2016 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化するアフリカ農村と現金をめぐる人類学的研究
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25284171
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 祐子 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (30196779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪本 公美子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (60333134)
坂井 真紀子 東京外国語大学, その他部局等, 准教授 (70624112)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 現金の社会化 / アフリカ農村 / 日本の地方農村 / 新しい生産資源 / ジェンダー / 社会的再編 / 現金づくり・現金づかい / 格差と新たな共的関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は基盤フィールドおよび個別フィールドでの調査を継続するとともに、これまで蓄積してきたデータの分析と知見の統合および現金の社会化に関する分析枠組みの有効性を検討した。また、タンザニアのドドマにおいて対象地域住民とドドマ大学の研究者が参加するワークショップを開催(共催)して成果の還元と考察の深化を図った。 日本の地方農村における現地調査では、市や直売所を通じた農作物の小規模な販売活動が在来食物を顕在化させて社会関係と流通の再編につながり、新たな「共」的関係を生み出す基点になりうることが明らかになった。降雨不順による飢饉の常襲地帯であるタンザニアのドドマ農村では、現金経済の浸透によって「食物を買う」という飢饉への対処法が加わり、生存維持にも現金が重要となった。新たな現金獲得手段の開発が不断に進められ、個別世帯内で農作物・労働力・現金(マイクロクレジット等を含む)を回すサイクルが形成される一方、現金づかいの局面では、持つ者から持たざる者への分与の論理を強く意識した、新たな「共」的関係の社会的再編も見いだせる。他方、現金獲得手段の開発では在来知や社会関係を応用するため、それに関わる生産資源の確保と利用はきわめてジェンダー化された側面をもち、特に現金づかいに男性と女性の違いが際立つ。これが土地保有の世帯間格差と格差の固定化への懸念につながる過程も見えてきた。そこでは現金づくり・現金づかいに2つの異質なサイクルが形成されているが、分与の論理につながるサイクルでは、現金のモノ性の担保が重要な鍵になると考えられる。 こうした諸活動の分析を通じて、現金の社会化に関する分析枠組みは、小規模で自律性の高い活動や社会的側面について有効性が高いことがわかった。現在のアフリカ農村で急速に進行している土地占有の問題を射程に入れるためには、さらに中規模スケールの整理枠組みが必要であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メンバーの体調不良により一部現地調査は延期になったが、そのほかの現地調査は予定どおり順調に実施され、所定の成果を得ることができた。 タンザニアにおいては当初予定の幅を超えて、対象地域の住民、タンザニアのドドマ大学の研究者らも参加した国際ワークショップを開催して成果を還元するとともに、考察をさらに深めることができた。さらに、研究会の開催などを通じて本研究課題に深く関連する他の研究グループとの連携体制を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
延期した現地調査を実施して研究成果に加えるほか、これまでの研究結果を総括して成果論集をまとめ、出版の準備を進める。また、関連学会等での成果発表、調査対象地域での成果報告会などを実施し、研究成果を広く発表する。
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Causes of Carryover |
最終年度に成果論集を作成するための資金を見込んでいたが、メンバーの体調不良により年度末に予定していた現地調査の一部が実施できなくなったため、成果論集の作成を延期したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に追加で実施する現地調査等の成果を加えて成果論集を作成するために使用する。
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[Presentation] 東北の市2016
Author(s)
山本志乃
Organizer
東北民俗の会
Place of Presentation
仙台市・戦災復興記念館(宮城県仙台市)
Year and Date
2016-04-16
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