2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25284060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
望月 恒子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (90261255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諫早 勇一 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (80011378)
澤田 和彦 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70162542)
MELNIKOVA Irina 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (10288607)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ロシア文化 / 亡命文学 / 文化接触 / 越境 |
Research Abstract |
1917年の十月革命とその後の内戦をきっかけとして1920年代に世界各地に形成された亡命ロシア人社会の文化状況について、研究史の長いヨーロッパ地域に加えて、ロシア極東地域や中国・日本をも視野に入れて、広く研究した。特に、アジア地域の在外ロシア社会の中心であった中国東北部の都市ハルビンにおける20世紀前半のロシア文化について、文学・出版状況を中心に詳細に調査して、25年7月の研究フォーラム(於:北海道大学)で報告を行った。このフォーラムで確認した3年間の共同研究の構想に従って、国内や国外(ロシア、ブルガリア)のシンポジウム等で行った報告と各自が発表した論文では、ネフスキー(東洋学・民俗学)、ヴェルチンスキー(音楽)、ブーニン(文学)、ネスメーロフ(文学)など、専門のジャンルもロシア出国後の居住地も異なる多彩な人物たちの創作や人生をテーマとしてを取り上げた。両大戦間期の複雑な世界情勢の中で祖国と切り離された亡命者たちが置かれた政治的・社会的環境と、彼らの文化的活動の実態に関して、ヨーロッパからアジアまでの広範な地域と多様なジャンルを対象として研究を行った。 研究分担者が長年の研究成果をまとめた2冊の単著(諫早勇一『ロシア人たちのベルリン 革命と大量亡命の時代』、沢田和彦『日露交流都市物語』)と、研究代表者(望月恒子)が監修役をつとめる翻訳集『ブーニン作品集』(全5巻、群像社、26年3月に第1巻が刊行され、これで3巻が刊行済みとなった)が25年度に相次いで刊行されたことは、日本における在外ロシア文化研究の発展を示している。また、研究代表者・分担者はロシア、ポーランド、ブルガリアで行われた国際シンポジウムに参加して、世界的に盛んになっている亡命ロシア文化研究の成果発表の場に日本から参加して、国外の研究者との関係をさらに緊密にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間3年間の初年度にあたり、20世紀前半の在外ロシア文化の成立と発展について、極東・中国・日本を重点領域として調査を行った。研究代表者・分担者が全員参加した25年7月の研究フォーラムで共同研究の基本構想を確認した。著書、訳書、研究論文、研究発表などにより、成果発信を十分に行った。研究分担者による著書2冊は、各人の長年の研究成果に基づき、1920年代のベルリンの亡命ロシア社会、および江戸時代から昭和前半という長いスパンで見た日露交流史をまとめたものである。各人の研究論文も、著書や翻訳書と同様に、在外ロシア研究の領域を従来より広範にする成果があった。また、近年世界的に学界で関心の高い在外ロシア文化について、外国語による論文や研究報告を通じて、日本における研究の蓄積を示すことができた。革命後のロシアからヨーロッパへの亡命者に加えて、アジア、特に極東への亡命者や移住者をも視野に入れて、地域と文化領域の両面でより広い範囲を対象として、在外ロシア文化を総合的に研究するという目的は、以上のように、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
20世紀前半のヨーロッパ(ベルリン、パリ、プラハなどの都市)における亡命ロシア人社会の社会的・文化的環境を重点的に調査研究して、それと極東における状況の比較研究を行う。 世界中に散在した亡命ロシア人社会の間で、人々はどのように移動したのか、亡命系出版物はどのように流通したのか、演劇・音楽ジャンルで巡業はどのように行われたかを具体的に研究して、亡命者社会の横のつながりの実態について検討する。以上のような研究は、国家という枠組みの外に言語(ロシア語)という共通要素をもとに創出された特異性を持つ在外ロシア文化を、越境が重要なファクターとなっている現代カルチャー研究の視点から捉えなおすという意味を持っている。調査旅行を行い、研究成果を国内外のシンポジウムでの研究報告と論文等で発表する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入した物品の中で見積額より低かったものがあり、結果として15,055円を使用できなかった。 研究テーマに関連する書籍を購入する予定である。
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Research Products
(16 results)