2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25284154
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
会田 進 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究員 (40581757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中沢 道彦 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究員 (40626032)
那須 浩郎 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (60390704)
佐々木 由香 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究員 (70642057)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物考古学 / 土器種実圧痕レプリカ法 / 土壌フローテーション / 実験考古学 / 埋蔵文化財保護 / 日本考古学 / 縄文農耕 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭化種実分析;これまでに検出していた大横道上・南尾根・花上寺遺跡の炭化マメについては、サイズの計測など分析を行いその結果を報告し、縄文時代中期のマメ利用の実態について検討することができた。 土器種実圧痕のレプリカ法による研究:長野県茅野市尖石縄文考古の下の原、中ッ原各遺跡出土の縄文時代中期復元済土器100点、岡谷市樋沢遺跡の縄文時代早期押型文土器約5000点、また、長野県原村阿久遺跡の前期土器破片および復元済土器600点の圧痕精査を行い、種実圧痕400点をレプリカ採取して鑑定中である。26年度の大きな成果は、長野県下伊那郡豊丘村伴野原遺跡の180粒のマメを混ぜ込んだ深鉢土器の発見である。この全点の圧痕レプリカ採取を行い、アズキ亜属種子であることがわかっただけではなく、X線透過写真撮影の結果、目視と合わせ約300粒の圧痕を推定することができた。また同様の撮影で、長野県岡谷市梨久保遺跡出土の浅鉢においておよそ3000粒のシソ属果実(エゴマ型)を、同市目切遺跡の深鉢破片(1/8個体)に39粒のアズキ亜属種子が推定された。茅野市棚畑・茅野和田遺跡にも20~30以上の種実圧痕を確認しそれら全点のレプリカ採取を行った。1個体に大量の種実が混入する例がこれほど見つかるとは予想外の成果であり、人為的に混ぜたことがわかってきたことは大きな前進である。 土器製作・焼成実験:種実を混ぜた粘土で土器を成形・整形して野焼きによる焼成を行い、混ぜ方の違いによる土器の焼け方の違いと、粘土に混ぜる前後での種実サイズの変化を調べた。その結果は、土器焼成前後のサイズは、ダイズ、ヤブツルアズキ、アズキでは体積が増加し、ツルマメ、アオジソ、エゴマでは変化がないことがわかった。また種実を粘土に多量に混ぜて成形・焼成しても何ら支障がないことも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
主たる目的であるマメ栽培化過程解明への出発点は、中部山岳地域の縄文時代遺跡にマメ類がいかほど存在したか検証する炭化マメや土器種実圧痕のマメ検出にある。25年度は大きな成果を収めたが、26年度はそれを上回る成果となった。特に土器種実圧痕については、長野県茅野市内遺跡においても同岡谷市内遺跡以上に多量に検出されることがわかってきた。さらに長野県下伊那地域にもあることがわかり、八ヶ岳山麓からいっきに伊那谷まで多量のマメ検出例が広がってきた。種実の混入は故意か偶然か、つまり混ぜたか混ざったかという研究課題の一つは、土器成形用粘土に混ぜて練り込んでいることが明確になってきたといえる。期待以上の成果であった。種実圧痕は、当初の予想以上に検出されているため、レプリカ採取については達成度は120%である。しかし予想外の成果のため尖石縄文博物館収蔵資料の進捗率は20パーセントであり、3000点余を残す状況である。今後の原村埋蔵文化財収蔵庫、塩尻市平出考古博物館、松本市立考古博物館、駒ケ根市立博物館などおよそ数千点の復元済土器の精査は艱難辛苦のいばらの道という心境にある。4年間で中部山岳地域の、主に長野県内の復元済土器の圧痕精査を完了できるとした当初の計画は、大幅に遅れをきたしてうれしい誤算という状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
フローテーション法による炭化種実の検出、土器種実圧痕のレプリカ法によるマメ類の検出について、いずれも多数の類例を示すことが、まずは目的達成への方策であることに変わりはない。縄文時代にマメが存在することを示すには、諏訪地域以外に、さらに中部山岳地全域に調査の輪を広げて行くことが必要であることも明らかになった。そのため、これまでの方策を推進していくだけでは十分な調査ができないこともより明確になってきた。数千点に及ぶ復元済土器の種実圧痕調査にはまだまだ膨大な労力が必要である。解決方策として、ますます研究協力者の養成が重要であると考えている。研究発表等の公開・教育活動、レプリカ講習会等の開催を通して、研究協力者の育成に力を注いでいくことが目的達成の鍵となる。こうした企画を復元済土器を所有している博物館、発掘調査を進めている行政機関等に働き掛け、それを契機に関心と協力の輪を広げて行くことを計画する。 また、フローテーション法は該期発掘調査における良好な土壌の確保が大きなウエイトを占めているため、なお一層行政機関の協力が得られるように強く呼び掛けて、確保に努めていく。
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Causes of Carryover |
1月31日の茅野市尖石縄文考古館における成果発表、学術雑誌への研究成果発表を控え、1月から3月に土器種実圧痕のレプリカ採取、X線透過写真撮影、資料の図化等の作業を集中的に行い、作業従事者へのアルバイト料に不足をきたした。そのため、1~3月の支払いを新年度払いとしたため少額の残金を新年度へ繰り越しとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新年度になって、未払いとなっているアルバイト料について、即刻支払い手続きを済ませた。
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Research Products
(20 results)