年度は、これまで個人研究として進めてきた研究経過を踏まえて、それらを本科研の研究テーマに沿う形で共同研究として組織的に組み直した。5月に第1回研究会を行い、今後3年間の研究計画と役割分担、研究方法を確認・確定したうえで、本年度の研究の方向性を審議した。夏から秋にかけて個別に調査を進めたのち11月に第2回研究会を開催し、それぞれの成果について報告を行うと同時に全員でそれを共有した。また2000年以降の新しい研究について整理し、今後の研究遂行に際しての有益な情報を共有した。 おもな研究状況および成果としては、1)女子教育論における母性と感受性との関係について考察し、とくに絵画における母性表象と比較した。2)この時代の教育論で批判される感受性の不道徳性を明らかにするため、文化の商品化が女性消費者に与えた影響を考察した。3)ロマン主義時代の教育書および教育に関する新聞・雑誌の記事などの資料を積極的に収集し、それらを解読・分析するとともに、特にCatharine Macaulay, Letters on Education(1790)の女子教育論における動物愛護精神の育成の意義について考察した。4)の時代の「ファッション」(fashion)の概念形成の確認を、主に思想史と文学研究における「奢侈」(luxury)論に注目しながら行った。その上で、エッジワースの各種教育論、児童文学、小説における「ファッション」の概念の(再)定義を検証した。5)「アン・ラドクリフの『イタリアの惨劇』(1797)における感受性・狂気を医学的観点から、また、ウィリアム・ゴドウィンの『セント・レオン』(1799)におけるジェンダーを意識した身体表象について分析を進めた。6)時代のチャリティおよびチャリティ活動の位置づけを、感受性文化を軸にしておもに宗教的文脈のなかで考察した。 それぞれ別途記載したような学会発表や論文発表により成果公表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感受性に内包された道徳と不道徳の二律背反性を、女性たちがどう意識し、彼女たちの教育的言説の中でどう制御し、表象していたかを考察するのが本研究の目的である。本年度はこれまで先行研究を整理しつつ、斬新な切り口から仮説を証明するための資料収集がおもなものであり、計画通り2回の研究会を行い、各研究者がそれぞれの分担にしたがって十分な資料読みこみを行った。また、途中段階ながら成果公表も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度末に出た研究成果を基にして、これまで看過されてきた資料・作品の分析と考察をさらに掘り下げ、感受性文学作品のなかに不道徳で反教育的な社会行動への不安や抵抗を読み解き、女性たちの意識と同時代のジェンダー問題との関係性を解明していく。 7月に同時代のフランス文学における感受性の専門家を国内招聘し、研究会を開催する。また、10月末に感受性研究の国際的権威であるJanet Todd氏を招聘し、公開シンポジウムおよび公開講演会、研究打ち合わせを行うことで、これまでの研究成果を検証すると同時に、さらに発展させる機会を設ける。また、夏期休暇などを利用して必要な場合は各研究分担者・代表者が海外調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月の渡英調査の際の旅費など、平成25年度内に生じた支出の一部を次年度に請求する形をとらざるを得なかったため。 平成26年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。7月にフランス文学における感受性の専門家を国内招聘し、研究会を開催する(謝金)。また、10月末に感受性研究の専門家であるJanet Todd氏を招聘し、公開シンポジウムおよび公開講演会、研究打ち合わせを行うことで、これまでの研究成果を検証すると同時に、さらに発展させる機会を設ける(旅費・謝金、会場費)。また、夏期休暇などを利用して必要な場合は各研究分担者・代表者が海外調査を行う。
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Research Products
(13 results)