2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25284162
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
難波 洋三 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (70189223)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 弥生時代 / 青銅器 / 元素分析 / 銅鐸 / 銅剣 / 銅矛 / ICP分析 / 鉛同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は、京都国立博物館所蔵の中細形銅剣b類2本(大分県浜遺跡出土)、中細形銅矛b類1本(熊本県今古閑遺跡出土)、広形銅矛6本(大分県坊主山遺跡出土)、外縁付鈕1式銅鐸1個(出土地不明)、扁平鈕式古段階石井谷型銅鐸1個(出土地不明)、扁平鈕式新段階六区袈裟襷文銅鐸1個(出土地不明)、中細形銅戈3本(出土地不明)、以上の弥生時代青銅器15個体についてサンプリングをし、ICP分析を実施した。 弥生時代の青銅器、中でも武器形祭器については精密な元素分析を実施した例がわずかしかなく、今回、貴重なデータを得ることができた。たとえば、大分県浜遺跡出土の中細形銅剣b類2本は、昨年度分析した兵庫県古津路遺跡出土の同型式の銅剣5本と同様に錫濃度が高くヒ素とアンチモン濃度は低く、中細形銅剣b類銅剣の製作時期が外縁付鈕1式末の銅鐸よりも古いことが判明し、両者の製作年代の併行関係を、従来よりも明確にできた。広形銅矛については、今回の坊主山出土銅矛6本の分析で実態が初めて明らかとなり、近畿式銅鐸や三遠式銅鐸と大差ない組成の青銅で作られていることが判明した。広形銅矛は長大であり、かつ、鋒を下にして鋳造するので、重量偏析の影響により部位によって鉛濃度に差異が生じることが懸念されたため、6本すべてについて鋒と関でサンプリングをして比較をしたが、重量偏析の影響は明確でなかった。 このほか、兵庫県立考古博物館の所蔵する兵庫県加古川市望塚銅鐸について、本研究の一環として実施したICP分析の成果を含む研究成果を、『兵庫県立考古博物館研究紀要』第8号に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当年度は、当初の計画よりも多い、京都国立博物館所蔵の中細形銅剣b類2本(大分県浜遺跡出土)、中細形銅矛b類1本(熊本県今古閑遺跡出土)、広形銅矛6本(大分県坊主山遺跡出土)、外縁付鈕1式銅鐸1個(出土地不明)、扁平鈕式古段階石井谷型銅鐸1個(出土地不明)、扁平鈕式新段階六区袈裟襷文銅鐸1個(出土地不明)、中細形銅戈3本(出土地不明)、以上の弥生時代青銅器15個体についてサンプリングをし、ICP分析を実施した。 特に、昨年度分析した兵庫県古津路遺跡出土の中細形銅剣b類5本と同型式の銅剣2本を分析し、やはり朝鮮系の金属原料を使用していることが判明したことは、近畿を中心とした地域における青銅器の製作開始時期を考えるうえで、今後、非常に重要な手がかりとなると予想される。また、元素分析例がこれまで戦前の1例しかなかった広形銅矛の青銅の組成が、今回の坊主山出土銅矛6本の分析によって初めて明らかとなったが、これは同時期に作られた近畿式銅鐸や三遠式銅鐸についての分析結果とともに、弥生時代後期にこれらの新式青銅製祭器が出現する社会的背景やその意義、この段階の青銅器の金属原料の流通状況を考えるための、重要な成果と考える。 以上から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き、関係者と検討のうえ、京都国立博物館が所蔵する弥生時代青銅器のICP分析を実施する。また、平成26年に出土した岡山県総社市神明銅鐸、平成27年に出土した兵庫県南あわじ市松帆1~7号銅鐸と銅舌1~3については、関係機関から元素分析と鉛同位体比分析をする許可をすでに得ており、これを実施する。このほか、鳥取県史に関係する調査の一環として、鳥取県内出土銅鐸のICP分析と鉛同位体比測定が可能となる見込みであり、それによって測定データの一層の充実を図る。 当研究でサンプリングした青銅器の鉛同位体比の測定は、分析を担当する日鉄住金テクノロジー株式会社への大分大学からの機器の移設とその後の調整や試験的な測定が当初の計画よりも遅れたため、昨年度は実施できなかったが、平成27年度から実施する予定である。その成果とICP分析の成果を合わせて検討することで、弥生時代の青銅器の原料問題についてさらに詳細な検討が可能となると考える。
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Causes of Carryover |
当研究でサンプリングした青銅器の鉛同位体比の測定は、日鉄住金テクノロジー株式会社が分析を担当する予定であるが、日鉄住金テクノロジー株式会社への大分大学からの機器の移設とそれに付随する機器の調整や試験的な測定が当初の計画よりも遅れたため、昨年度内にはこれを実施できなかった。そのため、当初計画していた鉛同位体比分析関係の支出とそれに伴う旅費などが未執行となってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日鉄住金テクノロジー株式会社への大分大学からの機器の移設とそれに付随する調整等が完了し、平成26年度末から鉛同位体比の測定が可能となっている。よって、今年度はすでに採集した資料を含め、鉛同位体比の測定を実施する予定である。
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[Presentation] 東海地方での銅鐸製作と朝日遺跡2014
Author(s)
難波洋三
Organizer
企画展「朝日銅鐸―埋められた謎の祭器」関連講演会
Place of Presentation
愛知県清洲貝殻山貝塚資料館(清洲市民センター)
Year and Date
2014-11-08 – 2014-11-08
Invited