2013 Fiscal Year Research-status Report
現代フランス小説――第二次大戦および戦後の記憶の再編成の視座から
Project/Area Number |
25284064
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
國分 俊宏 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (70329043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 豊 信州大学, 人文学部, 准教授 (70386580)
三ツ堀 広一郎 東京工業大学, 外国語研究教育センター, 准教授 (40434245)
谷口 亜沙子 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (10453995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現代小説 / 戦争 / 記憶 / 文学 / フランス |
Research Abstract |
2013年度前期において、研究分担者全員と5月31日に第1回の打ち合わせ会を開き、本年の活動方針等について話し合った。その後、メールによる何度もの打ち合わせを経た末、8月9日に第1回研究報告セミナーを開催した。そこで、研究代表者の國分はLydie Salvayreについて、研究分担者の渋谷はIrene Nemirovsky、三ツ堀はPatrick Modiano、谷口はMarcel Ophulsのドキュメンタリー映画「悲しみと哀れみ」について、それぞれ発表を行い、ほぼ丸1日かけて議論を交わした。そこで浮かび上がったのは、想像以上のコーパスの広がりであったが、同時にこの研究テーマの豊かな可能性でもあった。それぞれの発表内容については、いずれ各自がまとめる論文等に組み込まれる予定である。 2013年度後期に入ると、國分が在外研究でパリに滞在することになったため、メールでの頻繁なやり取りで各自の進捗状況を報告しながら、國分は主に第二次世界大戦の体験者による文学作品の読み直しとここ十数年の新たな作品の読解を並行して進め、渋谷、三ツ堀は2000年代以降の小説を、谷口は主に映像作品と戦争に関する新たな証言や研究報告を、それぞれ主な対象として研究を続けた。 そうした中で、現代小説としては全員が共通して読んだLaurent Binetの「HHhH」が、非体験者がいかにして文学作品としての記録を残すかという問題意識において画期をなす作品であるという共通の認識に到達した。 ほかに、Salvayre、Fabrice Humbertなど、重要と目される作品について、ある程度の共通の認識ができつつある状況である。 さらに、ここ十数年のこの種の文学の盛り上がりには、すでに戦争を父母の記憶としても経験していない「第三世代」の台頭が背景にあるのではとの仮説も浮かび上がり始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を開始し、全員で打ち合わせを行う過程で、想像していた以上にコーパスが大きく広いことがわかって(特に古いものにも遡る必要があって)、研究者一同やや大変な思いをしたが、研究テーマである80年代以降の現代小説の収集、読解、研究メモの作成等については、おおむね順調に進んでいる。映像作品についても、分担者の谷口を中心に、着実に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と同様に、戦争の記憶をテーマとする現代小説、映画に関して一つ一つ個別に研究を進めると同時に、それらを総合的に整理する視点を得ることを目指す。その過程で、上記「研究実績の概要」でも触れた「第三世代論」について、もう少し精緻な理論化ができればと考えている。 具体的な活動としては、2014年度後期に第2回の研究報告セミナーを開催する予定で、その際には、できれば本研究代表者・分担者以外の第三者を招聘して参加してもらうつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の國分が2013年度後期より1年間在外研究期間となり、フランス滞在となったが、在外のための渡航費用として科研費は使用できないため、海外への出張旅費の支出がなくなったこと、および分担者らも各自、学務多忙等によりフランス渡航がかなわず出張旅費の支出がなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。 2014年度前期も國分は引き続き在外研究期間であり、また分担者の谷口は2014年度に在外研究が決まったため、ともに海外旅費を支出する機会がないが、その分、資料収集や物品費の購入等に充てる。また、2014年度後期に部外者も交えた研究報告セミナーを開き、準備費用や招聘研究者への謝金を充実させる。
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