2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25284076
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 雅之 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30313159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 政明 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (10314262)
ダニエルス クリスチャン 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30234553) [Withdrawn]
兼重 努 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (80378439)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 字形 / 書記言語 / ダイグロシア / 刊本 / 抄本 / 漢語 / ベトナム語 / トン語 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,当初の予定に従い,代表者・分担者ともに変形漢字・変用漢字に関する調査を行い,且つ得られた資料についての分析を精力的に進めた。 行った調査は次のとおりである。(1)吉川は3月にリーズ大学図書館(英国)で18世紀の粤語資料を,香港電影資料館(香港)で20世紀前半に粤語で記された脚本を調査した。なお,吉川は平成25年度には香港電影資料館にて,ビン語潮州方言の語彙が文字化された脚本についての調査を行っている。(2)ダニエルスは8月から9月にかけて,雲南の昆明と徳宏州で民族委員会図書室や文化局,アーカイブを訪問し,タイ語文献の中にある漢語の用例を調査した。(3)兼重は8月から9月にかけて,上海・貴陽・北京の公共図書館でトン族の漢字文書に関する研究・報道資料を収集し,更に広西の三江県でトン族の漢字文書・墓碑銘・碑文の調査を行った。 分析と考察については次のとおりである。(1)吉川は粤語資料についての考察を進める一方で,粤語の影響の下に変形漢字・変用漢字の使用が始まったとする先行研究が有る客家語について,変形漢字・変用漢字の分類を進めた。(2)ダニエルスは変形漢字・変用漢字の使用が碑刻に於いては19世紀まで遡ることを確認した。(3)兼重はトン語について,変形漢字よりも変用漢字が生産的に使用された可能性の検証を行った。これは近隣に分布するチワン語などとは明らかに異なる様態である。(4)清水は平成26年度に続き,『國風詩集合採』所収のベト族字喃と『課官』所収のタイー族字喃の分析を行った。 研究成果の公開としては,代表者・分担者ともに学術会議での口頭発表や招待講演を行った。また,代表者のホームページに本研究に関するページを作成し,紹介を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,企画当初の予定どおり,代表者と分担者が各自の研究対象とする言語・民族について,変形漢字・変用漢字の現れる文献の調査を行った。調査結果に基づき,媒体や文献の間に見られる字形の差異に対する考察も順調に進められた。 また,6月に催した研究報告会では,主に平成25年度に行った調査に基づく考察が披露され,変形漢字・変用漢字の使用状況を通言語的視点から問うための,基礎知識を共有することができた。これは,今後の研究遂行のための大きな進歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は,企画当初に立てた予定どおりに進める。代表者と分担者が平成27年度に予定している研究は,次のとおりである。 吉川:バーゼル大学図書館(スイス・バーゼル)で客家語文献の調査を行う。 兼重:三江トン族自治県公文書館・図書館及び民間家宅(ともに中国・広西)でトン語文献の調査を行う。 清水:平成25年度と26年度に収集したベトナム語とタイー語の文献に対する分析を進める。 平成27年度は研究期間の最終年度であるため,研究成果の公開にも全力を注ぐ。年度の第4四半期に香港とベトナムから研究者を招聘し,変形漢字・変用漢字を主題としたシンポジウムを開催する。そこでは,通言語的視点からの類型化や「媒体間の差異」「時代間の差異」等の問題について,ディスカッションを行う。特に,変形漢字に言語種を超えた一般性や個別言語にのみ見られる特殊性が存在するか否かについて,議論を行う予定である。 また,年度末には研究成果を学術書として刊行すべく,執筆作業を進める。
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Research Products
(9 results)