2013 Fiscal Year Annual Research Report
言語運用に対する個人の評価価値観の形成とその変容に関する研究
Project/Area Number |
25284098
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
宇佐美 洋 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究・情報センター, 准教授 (40293245)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 智子 学習院大学, 文学部, 教授 (50304457)
林 さと子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (50228574)
文野 峯子 人間環境大学, 人間環境学部, 名誉教授 (10310608)
柳田 直美 一橋大学, 学内共同利用施設等, 講師 (60635291)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 質的研究 / ライフストーリー / 内省 / 縦断調査 / インターアクション教育 / 自己評価 |
Research Abstract |
【評価価値観形成プロセスに関する予備調査】:日常生活における個人の評価価値観は,人生における様々な経験を経て形成されると考えられる。このため,日本語教育関係者や日本在住の非母語話者等に対しインタビュー等を行い,その人の評価価値観がどのような要因によって影響を受け,形成されてきたかをとらえるための予備的調査を行った。交付申請書では「非母語話者との豊富な接触経験を持つ日本人」のみを対象とする予定であったが,より多面的に考察を進めるため,非母語話者側や教育経験の少ない日本人も調査対象に含めた。 【評価価値観変容をとらえるための縦断的インタビュー調査】:日本語支援ボランティア活動を始めたばかりの方3名を対象に,1) 初対面の外国人との対話を行ってもらい,2)対話終了後,相手の外国人に対する印象や,自分の発話に対する自己評価をインタビューによって語ってもらう,という調査を行った。さらにこの調査を,3,4か月程度の間を置いて継続的に行い,3)外国人に対する配慮のあり方や,それに対する自己評価にどのような変化が見られたか,4) その変化と,日頃の日本語支援ボランティア活動との間にどのような関係があるか,をインタビューにより探り,考察を行った。 【「自らの評価・言語運用のあり方を問い直すためのタスク」の開発と試行】:「自らの評価・言語運用のあり方を問い直すためのタスク」として,「外国人にも分かりやすい文書の作成」「読み手に対し配慮を示すための文書の作成」を行った上で,作成した文書を小グループ内でお互いに読みあい,具体的な配慮のあり方やその効果等について話し合う,という活動を複数の場で試行し,参加者の振り返りデータを得た。 【シンポジウム開催】:2014年2月23日,政策研究大学院大学において公開シンポジウムを実施し,そこで本科研のメンバーも現在進行中の研究について発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「自らの評価・言語運用のあり方を問い直すためのタスク」として,書きことばを材料としたタスクは複数試行できたが,話しことばを材料としたタスクの実施,また地域社会におけるタスクの実施には到らなかった。反面,日本人側だけに着目するのでなく,日本で生活する外国人の評価価値観の変容を対象とする調査ができたところは当初予定以上の進展であった。全体としてはおおむね順調に進展しているものと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
私どもがこれまで行ってきた評価研究は,主として他者を評価する際の価値観や評価観点・プロセスの多様性と普遍性を探ろうとするものであった。しかしながら今年度,個人が経験を経て価値観を変容させていく過程を追って行ったところ,他者評価のあり方というより,むしろ自己評価のあり方の変容の方がより重要なのではないか,ということに思い到ることとなった。周囲との関係性に基づく評価価値観の変容が,自己の態度や行動に対する評価を変化させ,それは自らの態度や行動のあり方を変容させていくことにつながる。ひとりの人間のこうした変容のあり方を追っていくことは,まさにその人の社会的成長のプロセスを追っていくことにほかならず,その観察から得られる知見は生涯教育としてのコミュニケーション教育の立案していくに当たり大きな意味を持つことであろう。 今後は特に,「自己評価の変容とそれに基づく態度・行動の変容」焦点を当てて研究を遂行していくことを計画している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東京以外の地域おけるデータ収集および「評価価値観自覚のためのワークショップ」を開催しなかったため。 東京以外の地域においてもデータ収集及びワークショップの試行を行う。
|
Research Products
(18 results)