2014 Fiscal Year Research-status Report
現代フランス小説――第二次大戦および戦後の記憶の再編成の視座から
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25284064
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
國分 俊宏 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (70329043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 豊 信州大学, 人文学部, 准教授 (70386580)
三ツ堀 広一郎 東京工業大学, 外国語研究教育センター, 准教授 (40434245)
谷口 亜沙子 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (10453995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現代小説 / 戦争 / 文学 / 記憶 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の國分は、2014年9月、青山学院大学で開かれた「『私はホロコーストを見た』ヤン・カルスキの黙殺された証言 シンポジウム」に登壇し、フランスにおけるカルスキの位置づけ、ホロコースト教育の現状等について発言と討論を行った。ポーランドとフランスを横断的に解説し、欧州全体の中で戦争を考える意義を強調した。 研究分担者の谷口は、2014年4月より在外研究でパリに滞在中であり、パリを中心に多くの戦争記念館等の施設やセミナーなどに精力的に参加し、複数の研究者と直接交流した。特に戦争関連のドキュメンタリー作家ミカエル・プラザン氏とは数回にわたりインタビューを実施した。フランスにいなければできない貴重で重要な成果だった。また、小説研究に関しては、現代作家で戦争を主題にした作品を発表しているユベール・マンガレリについて学術論文をまとめ、獨協大学の紀要に発表した。これはマンガレリの『四人の兵士』を丹念に読みこんだ上、ヒルバーグ等先行する歴史学の成果も取り入れた優れた論文であり、またマンガレリについてほとんど本邦初の本格的な論文である。 同じく研究分担者の渋谷は、主に比較文学的な観点から、日本の戦争文学との関連でフランスの戦争文学の読み直しを進めた。 同じく研究分担者の三ツ堀は、小説作品の分析を進め、研究代表者の國分とともに、2015年1月、東大駒場キャンパスで行われたシンポジウム「アントワーヌ・ヴォロディーヌ、ポスト・エグゾチスムの文学」で、発表、討議を行った。2014年秋にメディシス賞を受賞したばかりのヴォロディーヌの来日に合わせ開かれたもので、第二次大戦、特に全体主義と核兵器を潜り抜けた世界を土台にするこの作家の文学世界を、三ツ堀は「シャーマニズム的語り」の観点から分析し、國分は「祈りと文学」というテーマで論じた。(このシンポジウムにはほかに二人のフランス人研究者が参加した)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の國分と分担者の谷口が在外研究でそれぞれ一年間パリに滞在することは、本研究の応募申請時には予測されていない事態だったが、それぞれにフランスにいる地の利を生かした研究を進めることができた。渋谷、三ツ堀も各自、日本で順調に作品の読み込み等の作業を進めている。ただし、そのためにこの2年間全員で集まる機会が少なくなったことは事実だが、2015年度にはまた全員が日本に揃うので、今後頻繁に研究会を開く機会を設けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまで四者で協力して進めてきた研究を統合し、互いの観点を生かしながら、具体的な成果として何が共通して言えるものかを検討する。そのために、数か月に一度の研究会を開くとともに、外部の参加者や聴衆を含めたワークショップ(シンポジウム)を開催する予定である。 國分は小説、映画、理論等の全般にわたる総括を、谷口は小説と映画のほかに特にフランスでの実地研修や交流の成果を発表し、渋谷、三ツ堀は、特に小説を中心にその成果をまとめる予定となっている。
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Causes of Carryover |
研究代表者の國分、研究分担者の谷口がそれぞれ在外研究期間としてフランスに滞在したため(國分2013年9月-2014年8月、谷口2014年4月-2015年3月)、予定していたフランス出張旅費が支出されなかった。また研究分担者の渋谷が所属機関の役職のためやはりフランス出張ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は研究分担者たちがそれぞれフランスに出張する予定である。また、外部の講師を招き研究会やシンポジウムを開催する予定であるため、その開催費にかなりの額が使用されることになる見込みである。
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